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チャンバーにて

CLCの格闘を担当するアームによって導かれ、ミルはチャンバーへ入って行った。

巨大な焼き窯のような形で分厚くて大きな扉が『ギゴゴゴ』と音を立てて閉じられた三秒後だった。

再び扉が開き、ミルが這い出してきた。


「もうだめ、無理!」


「何を言っている、外の時間では十秒も経っていないぞ。

 腹も減らんし、眠くもない、便利なことに死にもしない」


「便利じゃない!人生の楽しみがまるでないじゃないか。

 しかも、あなた私の腕もぎ取りましたよ何回か!」


「気にするな。というか手加減しないといっただろ。

 過酷な訓練に耐え抜くには良い場所だ」


「初日からこういうのはないでしょ!」



「アーム先生、ミルを迎えにきましたよ。

 まだやるなら出直してきますけど」


「ルナ、女神様!」


「だめだこいつはポンコツだ。今日はもうあがっていいぞ」


「ねっ、ミル。また会ったでしょ?」

「そうみたいだね」

「じゃあ帰りましょ」

「帰りましょってどこへだい?」


「私の家よ。あなた全く推薦状、読んでないのね。

 ウチに泊まるってことになってるの。いくわよ」


「ありがとう、ルナ」


「夜は飛んじゃだめだから、さっさと帰るわよ」



ミルはルナが操縦する立ち乗り飛行傘に乗ってCLCを後にした。

ルナの家には母親が食事を作って待っていてくれた。


「あなたがミルって子ね。わが家へようこそ。

 早速だけど食べてちょうだい。熱々のが出来上がってるわよ」


ルナの母親が作ったのは小魚を油で煮た後で、

トマトに似た酸味と甘みのある赤くて柔らかい果物で更に煮たものだった。


「お母さん、魚はわかるんですけど野菜はどこで栽培してるんですか?」


「外壁に吊るしてるわ、たまに鳥たちが食べにくるけど。

 魚はこの子が獲ってくるのよ」


「へー」


「何見てんのよ」


「ルナは意外に働きものなんだなって」

「あんたね、食べたらみんなの食器洗うのよ!」


「まあ、二人とも仲が良いのね。

 結婚するのかしら」


「間違っても、あんたとなんか結婚しないわ」

「なんだか返事に困る」


「ミル、ごめんなさいね。ルナの両親は二人ともスレイヤーだったのよ。

 でもこの子が小さい頃に殉職してしまってね。

 だから私が引き取ったってわけ」


「ちょっと待って下さい。お母さんっ……じゃないんですね」


「私がこの人をどう呼んだって良いじゃない。ごちそうさま。

 ミル、私のお風呂のぞかないでよね!」


ルナは機嫌を損ねてしまい、先に夕食を終えてしまった。


「お母さん、何だかごめんなさい」


「いいのよ、ミル。

 あの子もスレイヤーになろうとしたんだけど、諦めてしまったの」


「その気持ち、痛いほどわかります。リアルに痛いので」


「そうじゃないの、優しすぎたのよ。子供のドラゴンを討ち取れずに……武器を握れない子だったのよ」


「そんなにドラゴンってひどいことしてるんですか?」


「国を一つ、炎で包み込んでしまったわ。その炎は四十九日間、消すことが出来なかったらしいの。

 あの子はただ炎を眺めてるしかなかったのよ」


ミルが黙ってるとルナの母親は手を添えて言った。


「頑張らなくていいのよ、ここで暮らしていれば良いのだから」


「お母さん、ごちそうさまでした」




*  *   *    *   *  *




次の日もミルはチャンバーの中にいた。


「アーム先生、僕やることが増えました」


「どうした? 何だ。長い話は長いまま話しても大丈夫だぞ。聞いてやる」


「ルナの代わりに敵討ちします!」


「それはとってもGoodだね。

 じゃあ、いつも通り手加減なしでってことだ。

 つまり、ミルは本気だってことだ!」


「いくぞ!」

「はい!」


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