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8.エレノアVS豚の王

 玉座の間。血塗れの衛兵がレッドカーペットを汚しているぜ。ぞろぞろ中から出てくる。振動はもうちょっと向こう側。中に入ると玉ころがしの玉ぐらいに大きく開いた壁、そこから城下町を眺めていた豚野郎。


 「ロウ!」ロイスがこっちにやってきた。

 「パパ!」

 「おい、感動のところ悪いがよ、エレノアは?」

 「今ぶっ飛ばされた。あの豚、とんでもない力だぞ」

 「そうか。ロウを頼んだぜ」

 「最初からそのつもりだ」


 豚野郎がこっちに気づいた。ギラッと豚の癖にライオンみたいな眼光しやがる。


 「青髪。出てきたか。いい景色だろう? 次はお前だ」

 「魔物の姿でも大差ねえじゃねえか」

 「ぶひひ。威勢のいいのも今のうちだ!」


 豚野郎は壁に掛かっていた両刃の大斧を片手に握った。豚野郎の身長は四メートルほど、横幅は一メートル近くある。そこから考えるとあの大斧は俺と同じくらいの大きさ。重さは俺を優に超える。両刃は刃物って感じじゃねえ、鈍器だな。って問題しかない。あれに一発でもぶつかったら致命傷だな。

 対して俺の武器は……拳。ちょっとばかし心もとないな。


 「ぶひいいいいいいい!!!」


 豚野郎から来た。走る一歩一歩が重い。城が揺れる。そこから放たれた斧の一撃は容易に床に罅を、そこから穴が開いた!


 「ちょいと怖いな」玉座の柱に掴まって様子見――しかし。

 「そこは安置じゃねえ!!!」斧による石柱の伐採。これまた容易に。隣りの柱に跳べばまたそれも。

 「環境破壊気持ち良いぃいいい!!」

 「そうかよ!」


 三つ目の柱へ飛び移ると豚野郎は渾身の力で今度は縦に柱を割ってくる。ちょいと予想外――けれどこれはフェイク。俺は柱に飛び移るとすぐに豚野郎へ蹴りかかった。

 踵落としが豚野郎の目に直撃! 潰した! 黒い血が噴き出した!


 「ぶひいいいいい!!」

 「追い打ちだぜ!」もう一発蹴りを頭に。腹は効かねえが、頭はふつうに入る!

 「こいつ!」


 豚の拳を避けて着地。二発入れてやったのにピンピンしてるな。割と渾身のつもりだったぜ。


 「お前はワタクシに勝てねえ。なぜか教えてやろうか」

 「いいやいいぜ!」

 「教えたいから教えてやろう。人間だからだ。馬鹿力は褒めてやる。ただな、どう頑張っても人間の攻撃は魔物に効かねえんだな。ほれ、お前が潰した目が完治しているぞ」


 ムクムクと目がどこからか生えてきた。皮膚も嘘みてえに繋がっていく。ものの数秒だぞ。


 「完治?」

 「知らねえようだから教えてやろう。魔物はしばらくすると何もしなくても怪我が治る。どんな怪我でもな! 人間程度の力じゃ倒せねえんだよ!」


 骸骨銛男とは少し理屈が違うみたいだ。なんでかわからねえが、豚野郎はすぐに回復しちまう。

 そうなると一気に倒さねえと勝てねえ。しかも頭だけしかダメージが入らない。待て、豚野郎の言うとおり勝てなくね?


 「考えても無駄だ!!」豚野郎の大斧が飛んできた。


 俺は横に躱した。そこに豚が飛んできた。強烈なダブルスレッジハンマーが直撃。床に穴を開けて一階まで激突。とんでもない威力。魔物にしても馬鹿げてるだろ。

 倒れたところの影が濃くなっていく。上から豚野郎が降ってくる! 俺は急いで走った――竜巻が起こった。俺がいたところに斧が突き刺さって風を起こしたんだ。豚野郎、本気で殺しに来てやがる。昨晩、豚丼を食ったのを恨んでんのか?

