ミミズクの鳴く夜に②
ハイ。
珍しく短いスパンでの投稿ですわ。
そうなんです、休みだったんです。
でもなんか気になっちゃって気づいたら職場に足を運んでおりました。
・・・病気かな?
まぁ、それはさておき。
間もなく二回目の分岐ルートです。今回ではなく次回のお話の最期に2択出ます。
選択肢の内容はその時に。
分岐の基準はその話の投稿日の総pv数です。
「150pv超えるか」否か。そこが分岐点です。
どうぞよろしくお願いします。
『う、ウウウウ、ウウ゛ウ゛ウ゛ウ゛ウ゛』
腹の底に響くような重低音のうなり声に驚き起き上がる
「ミリナ?ナル?」
ナルはすやすやと眠っている。
ミリナか?
見ればミリナは布団にくるまり丸まっている。
「ミリナ?どうした、具合悪いのか?」
反応のない妻に手を伸ばす。
バシッと伸ばした腕を叩かれる。
叩かれた左腕がやけに熱い。
『い゛、いだい゛…』
「大丈夫か??」
もう一度左腕を伸ばしてそこでやっと気づいた。
左腕は真っ赤に染まり、4本の傷が付いていた、肉は抉れ血が噴き出す。
何故?
大きな爪痕の傷ができている。
「ーぐぅっ…」
傷を確認した瞬間、鈍く重い痛みが襲う。
一瞬手を戻しかけたが、そのまま伸ばす。
『い、痛い。い゛た…いの……』
「み、ミリナ!」
再び伸ばした手にミリナの手が伸びる。
さそれをすかさず右腕で掴む。
「なに?どうしたの?」
娘まで起きてしまった。
「ナル!お医者様を呼んできてくれ!お願いだ!!」
「え、お母さん?え?」
「早く!!」
「う、うん!わかった」
どたばたと走って寝室を出ていく娘を見送り、内心ホッとした。
右手で掴んでいるミリナの腕は毛深く太く、それは人のモノではなかった。
何が起きた。
しかし、妻だ。ミリナだ。間違いない。
「おい!ミリナ聞こえているか!」
雲の切れ間から発する窓からの月光で布団にくるまる妻を目に収めた。
「ミ・・・ミリナ?」
長年使い古したツギハギの布団は赤く染まり、
腕と足は既に人のモノではない。
毛深い獣のような、
なんなのだ。冒険者をやっていた頃も見たことが無い。
所々獣のような姿になったミリナに腕を振り払われ、警戒し後ろに跳び距離を取る。
いまだ人間の面影を残すミリナがこちらを見て口を動かす
「ねェ…ア…なた。」
「ミリナ!意識があるのか!」
「アナ…た。ねェ、、痛いの。っものすごく痛いの!全身の血が沸騰したように痛いの!!まるで体内から無数の虫が血管の中を這いずり回っているような…」
何だ、何が起きている。
「アガっ…う゛!」
「ミリナ!!」
頬のあたりから血が噴き出し、皮膚が割れる。
割れ、出血した部分の下から毛深い別の生き物が生えているようだ。
「あ、なた。お願い抱きしめて。」
笑顔でヒトではない両手を広げるミリナ。
指先の鋭利な爪も、肥大化し毛深い腕も。床を抉るこの怪力で抱きつかれたりでもすれば生身の人間なんてひとたまりもないだろう。
俺は、ミリナを抱きしめた。
危ないと分かっていても自分の愛した女が痛いと苦しんでいる。
「ねぇ、私…どうなるの。今も頭も顔も皮膚が残ってる部分全部痛いの、物凄く痛いの」
「すぐに守ってやれない俺を許してくれ。」
「私を縛っテ、貴方を破いてシマう、前に」
「分かった」
布団やシーツで涙を落とすミリナを固定し縛っていく。
「お父さん!呼んできたよ!!」
ナルが医者を呼んできたようだ
「…こ、こりゃぁどういうことだ。」
村で唯一の医者のエイベは震える。
目の前に頭部と胴体以外人間ではない血に塗れた化物がいるのだ。
しかもその頭部には見知った顔。
「あ、アンタ本当にミリナさんかい?」
「そうだ!なんか夜中苦しみだして変わってしまったんだ…どうにかできないか!」
エイベは顔面蒼白になり、医療箱をその場に落とした。
