◆血塗(ちぬ)れのブルーム
謎多き五剣のブルームさんと幸運の申し子ジードさんのお話。
明晰夢ってドコからドコまでが明晰夢なのでしょう?
私の場合明晰夢っていうのかな?なんなんだろう。
見たいと思った夢がある程度の確率でみれて、それをしっかりと夢と自覚しながらも操作できる。みたいな。
「流れを自分の意志で変えられる映画」を見ている感覚です。
起きても意識してれば覚えていられます。割と繊細に思い出せる。
コレはなんていう現象?フツーの夢?
楽しいからいいけどね。。。
「報酬なんかいらない。村の再興に使え。」
冷たく、そう言い放つのはフードを深く被った少年。
どこか中性的な声色で年齢は若いと見える。
「有難う御座います、有難う御座います!!」
そんな少年に向かって老人や大人がこぞって地に額を擦り付け涙を流しながらお礼を連ねる。
そんな村人をチラと見やると少年は気にせず走り出した。
「ブルームさんありがとー!」
「あーりーがとー」
村の外れに差し掛かるあたりで先程の村の子供達が両手を振っているのが見える。
表情は変えずに走り続け、サルスムーナ帝国のギルドへ向かう。
不愛想に言葉自体は少ないが子供たちが喜んでいる様を思い浮かべるとただ口元だけ緩んだ。
「依頼は終わった。次は何か討伐依頼はないか。火急のものから受けよう。」
「も…もう帰られたのですね。」
そういうとギルドの受付嬢も苦笑いしながら依頼を探し始める。
無理もない。
本来ギルドとしては「依頼者」と「依頼遂行者」の仲介を執り行う団体である。
「依頼者」はまずギルドに依頼料として全体報酬額の10%を支払う。
するとギルドでは「依頼遂行者」個人又はチームに難易度別で依頼を提案する。
この時勿論冒険者達にムリな依頼をさせないように冒険者にもランク分けをしている。
「依頼遂行者」が見事依頼を達成すると、残りの90%の成功報酬を「依頼者」が支払い、
ギルドが仲介料として90%の内の30~40%を追加で徴収し、残った全体の内の50~60%が「依頼達成者」に支給されるという仕組みである。
ここで問題なのが、
このブルームは報酬を依頼主に全て断り、依頼金のみしかギルドには入らないのだ。
もし他の冒険者たちが達成すればブルームが達成するのと比べ5倍の利益が入るのだ。
この異例をギルドの最高責任者のミュールとハウゼが許可したものであるから余計に質が悪い。
ギルドの収入悪化と、所属冒険者達へ回す依頼が激減。
その上、本来A級冒険者やB級冒険者がチームで臨む危険な討伐依頼もサクっと短時間でこなしてくるのだ。
苦渋の末、ギルドは敢えて距離のある遠い村や僻地での依頼を回したのだが、馬車で何もせず直行直帰するよりも早い時間で戻ってくる。
何故?