 後ずさり、後ずさり。ペチン、壁。


 「まずいなこりゃ」

 「万事休す。人間伐採だ!! 気持ち良ええええ!!!!」大斧が振り下ろされる。


 こうなるともう祈る暇もねえ。とにかく大股開いてるからそこを潜って、がら空きの首の後ろ、脊髄を蹴り飛ばす !!

――いや、これがうまくいったらしい。ちょうど斧が地面についていた。両刃だから、蹴られて前に行った豚の頭がそこにめり込んだ!


 「ぶひいいいいいいいいいいいい!」

 「だ、大ダメージか?」

 「そう! だからぶっ殺す!!」目にも止まらない豚の拳が俺に直撃した。


 倒れ込んだ俺へまたバシバシと足音が来るもんだ。


 「死んだな?」

 「生憎。俺の身体は丈夫だからな」

 「死んだふりをしていればいいものを。よかろう。望みどおりに甚振ってやろう!」

 「そいつはこっちのセリフだぜ!」


 豚の斧は遅く重い。いくらでも躱せる。この後の攻撃だ。豚はすぐに攻撃してこない。わざわざ床にめり込んだ斧を引き抜こうとする。余裕だからだ。

 気に入らねえ。だから殴る。でかい的、豚腹に。右手で思いきりだ!

 硬くはない。深く拳は飲みこまれ、急激にこっちへ返ってくる――

 

 「無駄だと言ったはずだ? 馬鹿かお前?」

 「どうだろうな!」


――返ってくる。そのときに足でなんとか踏ん張る。カルロス、俺ならできる。頑張れ、頑張ったので、右の分の反動を、、そのまま左の拳に!――伸縮し、波紋を描く汚ねえ豚腹のちょうど縮むタイミングで――倍の勢いの乗った左拳を叩き込む!!

……あれ?

 豚と壁の間をスーパーボールのごとく何度も跳んでいる、それが俺です。二発目を入れたらもっと弾力になって変えてきちゃったぜ。

 バタン。


 「無駄だったな!」

 「いけると思ったのによ」

 「満足したか? ぶひひ」

 「満足したぜ!」もう一発殴る。けどもまた跳ね返される。痛い。

 「馬鹿だな。人間はやはり」


 完敗。どう頑張っても勝てません。えー主人公が死んだのでプロト2はここで終わりでーす。カルロスからお伝えしまーす。

 豚野郎のゲロみてえな足音。それを浄化するような妖精の泉に滴る波紋のような足音が近づいてい来る。


 「こっちです。決着をつけましょう」

 「勇者」

 「やっと来たかよ。じ、時間稼ぎはこんなもんで」

 「戦う必要ありませんでしたけどね。豚! 私が相手です!」

 「豚。豚。豚……」


なんか豚野郎の様子がおかしい。さっきよりも覇気がある。


 「どいつもこいつもワタクシを豚と――殺す! ぶっ殺してやる!!!」


 汚い体毛が逆立つ。とんでもなく怒ってるぜ、豚野郎。豚の癖にまたライオンの目になってる。

 けれどエレノアは臆さない。むしろ真っ向から行くつもりだ。


 「今度は吹っ飛ばさねえ。叩き切る!」


 豚野郎が仕掛けた。図体の割に俊敏に近づき斧を叩きつける――砂埃が舞う――エレノアがいない。


 「こっちです!」


 横に回り込んで上からロングソードを。ギョロッと剥いた目を狙ったらしい。

 しかし豚野郎の反応が早い。拳を振り回した。

 が、エレノアの空中での柔らかい体の捻り。躱した。

 すると右左、豚野郎の頭から脚までがら空きになる。


 「ここだ!」


 エレノアは過ぎた豚野郎の腕を足場にして斬りに行こうとした。刀身が黄金に輝き出した――頭か? それとも?――豚野郎が目を見開いた。斧を床で引き摺り、瓦礫を飛ばしながら、斧をエレノアのほうへ持っていった。

 これはさっきの拳の攻撃の反動が乗ってさらに速い――早すぎた! エレノアの足はまだ腕についていた。エレノアは豚野郎の次の動きを誘発するために、少し、ほんの少しだけ長く足をつけていた!


