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囚われのアリシア~私にだって意地がある!~  作者: ホマージュ
第三章 貿易港国コルトバッツ
48/51

殺意に染まる牙

うひゃー。1年以上更新しないなんて考えてもいませんでした。

でも、寝る前にスマホのメモ帳をいじっているといつもいつのまにか眠っていたのでなかなか寝付けないときも寝るためにわざとメモ帳を開いたりする、何てこともしていました・・・。

きっと無意識でアリシアの続きを避けていたのかもしれません。。。

読んでくださっている方々、大変申し訳ございませんでした。。。

続きの1話分は半分以上既に書いておりますので次の更新は遅くはならない・・・はず!

「あれは……凄い。凄かった……」

半ば顔面崩壊気味にとろけるルシリアの手を引き、アリシアが先頭を歩く。

「アイスクリンはダメだねー、ついつい食べすぎちゃうー」

身体にうまく力の入っていないルシリアをよそに反省を口にする


「甘味がこれほどまで……だがあの葉っぱは解せぬ。」

「上にのってたやつ?美味しかったじゃん」


そう、注文して運ばれてきたアイスクリンにはイチゴと

そのジャムに葉っぱがポツリとのっていたのだ。

彩りとしても風味も悪くなかったのだが、

ルシリアには不評のようだ。


「いや、せっかく甘味を味わっているのに別の苦味?というのか?なんかこう……」

手をもきもきとさせながら表現に困っている様を見ると


「アンタ、なんでもウマイウマイって言うバカ舌だと思ってたけれど案外繊細なのね」


「な!?でも……肉とかもそれはウマイんだ」

「わかるけど」


アリシアの頷きに顔面崩壊気味のルシリアが

「そういえば、飯の前に犬から貰ったやつ、」

今思い出した!とでも言うように切り出した。


「あぁ、これ?」

アリシアはドレスの内ポケットから古びたロケットを取り出す。

「それそれ、どうするんだ?売るのか?」

多分それなりに古いものなのだろう。

ちゃんと銀で作られているようで、

細かい細工の部分は黒ずんでいるものの、

頻繁に手入れはされているようで大部分はしっかりと磨かれていた。


よくもこんな高価なものをあんな汚い犬が拾ったもんだ。

金よりも銀の方が高価だと言われるこの時代。

よく見れば銀張りとかではなく、しっかりと銀でできている為、

相手が貴族であろうと失くしたらきっと探すであろうに。


内心は十中八九盗んだな、これ。

と思いながらも、いや私が貰ったんだし。

と手放したくない思いもある。

様々な葛藤の末の結論がこれだ。


「お金が心許なくなったら売るわ」


「そうか」

なんてやり取りをしていた矢先だったのに。







「あの!そぇ!返してく……ださい!」





ホテルに戻る最中、

どこかで見たような犬の獣人に絡まれる。

クリーム色の体毛の獣人だ。


「ぃや、えっと……そぇ……ごめん、さぃ……」

言葉尻は段々細くなっていき、なんとなく聞き取れる程度。


胸元の毛がフサフサしていて、とても柔らかそうだ。

ただ、足や手の毛の先は砂がついているようで少し汚ならしい。

これ、何て言う犬だったか……

「お前は、ホテルにいた……」

ルシリアは覚えがあるようだがアリシアは思い出せない。

「え、誰、誰?」

「ほら、ホテルのプールにいた……」

「いたぁ?」


「えと……、もう…………」

何かを言いたそうにするが、

アリシアの耳には届かない。


アリシアはロケットのチェーンを持ち、

ブラブラと揺らし、

「これ、アンタのなの?」

と犬に問う。


懸命に首を縦に降る犬の胸の毛に触れ、感触を確かめつつニッコリと微笑んだ。

「これ、私が貰ったものだから私の物なの!」

絶望の表情をする獣人の手を引き

そのままホテルへ戻るが、

終始犬の獣人はキョドっていた。



「急に何を思い付いたんだ?」

「ちょっとねー」

ルシリアからの問いへもこんな感じで軽くあしらう。


まるで子供が面白いものを見つけた、とでも言わんばかりキラキラした顔をするアリシア。

それと引き換えルシリアは軽いため息を1つ。



ホテルの従業員も何がなんだかわからないが、

客が元従業員を部屋に連れ込もうとしているのに対し

止められずに慌てているだけだった。








◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



部屋に連れ込まれたかと思えば、

目の前の金糸の髪の女は従業員の呼び鈴を鳴らし、

部屋に人を呼んだ。


「何かご用でしょうか?」

呼び鈴に応じてきたのはシンディだった。

また、意地悪されるかもしれないと震えていると


「この子を洗ってほしいの、全身綺麗にね」


「ぇ。」

目の前の金髪の女の意図がくみとれず驚いた。

洗う?


