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27b.威を借る狐(後)

 カルロスは鉄柵の間に青い髪を擦りつけていた。まるで野良犬のように。


 「牢獄じゃねえか! 俺が何したって言うんだよ!」


――なんだってこんな仕打ちに。

 衛兵が通る。


 「おいおい! さっさと解放しろ! 無罪だって! なんで俺がエンヴィとか疑われてんの? 馬鹿かよ、お前ら!」


 衛兵が通りすぎる。

 衛兵がまたやってきた。


 「俺って勇者様の~従者なんだぜ?~なのに檻に入れるとか? 不敬だろ~!」

 「くすくす」

 「今、笑った! 勇者様を笑ったぞ! やっぱり内心、子娘じゃねえかって思ってんだろ! 失礼なやつだ!」


 衛兵が通りすぎる。

 衛兵がまたやってきた。


 「そもそも女が勇者? ありえねえよな! 今は魔物が弱いからどうにかなってるけど魔王とか無理だろ~? だから俺が必要ってわけ? だから解放しろ~! わかってんだろ~? あんなの魔物にしか勝てない子娘だって~? ほら今、笑った! 弱そうって思ってんだ! 合ってるぜ! 俺だって何度かあの生真面目女を!」

 「ごほん」

 「咳している場合じゃねえぜ!」

 「ごほん!!」

 「あ、え……?」


 エレノア、いつの間に。ものすごく冷たい表情をしている。

 あと後ろに昨日の雑魚騎士もいる。ギョッと俺が引き攣ったのを見て笑い堪えてやがる。


 「ふふはは! いやぁ! 今日は嫌なことがあったけどこのクソが檻で猿みたいに喚いているのを見て満足した! 大満足!!」

 「はぁ……フルールさん。この人のどこが、エンヴィなんです。もう出してあげてくださいよ」

 「確かに全然怖くない。エンヴィの方が百倍怖かったですね」


 小学生かよ。


 「俺の方が強いに決まってんだろ」

 「子供ですか」

 「やっぱりもう少し大人しくさせておきます?」

 「しなくていいです。出してあげてください」呆れ。

 「もちろんですとも。勇者様の命令には逆らえませんしね!」


 牢が開いた。

 あーエーテル爆発しそう。エレノアがやめとけって眉を寄せているから止めるけど。

 

 「こんなクソカスよりマーカスはどうなったんだ?」

 「誰がクソカスだと?」

 「マーカス? 治療室で眠っている強面の人ですか?」

 「そうか。土で眠ってなくて安心したぜ」


 と駆け出そうとしたのをクソカスが止めてきた。


 「まだ話がある」

 「散々こいつらがメモってただろ?」

 「違う話だ」

 「わかった。一言だけ聞いてやるぜ」

 「せっかちだな。まさしく猿だ」

 「はい、一言だけ終わり。帰るぜ」

 「エンヴィ討伐作戦に協力してもらうぞ」

 「断る。お前に手柄を渡したくねえ。俺がアイツを倒す。で、お前は騎士から衛兵に逆戻りだ」


 振り切って治療室へ走った。フルールのため息をついて「まぁ、端から頼りにしてはいませんがね」と零したのも無視して。

 エレノアがついてきた。


 「なんだよ?」

 「どこに居たのですか? というか、どこに帰るのですか?」

 「べつにどこでもいいだろ」

 「良いですけど、あんまり自由にされると勇者の肩書に傷が付きます。カルロスが連れてきた人、どう見ても危なそうな人ですし、ヤクザ系勇者とか絶対にダメですからね」

 「そんなんじゃねえよ。巻き込まれただけだ。あ、そうだ。マーカスの腕が治らねえんだ。エレノアなら治せるだろ? 頼むぜ」

 「なんか不安です……治癒はしますけど」

 「流石勇者様だぜ。盗賊にも寛容だ!」

 「やっぱり危ない人じゃないですか!」


 そういいつつも、エレノアはマーカスの腕を治癒した。

 嘘みてえにマーカスの腕が生えた。

 けどまだ意識は戻ってない。

 まぁマーカスのことは城の治癒師に任せ、俺は城を抜け出した。

 大剣と、適当にあった高級なコップを取って。

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