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10年ぶりに帰った俺、世界最強のUnknownになっていた  作者: 神崎昴
第二部 10年ぶりの日常、そして再び

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第100話 異常なアイテムボックス

「じゃあ、一旦家に帰ろうか」


「……家に?」


「うん。蓮がどんな魔石や素材を持ってるのか、ちゃんと見てみたいから」


「……分かった」


 二人は美月の家へ向かって歩き出した。


     ◇


 家に戻ると、美月は改めて蓮のアイテムボックスについて考えた。


 蓮から聞いた話では、アイテムボックスの中には魔石だけではなく、魔物そのものも入っている。


 しかも――


 食べられそうなものや、使えそうなものを選んで保存しているらしい。


「……でも」


 美月は少し困った顔をする。


「魔物って、丸々一頭なんだよね?」


「……うん」


「それをギルドに持っていっても、そのままじゃ買い取ってもらえないよね」


「……そうなの?」


「うん。素材ごとに分けないといけないから」


 皮。肉。牙。爪。骨。


 魔物によっては、特殊な素材もある。それらを一頭分まとめて持っていけば、かなりの大きさになる。


「……どこで解体しよう」


 美月は考える。


 ギルドには解体施設がある。けれど、持ち込む量によっては時間もかかる。


「……蓮」


「……ん?」


「解体した素材とかって、あったりする?」


「……あるよ」


「え?」


 蓮は何でもないことのように答えた。


「……アイテムボックスに入れたら、勝手に解体してくれるから」


「…………」


 美月の動きが止まる。


「……え?」


「……全部、解体済みだよ」


「…………」


 数秒。美月は何も言わなかった。


「……アイテムボックスが?」


「……うん」


「勝手に?」


「……うん」


「……解体を?」


「……うん」


 蓮は不思議そうに美月を見る。


 けれど――


 美月の頭の中は、それどころではなかった。


「……そんなアイテムボックス、聞いたことないんだけど……」


「……そうなの?」


「そうだよ!」


 思わず声が大きくなる。


 美月は冒険者だ。Aランクまで上がるほど、数多くのダンジョンを攻略してきた。


 アイテムボックスを持つ冒険者も知っている。容量が大きいもの。収納した物の時間を遅らせるもの。特殊な収納能力を持つもの。


 それでも――


「……自動で解体するアイテムボックスなんて、聞いたことない……」


「……便利だったよ」


「便利とか、そういう話じゃないよ……」


 美月は頭を抱えそうになる。


 蓮にとっては、十年間の生活で当たり前に使ってきた機能なのだろう。


 けれど――


 そんな機能を持つアイテムボックスが存在するなんて、美月は知らなかった。


「……じゃあ」


 美月は気を取り直す。


「解体済みの素材、少し見せてもらってもいい?」


「……うん」


 蓮が手をかざす。


 次の瞬間――


 テーブルの上に、いくつかの素材が現れた。


「……!」


 美月が目を見開く。


 そこには、綺麗に処理された素材が並んでいた。


 肉。皮。牙。爪。骨。


 それぞれが種類ごとに分けられている。


「……これ、全部?」


「……うん」


「アイテムボックスに入れただけで?」


「……うん」


「…………」


 美月は素材を一つ手に取る。


 状態がいい。傷も少ない。余計な部分も綺麗に取り除かれている。


「……すごい」


「……そう?」


「うん……」


 美月は改めて蓮を見る。


 十年間。蓮は一人でダンジョンを生き抜いてきた。


 その中で――


 自分が生きるために必要な機能を、知らないうちに使いこなしていたのだろう。


「……これなら、そのままギルドに持っていけるね」


「……うん」


「じゃあ、必要なものだけ出していこう」


「……分かった」


 美月は並べられた素材を見ながら、少し考える。


「蓮」


「……ん?」


「まずは、できるだけ弱い魔物の素材を出してもらえる?」


「……弱いの?」


「うん。最初だから、あまり高ランクのものを持っていくと目立つかもしれないし」


「……分かった」


 蓮はアイテムボックスの中を確認する。


「……これでいい?」


「うん。見せて」


 次の瞬間。


 テーブルの上に、いくつかの素材が現れた。


 皮。牙。爪。骨。


 どれも綺麗に処理されている。


 美月は一つずつ確認していく。


「……これ、何の魔物?」


「……アクアリザード」


「……え?」


 美月の手が止まる。


「これって……Bランク相当の魔物じゃない?」


「……そうなの?」


「そうだよ」


 美月は別の素材を見る。


「じゃあ、これは?」


「……大海蛇」


「これもBランク……」


 さらに別の素材。


「……これも?」


「……うん」


「…………」


 美月は言葉を失う。


「蓮……」


「……ん?」


「これが、一番弱いの?」


「……うん」


 あまりにもあっさりとした返事だった。


「…………」


 美月は素材を見つめる。


 Bランク。Bランク。またBランク。


 最低でもBランク。


 つまり――


 蓮のアイテムボックスに入っている素材は、最低ラインからしてすでに普通ではない。


「……弱いって言ったよね?」


「……うん」


「これ、冒険者からしたら全然弱くないからね?」


「……そうなの?」


「そうなの!」


 美月は思わず声を上げた。


 蓮にとっては、十年間のダンジョン生活の中で「弱い」部類なのだろう。


 けれど、美月にとっては違う。


 Bランクの魔物。それだけでも、十分に危険な相手だ。


「……じゃあ、もう少し出す?」


「うん。もう少し見せて」


 蓮が手をかざす。


 次の瞬間――


 ドサッ。


 新しい素材が床に現れた。


「……え?」


 一つ。二つ。三つ。


 次々と素材が増えていく。


 皮。牙。爪。骨。さらに別の素材。


 気がつけば、床が素材で埋まり始めていた。


「ちょ、ちょっと待って!」


 美月が慌てて声を上げる。けれど蓮はまだ手を止めない。


「……これも?」


「もういい!」


 美月が即座に止める。蓮の手が止まった。


「…………」


 部屋の床には、大量の素材が並んでいる。


「……蓮」


「……ん?」


「こんなに持っていけないよ」


「……そう?」


「そうだよ」


 美月は床を見る。これだけの量をギルドへ持っていくとなると、それだけで大変だ。


 しかも――


「素材って、誰でも売れるわけじゃないんだから」


「……そうなの?」


「うん。基本的に冒険者じゃないと買い取ってもらえないの」


 美月は苦笑する。


「だから、今回は私が持っていかないといけないんだよ」


「……なるほど」


 美月は少し考える。


 目の前にある素材の中から、アクアリザードと大海蛇の素材を選ぶ。どちらもBランク相当の魔物。


 この二体分なら、十分なお金になる。


 それに――


 最初から高ランクの素材を大量に持ち込むより、これくらいなら目立つ可能性も低い。


「……じゃあ」


 美月は必要な素材をまとめる。


「今回は、アクアリザードと大海蛇の分だけにしよう」


「……うん」


「魔石も一緒に持っていくね」


「……分かった」


 美月はまとめた素材を見る。


「これなら大丈夫そう」


 そして、蓮を見る。


「じゃあ、ギルドに売ってくるね」


「……うん」


 美月は素材を持って立ち上がった。


 こうして――


 蓮にとって初めての収入を得るために。


 美月は一人、冒険者ギルドへ向かうのだった。

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