「えっとこれは元々ウチの従業員でして……」

流石のシンディも一瞬苦虫を潰したような顔をするが


「元々?」

「えぇ、その獣人は本日の朝から解雇されておりまして、何かお客様にご迷惑をおかけしてしまったのでしょうか?」


「あ、そうなの?じゃあ丁度いいわ!綺麗にしたらまた連れてきて。」


じゃぁ、いいじゃん理由は話す必要もないだろう。というように

会話が一方的に切られシンディもとりあえずはこのお客さんに応じていた。


「ついてきて」

客ではなく私にいい放った後、

部屋の入り口でピシッと立ち止まり軽くお辞儀をする。

悔しいけれどシンディの所作は完璧だ。

言葉は悪いけれど……。



「えと……」


金髪のお客様からも見送られ、扉を抜け客室を後にする。


歩き慣れた廊下をシンディに先導されながら歩く。

一言も発しないシンディの表情は後ろからは見えず、内心焦っていた。


もっといじめられるのではないか、

最悪、刺されたりするかもしれない。

言われた通りにしか出来ない自分が虚しい。


たった2分足らずの距離でも

あまりの息の詰まりようにまるで

時間が無理に引き伸ばされているような、そんな気持ちになる。


そんな中、静寂を切ったのはシンディだった。


「アンタ、なんでお客と一緒に居るのよ」

振り向かず、各階層毎に用意された浴場に向かいながら。


「えと……ちょとわか、ない」


本当なのだ。

ただ私はロケットを返して欲しかっただけ。


それをあのお客さんが持っていた、

なんで?ってなるけど拾ってくれたんだと思う。


でもそれも私の荷物をぶちまけたシンディのせい。



「わからないってなんだよ!くそっムカツクな。」

いつもならすでに蹴られたりしているが、

今日は蹴られていない。

シンディも我慢してるみたいだ。


浴場に着くなり、

シンディはお湯の準備をし始める。


「えと、もうだいじぶ、身体あ、らえる」


「いんだよ、さっさとぬいで浴槽入れよ」


今自分が浴槽に入ったら浴槽の湯は一度でダメになってしまうだろう。


「え、その、毛が……」


「ちっ。めんどくせぇな。」

そういうとシンディは従業員用の鈴を鳴らし、人を呼ぶ。

どうして班長しか持たない鈴を持っているのだろうか。

シンディは昨日まで班長じゃなかったはずなのに。


「あの、」

「あん、んだよ」

「は、ハンチョ、お……おめとう」

シンディは一瞬目を見開き、睨み付けてくる。

「なに?皮肉のつもり?」

「ちが、そな、つもりじゃ……」


ゾロゾロと駆けつけた従業員も状況が読み込めていないようだったが、

「お客様のご要望により、洗浄を。」

シンディがそう言うと皆一斉に私の衣服に手をかけ、一瞬の内に身ぐるみを剥がされる。


「あのっ、そのっ!」

言葉を発する余裕もなく気付けば

ストンと肩を落とされ湯船に入れられている。

背後にシンディ、両腕両足右腕と左腕で泡を擦り合わせられ、爪の先から足の指の先まで蹂躙されていく

高級なシャボンをこんなに惜しげもなく使われるなんて……


こ、これが、お客が感じていた気持ち……。


これは凄い。

くすぐったいが、それがまた心地よく、

絡まった毛もシャボンのせいか綺麗にとかされていく。

毛が無理に引っ張られる事もない。

少し絡まりがあると毛の付け根を抑え、

何かをスプレーし、絡まりが嘘のように解けていく。


至福の時間は直ぐに終わり気が付けばタオルで全身を拭かれていた。


毛を乾かし、艶を出すためかよくわからないクリームをまんべんなく塗り込まれる。


用意された服も給仕服ではなくドレスだった。

お客にこんなドレスを用意するサービスがあったことも、

浴場で洗ってもらう事も、

知らない。

何年も働いていたのに何も知らないのだ、私は。

そして全員の洗練された動きも、

なるほど


いつかは客室をと思っていたが、私には無理だったのだ。


悲しいけれどシンディを始めとする従業員の動きや所作を見て痛感した。

中には新人として私が仕事をほんの少し、ほんの少しの間だが教えていた人間もいた。


私も仕事は一生懸命頑張ってきたつもりだ、

だけど……


そう感じた瞬間、

今までの仕事に対しての想いだとか、そういうのが苦しくなって泣きたくなった。

何のために?

何度も我慢して我慢してここにしがみついていた過去の自分が馬鹿らしく、惨めに思えた。

私なんか……


別にどこか身体の一部が痛むわけでもない、

シンディに蹴られたわけでも刺されたわけでもない。

胸が心臓がずっと高鳴り、今にも弾けてしまいそうだ。


こんなに綺麗なドレスを着て、足の爪の先まで整えられ体中の毛並みも全てが綺麗になったというのに。

心はこんなにも沈み、

路上に落ちた雪が土の黒を吸い上げるように、別の感情が一気に流れ込んでくるのを感じた。



こんな私に、あのお客は何を求めているのだろうか。



驚くほど冷めた自分がそこにいることに初めて気づいた。

今、目の前にいるこの人間達は皆多分私よりも弱いだろう。

だって人間だ。


人間は非力で、ただズル賢い。

その知恵に私たちの祖先は敗れた。


ただ武器も何もないこの状況でなんで私が虐げられなければならないんだ。





廊下を歩き部屋に戻った後も


あまり頭は動かず何も覚えていなかった。













いつの間に眠ってしまっていたんだろう……


差し込む朝日にやさしく私を包むこの綿も、

窓際の椅子に腰掛け眠っている赤髪の女も、

横で私の胸の毛に顔を埋めるこの金髪の女も、

今は全てがめんどくさい。

何も考えたくない。

だけど残酷なイメージが頭の中をぐるぐるしている。


ボーっとしながらも頭の中は不思議と冴え渡っているような気さえする。

今の私に大事なものはもう何もない


もしも……この女を殺したらきっとシンディや他の従業員にも仕返しができるんじゃないか。


だってこんなに簡単にかみ殺すことができるのに。


きっとそんな事をすれば、私は逃げても殺されるだろう。

だが、そんなものに怖くはなかった。

ただシンディやこの場で働くものに目にものを見せてやれる。


それだけでいい……。


私は女の首に牙をかけ、顎に力を入れた。


私の中でシンディはポニテのイメージです。

基本的にあまりキャラクターの細かい描写を入れるのはやだなー。

読み手に好きにイメージしてもらえたらなー。って思っているフシがあります。

さて、首が噛み千切られたアリシアはデュラハンとなって竜に乗り世界征服に乗り出します!(ウソ)

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