「おい!!大丈夫か。医者はエイベ、アンタしかいないんだ!しっかりしてくれ!!」
「…神に逆らいし反逆の獣……計画はまだ先のハズでは…ダメだ。」
「ハ?何言ってんだ早く…」
何かボソリと呟くとエイベは医者の命であるはずの医療道具の入った箱を置いたまま血相を変えて走って逃げ出した。
あまりに急なことで全く対応できず、一拍置いて玄関の方へ
「おい!どこへ…!!」
「へぷっ……」
玄関の外に丁度出たエイベは頭を抉られた。
芸も何もない、抉られたのだ。大きな影に。
エイベの後ろ姿ではあるが明らかに抉れた形の頭に大きな影はそのまま頭部へかぶりつく。
一体何なんだ。
何が起きているんだ。
今、玄関を閉めるのは得策ではない。
しかし家の目の前にいる大きな影の化物が家の中に入ってこないとも言い難い。
先ずは優先順位を考えろ…
布団に縛られ、痛みを訴える妻。丸腰の自分。家の前にいる大きな影の化物。母を心配する愛娘。
先ずは安全の確保だ…
妻も娘も。
…俺が守る。
台所には包丁がある。
しかしリーチが短すぎて、懐にもし入れても一撃で沈めれなければコチラが死ぬ。
「今はコレしかないか…」
鍬の柄の部分と刃の部分。昼間に自分で壊してしまった元・相棒の鍬を握りしめる。
深く息を吸い、意を決して玄関を全速力で走り抜け、外に出る。
小屋まで行けばスコップはある。
スコップはいい。向きによって鈍器にもなるし、刃物としても使える。土も掘れるしもしサバイバルになったら必須アイテムだ。
しかしこのまま小屋まで走るわけではない
「お前の相手はコッチだよ!」
鍬の刃の部分を投げつける。
エイベを旨そうに頬張る化物の頬に刃が当たり切り傷をつくる。
当然気分を害した餌には…
「喰らいつくよなぁ!」
追ってきたと分かった瞬間全速力で逃げ出す。
「!?」
しかし、外に出て今更ながらやっと気づく。
――血の匂い。
久しく嗅いでいなかったが、ただの怪我で流れる血の匂いじゃない。
獣に、化物に肉を抉られ惨殺されるような、死の匂い。
小屋に着いた頃には村の至る所で悲鳴が、血飛沫があがる。
すまないが、英雄でも何でもない自分には守れる人数は決まっているし、出来ることは多くない。
小屋の中に入り、先程のエイベを喰らい殺した化物が追ってきているのを再確認し、スコップを探す。
が。
「……やっぱり俺にはコレだよな。」
やはりミリナは出来た妻だ。
握りなれた感触、新しい鍬を持ち出し小屋を後にする。
勿論帰り際にエイベを喰った化物とぶつかるワケだが…
「獲物を持ってる俺は、そんじょそこらの農民とは違うぜ?」
全盛期は69レベルまで行った。
「グングニラのジッタって言やぁ、斧を持たせたらハイオークだろうとねじ伏せるっつって有名だったんだけどよ…」
向かってくる化物に対し鍬を構える
弧を描くように宙を回り脳天に鍬の刃を押し込む。
『 スラッシュ! 』
風を切った鍬の刃はスキルの力に押され、放物線に風の渦を巻く。
風の渦による推進力で硬いはずの化物の頭蓋骨すらをも抉り、命を刈り取る。
「まぁ、バケモンは知らねーよな。」
一瞬の会合ではあったがそのまま家に走って戻る。
「喉が渇いた…痛い、痛いのぉぉ!」
「信子、のぶこぉ」
―グパッ!
太三郎の顔面に信子の血飛沫が飛ぶ
「ア…レ? 痛くなくなった…」
「の、信子…?」
全身毛むくじゃらの化物になった信子は俺の腕を持っている
「え?俺のうで?」
「これ、おいし…い。もっと…もっとちょうだぁぁぁぁい」
「あああああああああ」
「・・・あ?」
化物になった信子は力なく崩れた。
見れば頭の一部が大きく抉れ欠損している。
出来る限り、時間のマイナスにならない程度には周りも助けていくが、優先順位は家族が、妻が、娘が一番だ!
