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10年ぶりに帰った俺、世界最強のUnknownになっていた  作者: 神崎昴
第二部 10年ぶりの日常、そして再び

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第101話 魔石の価値

美月は、アクアリザードと大海蛇の素材、そして魔石を持って冒険者ギルドへ向かった。


 蓮は美月の家で待っている。今回、ギルドへ来るのは美月一人だ。


 まずは――


 これくらいの素材なら、問題なく売れるのか。それを確認するためだった。


     ◇


「いらっしゃいませ」


 受付に立った職員が、美月に気づく。


「あ、神崎さん」


「こんにちは」


 美月は持ってきた素材をカウンターへ置く。


「今日は素材の買い取りをお願いしたいんです」


「はい。確認しますね」


 職員が素材を一つずつ確認していく。


「アクアリザードと大海蛇ですね」


「はい」


「どちらも状態がいいですね。魔石もありますか?」


「はい。こちらです」


 美月は、アクアリザードと大海蛇の魔石をそれぞれ取り出した。職員が素材と魔石を確認する。


「では、素材と魔石をまとめて買い取りにしますね」


「お願いします」


 アクアリザードの皮や牙、爪。大海蛇の皮や牙、その他の素材。そして、それぞれの魔石。


 どれもBランク相当の魔物から取られたものだ。職員は通常通り査定を進めていく。


 しばらくして――


「査定額が出ました」


「はい」


「アクアリザード一体分の素材と魔石で、八十万円です」


「……八十万円」


「はい」


 続けて職員が確認する。


「大海蛇一体分の素材と魔石が、百万円です」


 そして――


「合計で百八十万円になります」


 美月は提示された金額を見る。


「……これでお願いします」


「ありがとうございます」


 職員が買い取り処理を進める。手続きは、何の問題もなく終わった。


 美月は少し安心する。


 Bランク相当の魔物でも、素材と魔石を合わせればこれくらいになる。これなら――まだ大量にある素材も、少しずつ売っていけそうだ。


 そう思った――その直後だった。


「神崎さん」


「……はい?」


 受付の職員が声をかける。


「支部長がお呼びです」


「……支部長が?」


「はい。少しお時間をいただけますか?」


「……分かりました」


 美月の表情が少しだけ変わる。


 そして――


 先日持ち込んだ、あの魔石のことが頭をよぎった。


 あの魔石について。何か分かったのかもしれない。


 美月は職員の案内に従い、支部長の待つ部屋へ向かった。


     ◇


 部屋に入ると、支部長が立ち上がった。


「来てくれたか、神崎君」


「はい」


「座ってくれ」


「失礼します」


 美月が椅子に座る。支部長は机の上に置かれた魔石へ視線を向けた。


「先日、君が持ってきた魔石についてだ」


「……何か分かったんですか?」


「ああ」


 支部長は静かに頷いた。


「ようやく、詳しい鑑定結果が出た」


「……どうでした?」


 支部長は少し黙った。


 そして――


「正直に言おう」


 魔石を見る。


「……桁が違う」


「…………」


「現在確認されているSランク級の魔石と比べても、比較にならない」


 美月の表情が変わる。


「魔力含有量」


「魔力純度」


「魔力密度」


「どれも、これまで確認された最高水準を大きく上回っている」


「……そんなに?」


「ああ」


 支部長は頷く。


「既存の魔石の基準では、この魔石の価値を正確に算出できない」


「…………」


「つまり――」


 少し間を置いて。


「値段をつけられない」


 美月は魔石を見る。


 以前見たときから異常だとは思っていた。


 けれど――


 Sランク級ですら比較にならない。その事実は、美月が想像していた以上だった。


「では……どうするんですか?」


「それが問題なんだ」


 支部長は苦笑する。


「この魔石を実際にどう利用できるのか。どれだけのエネルギーを取り出せるのか。それがまだ分かっていない」


「…………」


「だから現時点では、正式な価格を決められない」


 支部長は美月を見る。


「そこで、ギルドから提案がある」


「……提案?」


「まず十億円を支払う」


「……十億円」


「ああ」


「前金としてだ」


 美月は黙って聞く。


「正直、この金額が安いのか高いのかも、今の我々には判断できない」


「…………」


「だが、今後この魔石の用途が判明し、実際にどれだけのエネルギーを利用できるのかが分かれば――」


 支部長は続ける。


「その時点で改めて価値を算定する」


「そして?」


「追加で支払う」


 美月は少し考える。


「……分かりました」


 ただし――


 この場で勝手に決めることはできない。


「少し、確認してもいいですか?」


「ああ」


 美月はスマートフォンを取り出した。


 そして――


 蓮へ電話をかける。


     ◇


「……もしもし」


『蓮?』


「……うん」


『今、ギルドにいるんだけど』


「……どうした?」


『この前の魔石のことなんだけど』


 美月は簡単に説明する。


 鑑定結果。Sランク級の魔石と比較しても、比較にならないほどの魔力。


 そして――


 十億円の前金。


『……十億?』


「うん」


 電話の向こうで、少し沈黙があった。


 そして――


「……全部、美月に任せる」


『……本当に?』


「……うん」


『分かった』


「……俺には、よく分からないから」


『うん』


「……任せる」


『分かった』


 電話が切れる。美月はスマートフォンをしまった。


「……どうだった?」


 支部長が尋ねる。


「全部、私に任せるそうです」


「そうか」


 美月は頷く。


「では、十億円の前金という条件でお願いします」


「分かった」


 支部長も頷いた。


「では、振込先を教えてもらえるか?」


 美月は迷わず答える。


「……私の口座でお願いします」


「……君の口座に?」


「はい」


 美月は頷く。


 魔石の所有者については――


 まだ、知られるわけにはいかない。


 今は自分が表に立つ。


「分かった」


 支部長は頷いた。


 しかし――


「ただ、一つ問題がある」


「……何ですか?」


「今回の十億円は前金だ」


「はい」


「今後、この魔石の価値が判明すれば、追加で支払うことになる」


「…………」


「その場合、正式な契約を結ぶ必要がある」


 美月は黙って聞いている。


「できれば――」


 支部長が続ける。


「魔石の所有者本人と契約したい」


「…………」


 その瞬間。美月の表情から笑みが消えた。


「それは――」


 美月は静かに言う。


「できません」


「……なぜだ?」


「所有者本人を、ここに連れてくるつもりはありません」


 支部長の目が僅かに細くなる。


「本人と契約できないのであれば、困るのだが」


「それなら――」


 美月は迷わなかった。


「この話は、なしでお願いします」


「…………」


「十億円の前金もいりません」


「神崎君――」


「魔石も返してください」


 美月はまっすぐ支部長を見る。


「本人との直接契約が条件なら、売りません」


「…………」


 美月の声は静かだった。けれど、その意志は揺らがない。


「この魔石の所有者は、今の生活を大切にしています」


「…………」


「だから、余計なことに巻き込みたくありません」


 支部長は黙って美月を見る。美月は一歩も引かなかった。


 魔石の価値よりも――


 大切な人の平穏を守ることのほうが、ずっと重要だった。

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― 新着の感想 ―
支部長の目の前で電話で名前言っちゃってるけど大丈夫なのかな?
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