もしかして現地に行きすらせずどこかで時間を潰して「依頼達成」した事にしてるのではないか、と考える者もいる。
しかし現地の討伐対象はしっかりと始末してあり、回収する素材が生暖かく新鮮で、それでいて物々しく激しい戦闘痕を語るのだ。
いくつかの依頼書を見つめ、何かの計算をして出てきた答えに仰天しつつ、受付嬢は冷や汗をかきながら
「ブルーム様に勧められる依頼が現在御座いません。今回長距離での遠征のハズでしたので…本日はどうか、どうかお休みになりませんか?」
と切実にお願いをする。
普段依頼を冒険者に無神経にボンボン回すギルドも利益を生み出さない英雄に頭も上がらずタジタジである。
「顔色が悪いな、貴方も休んだ方がいい」
そうポツリと言い残すとギルドの二階部分の宿に向かっていった。
ブルームが去った後、受付嬢はギルド長にブルームが依頼を達成することによって消えた利益を計算した紙を持っていく。
ブルームがサルスムーナ帝国内のギルドで依頼を受け始めてからギルド長が水で薄めて飲んでいたワインが純粋な水になる事が確定した。
竜討伐に失敗し敗退してからというものの、
ブルームはクムルンランド領とサルスムーナ帝国の境にあるスデルーク城を南下し、
サルスムーナ帝国領内のギルドの討伐クエストをこなしていた、
寄せられた期待に応えることが出来なかった罪悪感を、
前衛として後方に跳んだ攻撃に対処しきれなかったことを誤魔化し考えないようにする為に
闇雲に討伐依頼を引き受け、戦闘に身を置いていった。
「ボクがしっかりと…もっと圧倒しきれる力があったならば……」
竜と戦った時もそうだ。
ただ、浮かれてしまっていた。
伝説の英雄達と肩を並べ、共に戦える事を。
強くなれたのだと、やっと大切な人を守れるくらいの強さになれたのだと…
そう過信してしまったのだ。
同じ過ちを、悲劇を繰り返してやっと、我に返る。
「ボクは弱い」
一度失くしてしまった大事な物。
もう二度と失くさぬように強くなったつもりだったのに。
「ボクは弱い」
初めて人の温かさを知った、
何も知らない、わからない自分を受け入れてくれた
「ボクは弱、イ」
そんな大事な人たちを
大切な人たちを見殺しにしてしまった、全部。
「――ゼンブ、ボクガコロシタンダ……」
そしてまた、このあいだもヒトリ、
魔王を倒した英雄の一人を
「ボ…クガ、コ、ロ…シタ。」
「―――フ……フフ…フフッ、ハハ――――」
ドンドンドン。
ドンドンドンドン。
扉を何度も強く叩かれる。
「ブルーム様!いらっしゃいますか!?」
いつの間に眠っていたのだろうか。
マントと鎧をしたまま眠っていたようだ。
「何」
扉を開けると昨日のギルドの受付嬢だ。
昨日とはまた別の顔色の悪さ。
「休んだ方がいいって―」
「ハイオークの率いるオークの集団が確認されました。」
その言葉だけで十分だった。
「準備する、少し待て」
そう言うと受付嬢は少し安心したようで頷くと依頼の詳細のまとめをすべく下の階に降りて行った。
ハイオークの率いるオークの集団。
あの慌てようから、きっと30は下らないオークがいるのだろう。
村に侵入でもされたらひとたまりもない。
あっという間に村は全滅。人は全て喰われるか攫われてしまう。
ギルドが指定した依頼ランクはA-だった。
ただし急を要するとのことで依頼達成速度の早いブルームに一番に知らされた。
ブルームはいつもとは表情の違う職員に只事ではない雰囲気を感じ取り、最速で現場の村へ向かった。
受付嬢の印した地図の裏のメモを読む。
『今回、オルテス辺境伯領のカルピスという村の周辺で50を超えるオークが発見されました。何か規則的に動いている様で偵察部隊が見つかっても手は出されずニタァとされただけだそうです。まだ暫く先だと思われていた魔王の再来の予兆かもしれません。もしかしたら魔王の幼体のようなものが既に誕生してしまっている可能性もあります、お気を付けください。』
俗に魔王と呼ばれる個体は主に突然変異によるものとされているが、その理由もその原因も何もわかっていない。
ただわかっていることと言えば、毎回魔王と呼ばれる個体の種族が違う事。そして世代を超えるごとに魔王は強さを増していくという事である。