 「勇者ァ!!」

 「決着です!」


 ゆえに先手は後手に。光り輝くエレノアの刃は蹴るスピード、それから斧の振るスピードの相対速度を加え、強烈な一撃に――エレノアの黄金の刃が豚野郎の丸太のように太い腕を、斧を持った腕を断き斬った!!


 「ぶひいいいいいいいいいいいいいい!!」切れた腕から血が噴き出て止まない。回復しない。

 「これが光の力ってことか」

 「よ、よくも!」


 エレノアの意思はここにないようだった。

 豚野郎は混乱し憤慨し残った手でエレノアの小さな体を殴り壊そうとする。

 それもエレノアの集中力にとってはそれ以上の意味がない。影を残し、光り輝く刀身がそれを蹴って、鋭利な一撃がそのまま――豚野郎の腹を貫き、空洞にした。

 うわ。ちょうどあっち側にエレノアが見えるぜ。こんにちわ。


 「そんな、馬鹿な。魔王様……ワレは」バタン。


 豚野郎の身体は光に溶けて塵になり漂うと風になって消えた。

 勇者は剣をしまった。凛々しい美少女が壊れた王城の絨毯の上に立っていた。

 魔物相手じゃここまで圧倒的なのかよ。俺は興奮のあまりエレノアに近づいていた。


 「おい……すげえな。エレノア! 流石勇者様だぜ!! いや、信じてた。うん。俺は信じてたぜ! おい、そこに隠れてる衛兵こっち来いよ! 勇者様だぜ? ほれ、献金しろ?」

 「何を言っているのですか。その前に皆さんの怪我を治します」

 「釣れねえな。せっかく強敵を倒したんだぞ。喜べよ!」

 「いいえ。あんなの雑魚です。あと私は治癒しないといけないので。カルロスは……無傷ですね」

 「あれ? そうだっけ?」


 あっちからロウが走ってきた。


 「おーい! エレノアー! カルロスー!」

 「見てたか、今のエレノアの一刀両断」

 「見てなかったよ。でも倒したんだね。凄いね、エレノア!――じゃなくて勇者様!」

 「べつに間違ってねえぞ。っておい」


 エレノアは会釈だけで衛兵のほうへ。冷たいやつだな。ロウよりも衛兵のほうが大事か? せっかくカッコ良かったのに好感度だだ下がりだぜ。

 ロイスもやってきた。なんか手紙を持ってきた。


 「おい。カルロス。これを見ろ」

 「魔物の臭いがするぜ。勇者案件だろそれ。読まねえよ。俺は一般市民。魔物も骸骨しか倒せねえ雑魚だ」

 「勇者様の煽り引き摺ってる」コソコソ笑うロウ。

 「勇者様は忙しいからな」

 「わかったよ。読むだけな。どれどれ……ってなんだこの干乾びたミミズみてえなきたねえ字!……『魔王様。テルナで勇者一行を捕らえたことを報告します。引き渡しはどちらにされますか。それと私のこれからのことなのですが~~』……だってよ」

 「宛先が書いてあるな。カー村だとよ」

 「カー村はユーシア大陸のカーム港の南にある村だね。アスチルベ王国へ向かう途中で通るよ」

 「へー。そうなのか」

 

 俺はロイスに手紙を渡して城から出ようとした。


 「おい。どこに行く?」

 「宿だよ。今日はもう疲れた」


 さてこれにて一件落着ということにしておいて、衛兵の治癒を続けるエレノアも置いて俺は宿屋へ直行。金が足りなかった。のでロイスに漬けておけと言ったら、ロイスは貧乏だからと拒否され、結果としてエレノアに漬けた。というか勇者の一行と言い切って休んだぜ。ほんとは違うけど。ふぅ、疲れた。


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