「おかしい・・・」
何故か家に近づくにつれ化物との遭遇率が増えているような気がする。
そしてそれは確信に変わった。
「なんで…ウチの周りに……」
化物が10体以上ジッタの家の周りを包囲し、家の外壁を毟っている。
その理由はすぐにわかった。
家の外壁を毟っているヤツを殺すと家の中から見知った村民の顔が見えた。
「おぉ!ジッタさんが戻ってきたぞ!!」
「ジッタさん、やっちまえー!!」
「早く化物を殺してー!」
村で一番戦える人間の家に避難してきたのだ。
それも各々が化物を引き連れて…
それがジッタの家族に危険を及ぼすと知っていても…。
正直これまでに殺している化物は10を下らない。
この鍬は元々武器でも何でもない、農具である。
既に鍬は限界だ。
村人たちを帰りがけに守れる分、守った結果がコレだ。
余計な人間を守っていて本当に大事な人を守れなくなる…そんなのは御免だ。
大声で叫ぶ。
「俺の妻と娘は無事かぁぁぁぁ!?」
その大声で化物どもの注意を引きつけつつ家から遠ざける。
柄は折れ、残り3体というところで完全に鍬は使い物にならなくなった。
むしろ農具がよくここまで使えたのを褒めてほしい位だ。
出血もしている、力をいれて化物を殴ったり抉ったりする度に左腕の傷口から血が噴き出る。
血が足りない、足元も覚束ない。
ダメだ、視界もボヤけてきた。
足も力が入らない、今、化物に掴まれているのか?
感覚もほぼ無い。
見えるのは、赤。 赤色だ。
鋭い牙に赤い血がべっとりと付いている。
残る3体の内2体は家を壊しながら侵入を試みる。
「・・・うさん!」
「・・・さん!!」
「ねぇ、おとうさん!」
ナルが泣きながら叫ぶ。
いつも笑顔を絶やさず振りまくあの子が泣いている。
だれだ。
「…誰だ、俺の娘を泣かすヤツは」
使えるのは右腕だけだ、左腕は震えて動かせない。
くれてやる。
腕でも足でも。
使えない腕なんかいらない、右腕で力いっぱい歯を内側から殴りつける。
横からの衝撃に化物の上の牙は折れ、その痛みに化物は身悶えジッタを口から吐き出す。
吐き出され、自ら折った化物の牙を拾い、家に向かって走る。
勢いをつけ、一体の頭に牙を突き立て、蹴りで脳天に化物の牙を突き刺す。
残るは一体、ミリナの腹部に噛みついている。ナルの姿は見えない。
「俺の妻になに゛をしている……」
動かなくなっていた左腕はさっきの化物の内の中に置いてきた。
まだなんとか辛うじて動く腕で化物の目玉をくりぬく。
今の衝撃で右の手の指も何本か折れた。
でも遠ざけないといけない。
「ただいま。ミリナ、ナル」
ナルはミリナが覆いかぶさるようにして肥大化した身体で隠していたようだった。
「あ…ナタ…」
「おとうさん…お母さんが、お母さんが…」
「あな…タ……」
「激痛の中、娘を、ナルを守ってくれてたんだな……ありがとうミリナ。」
まだ顔は一部人間のままのミリナに感謝する。
「それとごめんな…全然、守れ、無かった……すまない」
涙が止まらない。
自分の力の無さを恨んだ。
若い頃の名声に栄光にしがみつき、大事な妻を守れず、守ると誓った妻が娘を守ってくれている。
「い…イノ。わ、たしタチの…ムすめ。」
「おかあさん、おとうさん」
ボロボロと大粒の涙を流す娘の目には何が映っているのだろうか。
混沌としたこの村で、この村の最期に
化物になっていく母親、血みどろで片腕のない父親。
カッコわるいなぁ。
いつまでも子供には…ナルには強くてかっこいい父親でいたかったのだけど。
「ナルを…おねがイね。あナ…タ。う゛うぅ」
「何を言っている…俺が隣の村まで連れて……」
そこで妻の、ミリナの頭に剣の切っ先が生えていることに気づいた。
青いマントに、銀色の鎧。仮面を被った騎士がミリナの脳天を剣で貫いていた。
正体不明の騎士はミリナの頭から剣を抜き、刀身に着いた血を地面に払う。
「落伍者の獣、討伐完了。」
そう冷酷に、平然淡々と言ってのける仮面の騎士に
「俺の妻だぁぁぁぁ!!」
殴りかかる。が、顎を叩かれ意識は一瞬で闇に沈んだ。
最期に見たのは夜の森に光る二つの眼光。
(ミリナ、ナル・・・ごめん。)
はいはい。
今更ながら「ジッタって誰だよ」っていうのは私も知りません。
ごめんなさい
でも一応アリシアさん達に繋がるのでもう少しだけ待っててください。
次話投稿日は2020/08/28 00:00に予約投稿します。
もう殆ど次のお話も書きあがってるのでコレはズレないです。きっと。
アリシアさん達の行動次第でアンブローズさんの敷いたレールをそのまま走るか、
若しくは未来を変えるのか、そして変わった世界は破滅に向かうのか平和に向かうのか。
そういういとこはもう読んでくださっている皆様にお任せします。
私はその夢をみるだけですので