もし魔王の幼体が発生してしまっていたとしたら、早い段階で潰しておかねば、世界の安寧はまた揺らぐ。
完全に魔王になるには時間がかかると言われているがどれほどかはわからない。
魔王として成熟する前に芽を摘み取るしかないのである。
しかし、カルピスに着いたブルームはオークを見つけることは出来なかった。
村人はただただ怯えるのみで、どこかに消えてしまったオークという恐怖を拭い去ることが出来なかった。
ブルームが諦めず、村に滞在し周囲の捜索を続けていると、早馬でギルドの使いが最新の目撃情報を伝えに来た。
その様子に村人たちは胸を撫でおろしていたが、
危機が依然として去ったわけではない。災禍の渦が移動して離れただけで、その渦は後にきっと抗いようも怯える暇もなく周囲に死を撒き散らす災害になりかねない。
ブルームはギルドの使いの言われた方角に向かう。
しかしその先でもオークの集団どころか野生のオークですら見かけることが出来なかった。
目撃情報が入る度にオークの集団の数は増して
最初の目撃から1か月が経つ頃には100頭を超えているとまで言われていた。
この異常事態にギルドは全面的に冒険者も派遣したが、オークの集団の出没と増員を食い止めることは出来なかった。
日に日に増していくギルドの焦燥感、
もし目撃情報があっても並みの冒険者では太刀打ちも出来ず、数も数なだけに
全国の著名な冒険者チームや他の五剣メンバー、サルスムーナとは関係のない私設軍団までも参戦してくる始末。
イタチごっこが1ヶ月以上続き、ブルームはそのスピード故一番乗りで目撃現場に到着するのだが
何故か違和感を覚えていた。
いつものように目撃情報の現場からギルドに帰ってくるとそれは確信に変わった。
酒場のギルド受付カウンターの近くの席、二人の男が話をしている。
その内の一人は覚えのある顔。
その男はブルームが目撃現場に行くと必ずと言っていいほどその現場付近の村にいる。
最初は情報の早い奴だなくらいにしか気にしていなかったが、
流石におかしい
スピードには自信はあるし、ギルドは目撃情報は猪一番にブルームに伝えているという。
なのにこの男の方が毎回先に現場近辺にいる。
偶然というにはあまりにも出来すぎていた。
「お前、よく会うな。」
ブルームはその男にそう投げかける。
「おぅ、奇遇ですね」
声をかけられるのは心外だったのか少し驚いたようなリアクションをする。
「だれ?」
その男と先程まで話をしていたヒョロっとした男は訝しむようにブルームを頭の天辺からつま先までジロジロと眺める。
エールを一口飲み
「ほら、話をしていたブルームさんだ」
「え!あの英雄の!?」
男はもう一人の男に紹介をしてくれる。
英雄なんて呼ばれる程の事はしていない。
ついムスっとしてしまうが
いつも通りフードを深く被っている為、表情は見えないはずだ。
そしてブルームは考える。
こんなに頻発しているオークの目撃情報。
嘘という訳ではないだろう。
何故なら依頼をする村はメリットが何一つ無い。
依頼をするだけで、村からしたら出費が嵩む。
村人が蹂躙され、村が潰えるよりはギルドを頼る。
どれだけの人間が苦汁を飲んで、
自分達の収入を減らし、国税とは別にギルドへ依頼料を支払う?
そんな人達に誰が得をするわけでもない嘘をついている余裕なんかない。
ならば怪しいのはいつもいるあの男だ。
何故、オークはブルームがつく頃には必ず退散している?
知恵の少ないはずのオークが痕跡まで消して移動している、
仮説は立てられる
ギルドに出入りしているこの男と何人かでオークを誘導している。
中には人語を理解するオークもいるという、不可能な訳ではない。
ただ、何故?
人間がオークと組んでいる。
魔族の復活を目論む魔教の手の者か?
ギルド登録時には魔教根絶のために、
魔教信者であれば弾かれるように水晶で確認される。
この心理探索魔法は特S級魔法なのでリジェクトすることはほぼ不可能。
特S級魔法を使えるのは現段階で大賢者アンブローズと、七高の英雄ミュールのみ。
二人とも魔教根絶を掲げている。
何故?
