ミルには戦う理由がない
――ミルとルナは『炎氷の国』にたどり着いた。
空には緑色の雲が輝き、火山からは赤い溶岩が噴き出し流れ出ていた。
「ルナ、ここにも人が住んでるんだね」
「ええ、そうよ。ここで採れる硫黄は良質だから人が集まり、お城まで出来上がったわ。
興味があるなら城内を見てみる? 歓迎はされないだろうけど」
「やめとくよ、僕はトッドに会いに来ただけだから」
「そう……どうやって探すの?」
「これで」
ミルはアイスソードを取り出して火山に向けて振り下ろした。
すると巨大な氷の塊が現れ地面に落ちていった。
その地響きは遥か彼方まで届いていった。
しばらくすると火山のほうから咆哮が聞こえて来た。
よく見るとドラゴンが飛んできた。
足には人間がぶら下がっていた。
「トッドだ!おーいトッド。僕だよ、ミルだよ」
先ほどと同じぐらいの地響きを立ててドラゴンとトッドは降り立った。
ドラゴンは苛立った声でミルに話しかけた。
「おい、ジョンはどうした!」
「おじさんはいないよ」
「まあいい、お前が今の持ち主か?」
「これのこと?」
ミルはアイスソードを見せながら答えた。
「そうだ、その剣で我と命がけで戦え」
「えっ? やだ!」
「戦う理由がないだと!我にはあるぞ……傷を負わせ名誉を汚したのだからな!」
ドラゴンはトッドを見て言った。
「おい、娘を屠れ」
「トッドだめだ!」
歩み寄るトッドに対してルナは既に手にしていたカードを具現化し、戦う準備を整えた。
「ミル、私なら大丈夫。彼ぐらいなら扱える」
「ルナ、トッドにそんなこと言ったらだめだってば。それNGワードだよ!」
トッドの目が赤くなったかと思ったら何かを投げる仕草をした。
「娘!それならこいつを喰らえ!!」
それは何かとても重たくて大きなものを投げているようだった。
間もなくトッドの背後から溶岩の塊が現れた。
「ルナ!」
ミルはルナを助けようとしたその時だった。
「小僧の相手は我しかおらんぞ、刃を我に向けろ、力比べといこうじゃないか」
ドラゴンが吐き出す炎はミルを包み込んでいった。
ミルは氷の刀身を繰り出すもみるみるうちに蒸発していった。
しかしミルはさらに強くヒルトを握りしめ、ドラゴンの火炎を跳ね返して叫んだ。
「アーム先生の方がもっと凄かったぞ!」
「これはこれは失礼した。全力でいかねば非礼にあたるな。
小僧、名を申せ。覚えておいてやる」
「僕は、トッドの友達のミルだ!」
ドラゴンとミル、トッドとルナ。
ミルはルナの言う通り、ひたすらアイスソードを振り回していた。
ルナは具現化したカード、水晶玉から得た強力な魔力と角笛で、
トッドが放った溶岩の塊を花と蝶に変えていった。
初めに勝敗がついたのはドラゴンとミルだった。
「女王!」
トッドが気づいた時にはミルはドラゴンの喉に氷の刃をあてていた。
「ドラゴン、君は一度同じように倒されてるね。
あの火山の熱をもらわないと、もう生きてけないんじゃないの?」
「だからどうした!とどめを刺せ!!」
「何度も言うけど僕はトッドに会いに来たんだ。
それに君はトッドにとって大切なんだ。
みんなは連れて帰ってきてって言ってたけど、
どうやらここが彼の居場所みたい」
ミルはそう言って戦うのをやめてドラゴンから数歩、退いた。
それをみたトッドはルナから離れミルに近寄っていった。
「トッド……初めに言いたいことがあるんだ」
「なんだよ、もう元の世界には帰らないぞ」
「そうじゃないよ……あのね」
「なんだ、早く言え!」
「その左腕カッコいい!
僕もそうなりたい!!」
皆、呆れてものが言えなかった。
「ねえ、ドラゴンさん。僕にもそれつけてくんない?!」
「お前さんはだめだね」
「えー、どうしてケチじゃん」
「相性が悪いのさ。お前が地獄の釜に入ったら一瞬で蒸発しちまうよ。
にしてもトッド、この子は面白いな気に入ったぞ!」
ドラゴンは地鳴りのような声で笑った。
「私は納得いかないわよ。ミル、とどめを刺して」
「ルナ、ドラゴンに一撃いれたでしょ? もういいじゃないか」
「娘よ、お前の憎しみを喰らって我は蘇るぞ。
お前がとどめを刺せばよいではないか?」
「だまれドラゴン!」
ミルはトッドに近づいていった。
「トッド……やっぱり」
「俺は帰らないよ」
「わかった」
「でも来てくれてありがとう」
ミルはドラゴンに振り返って言った。
「あなたと戦いたい奴がいたら僕らが送り届けるよ。
それでいいかい?」
「それもまた一興だな。待っているぞ。
褒美にいいことを教えてやろう」
「どんなこと?」
ドラゴンが語ったのは『オアシス』と呼ばれるところだった。
オアシスといっても砂漠に囲まれた広大な森で、そこには故人の魂に会うことができる
『火打石』と『想い人の枯木』があるらしい。
「ルナが行きたいなら付き合うよ」
「私は……」
「大きくなった姿を見せてあげたら?」
「私は……会いたい」
「決まりだね。ありがとうドラゴン」
「お安い御用さ、でも気をつけな。それを使えるのは一度きりだ。
よく考えておくんだね。それとマジシャンにも気をつけるんだ。
あいつは人を騙して……今思い出しても、むかつく戦い方しかしない嫌な奴さ」
「行こう、ルナ。オアシスへ!」
「ええ、行きましょう!」
ルナは再びスペルを唱えた。
「我らは永遠の旅人、彼の地にゆかん!」