オークが素直に男の誘導に従っているのか。
何も確信がある訳じゃない。
ただそうであれば今までの事に説明を着けることが容易だ。
今はまだ推測。
確定してから、処理をしてからの事後報告で構わない。
オークの20や30、相手でも殺りきる自信はある。
名も知らぬ、魔物を誘導する男。
「お前は、何者だ」
いっそここで逃げ出す素振りでも見せれば首を撥ねる。
その一言でブルームの放った殺気が周りに漏れだし、
先程まで大声で笑い合いながら飲んでいた者達が一斉に停まる。
否、多くの冒険者がブルームの殺気で意識を失った。
ブルームは睨みつける。
男は仲間を揺り起こすとニッコリと笑顔を作り酒をジョッキに注ぐとブルームに渡そうとする。
「俺はただのC級冒険者さ。五剣のブルームさんに名乗れる程の者ではないよ」
…コイツは出来る。
今の殺気をこんな至近距離アテられて怯みも物怖じもしない。
E級やD級、C級も気絶させる、この距離で直にアテられればB級だって意識を一部持っていける。それを何事もなく?
疑心感が募る。
コイツは何だ?
「酒なんかいらない。」
情報が足りない。まだ殺すには早いか?
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
ジードは焦りに焦り、頭の中がパンク寸前だった。
オークを誘導して色んな村を回り、
友好的な関係を築ける辺境の村を探し
ついでに道すがら勝手に仲間になっていくオークをどう説明する。
ギルドからしたら完全に敵対行為であり、抹殺対象だ。
名前が知られていないのが唯一の救いだ。
もし知られた暁には、大陸中に指名手配され、
常に多くの賞金稼ぎ、冒険者、レギオンなんかにも命を狙われる亡命生活。
ヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバい、
完っ全にバレてる。
よりによって五剣のブルームに目をつけられた。
しかもなんか、
睨んできたと思えば酒場の連中皆気絶してるし、
あ、フェイもか。
逃げるか?
まず起こすか、起こして逃げて…
いや、コイツの異常なスピードは何度も体感してわかる。
人間の為す技ではない。
ここで情報を渡すのは得策じゃない。
何かわかんないけど、腹がムカムカして意識が飛びそうになったし、
このコレで皆、
あ、ダメだ。頭回らない。
怪しまれてる睨んでくるし、取り敢えず酒を注いで場をなごませたい、キツい帰りたい。
「俺はただのC級冒険者さ。五剣のブルームさんに名乗れる程の者ではないよ。」
「酒なんかいらない。」
ダメだ!
断られた!泣きそう!…吐きそう。
「んぁ、」
フェイ起きた
「すまない、ブルームさん。仲間が体調悪いみたいだから宿まで送っていくよ。話はまた今度」
やった!これは自然だ。
自然に逃げ仰せる。早く帰りたい!
もう今度なんて無いけどな。
情報も与えず、完全勝利だ!
フェイの腕を自分の肩に回し、腰を支える。
「ぇ。ジード。俺…」
こ…コイツ!!殺す!後で絶対殺す!!
「あっはは。何言ってんだ!!あはは!」
「ジード…?」
あ、ほら!ブルームさんが聞いちゃった。
あ、ダメだ。死ぬ、コレ。
多分オークのやつバレてるし
「あはは!違いますよ、ジョードっ(丁度)!お前は眠っちまったんだよ」
「え?違う違う、俺名前呼んだだけ…」
お前は黙れぇぇえ!!
ダメだ、コイツ状況わかってない!
「ジー…ド…?」
「いや、俺ら帰りますんでまた今度。」
ササッと帰ってもうここには来ない!
そうしよう!他国に渡ろ…
「あの…?」
踏み出す一歩はマントを掴むブルームによって止められた。
え、離して?
「本当に…ジード?」
うつむき、そう問いただしてくるブルームに
「そうっすよ!リンク村のジードっつったらリンクの英雄よ?五剣といい線張ってるね!」
は。
なんだ急にピンピンしやがって、
しかも満面の笑み。
くそっ。
「田舎の村なんで、井の中の蛙なんで、気にしないでください。私らは帰りますんで…」
え?マント微動だにしない
なんで?
指で摘まんでるだけじゃん!なんで!?
「………った」
ブルームが何か言ったと思えば身体は
宙に浮いていた。
いや、ブルームが腹にしがみついている。
これは…タックルだ。
殺される。
そう、これは、確信だった。
腹に飛び付かれ、タックル宜しく壁を突き破るクッションとして。
そう、ジードはクッションである。
荒々しく割られた木の破片からジードに推進力を与えるこの少年を守るために。
いや、鉛のように硬い?違う。
鎧だコレ。
だって腹の所に襟首の硬いのが当たって痛いし
中々の強度を誇り、一般的なナイフであれば貫通出来ずに刃が滑る筈の皮の鎧を着ているのに、
壁を突き破る背中よりも腹部にかかる圧力で内臓が潰れてしまいそうだ。
つまり、死だ。そして吐きそう。
「会いたかった、会いたかった!ずっと…ずっと……お兄ちゃん!」
腹部に顔を擦り付けながらしがみつくブルームの締め付けが止めとなり
ブルームの言葉は脳内に反芻され、意識は闇に呑まれた。
「ん…」
気が付けば、宿である。
そして寝ている俺の手を掴むコレは誰だ。神官でも医師でもない。
金髪ショートの綺麗な顔立ちの少女だ。
隣で得意げに話しているのはよく知っている、フェイだ。
「…んで、そこにこのジードの兄貴が助けに来てくれたってわけよ。その時兄貴はまだ9歳!
村にホブルボアが出たから村の大人総出で何人かの犠牲は覚悟していたのに、
大人達が現場に着いたら返り血を浴びて立つ兄貴と木の杭に刺さったホブルボア。当時7歳だった俺は思ったね。この人がきっと勇者なんだって。
兄貴にはナニカがある。この人に着いて行けば絶対に大丈夫なんだ!」
自慢げに胸を張り、誇るフェイになんだかむず痒くなって
「…やめてくれよ。偶然なんだそれは」
声を発すると二人とも目が覚めたジードに気づいたようだ。
「お兄ちゃん!大丈夫?急に気絶しちゃったんだよ、飲みすぎちゃったんだね多分。気分は?今はヘーキ?」
「は…誰。お兄ちゃん?」
「え…そっか。そうだよね…」
シュンとする金髪の少女と笑いを堪えるフェイ。
そうか…なるほど、理解した。
「すみません、ウチの連れの悪ふざけに付き合わされているんでしょう。えっと…」
「兄貴、ブルームさん」
「へぇ、五剣のブルームさんと同名なんですね!」
「本人本人」
「は?」
何を言っているんだコイツは…
そういえばなんで宿に…死んだんじゃないのか、俺は。
「アニキあのあと大変だったんすよ。ブルームさんがちょっと抱き着いたら壁突き破って、止まったと思ったら抱き着いてるブルームさんの頭の上にゲロ吐くし。」
「あれは、ボクが急に飛びついちゃったから上手いこと鳩尾とか入って吐いちゃったんだよ、きっと」
「ふぅー…」
「アニキ、フーじゃなくてまずは謝罪でしょ」
「いや、それは、ボクが悪くって…」
・・・
「ちょっと待って!とりあえず……ゲロ吐いてごめんなさい!」
ベッドに座ったままではあるがとりあえず頭を下げる
「頭上げてよ、悪かったのはボクだし。急に飛びついちゃってゴメンネ。嬉しくって…」
顔を赤らめて両手の人差し指同士でつっつく仕草をする自称ブルーム。
「ちょっと、それ!」
頭は下げたまま片手を突き出し制止する。
そこが特に理解できない。
「?」
「それなんですが、貴方は五剣のブルームさんでお間違えはないのでしょうか?私にはどうにも…」
そこまで言うとフェイが少女のフードを頭にかける
「兄貴、ホラ!」
あら不思議。五光名項五剣の血濡れのブルームその人である。
「気軽に触んな」
ジロリとフェイを威嚇すれば尚の事。
「確かに……本人だ。」
しかし、フードの中身が少女だったとは思いもせず…
「というか、何故私の事を、その、お兄ちゃんと?人違いですよブルームさん」
そう言うとブルームは寂しそうな顔をしながら笑った。
「ううん、違うよ。ボクはずっと貴方を探していたんだ。五剣になったのも貴方を探すため。」
「すみません、話が見えません。何故俺を?」
「…ボクはハイドさんのレギオンに所属していました。」
ハイド…?それは…
「そう、貴方のお父さんです。ボクはハイドさんに拾われた戦争孤児です。」
「父の…」
「はい、僕の唯一の家族でした…」
嬉しそうに、そして悲しそうに語る彼女は胸当ての鎧の内をゴソゴソとまさぐると
「これを…」
そういうと父がよく着けていた少し紫がかった黒いペンダントを渡された。
「本当…なんだな…」
そしてコレが俺の手に渡るって事はつまり…
「ハイドさんは、当時の五剣のノウグストの悪巧みを知り、妨害を行った結果ハイドさん含むレギオンメンバーはボクを除き全員殺害されました。」
「そうか…」
やはり、とどこか心の中でわかってはいたんだ。
「ジードさん…貴方のお父さんを守れず申し訳御座いません!」
土下座をし、歯を食いしばるブルームの手を掴み引き寄せる。
「お前も辛かったんだろ…お前を怨んだりしないさ。望んだ結果に手が届かなかったオヤジの所為なんだ。」
この少女は強い。現に現大陸最強の剣士の称号、五剣。それを得ているのだから。
でも…きっとオヤジはこの子が戦うことを良しとはしなかったんだろうな…。
『子供と女を守るのが、大人の男の矜持ってもんだ』
そう言うオヤジの背中を覚えている。
「フッ。オヤジらしいな…」
意外とストンと腑に落ちた。
だが、死んじゃあ元も子もない。
それを為すのは守れる力あってのモノだ。
今、腕の中で泣きじゃくっている少女は大陸最強の剣士だ。
こんな子に業を背負わせて…
「全く、世話の焼けるオヤジだな。」
不思議と涙も何も出なかった。
少し経って、ブルームが泣き止んだ頃。
「ブルーム、お前は何も気にすんな。死んだオヤジが悪いんだ。…こんな年場も行かない少女に何させてんだか…」
「・・・あの。おにいちゃん」
「おに…まぁいいけど。何」
「ボクは男だよ?」
そうだよね
わかっていた
男だと思っていたのが女だと理解したら、それをも覆される。
こんな事があるだろうか、
というかキャラが変わりすぎていて全然ついていけない。
現にフェイも固まっている。
「ところでお兄ちゃん」
「とても呼ばれ慣れませんが、何ですか?」
知らぬ間に弟が出来ていたことには別に気にならないが呼ばれ方がむず痒い。
元々一人っ子の為かまだアニキの方がいい。
それまで笑顔で話していたブルームの表情が変わる。
「オークの大群、従えてるよね?…ソレ、どうするつもりなの?」
「このあと 滅茶苦茶 せ〇〇〇 した」
ちょっとガチでコレ付け足そうかと思ったけどやめときました。
五剣のブルームさんの最期です。
この後五剣のブルームさんは出てきません。
五剣メンバーで最初の脱落者ですね、あ。違うか最初はノウグストか。
因みにブルームさんの「血濡れ」というのはノウグストさんのレギオンの人達の返り血です。
全身、血塗れになりながらノウグストさんの首を持って、アンブローズに謁見したので
その時の第一印象で冠の二つ名を付けられてます




