#よっしゃこれもコピペっとこ!
腹をすかせた虎太郎の食欲をそそったのはカフェテラスのあるハンバーガー屋だった。その中でも一番美味そうな、レタス、ベーコン、トマト、厚めのパティが挟まったハンバーガーを選ぶ。
それと付け合わせのポテトも。
お値段はセットで1000ゼニーだった。正直、贅沢だと思ったが、食べたかったんだからしょうがない! と虎太郎は自分に言い訳をした。飲み物は公園の水を飲む予定である。
カフェテラスの一番隅っこの目立たない席に座って、ふと、気が付く。
「ひょっとして、コピペって食べ物にも使えるんじゃないかな?」
周りをきょろきょろと見渡して、椅子の向きを変えて、人から見えない位置にバーガーとポテトを移動する。
そしてこっそりと「コピー」と能力を発動させた。
ペーストするとハンバーガーが二つ出現する。
「う!!」またやったー!!と叫びそうになったがとっさに声を飲み込む。
(これがあれば食べるものに困らないぞ! でもどうしよう、ポテトもコピペしたいんだけどなー)
試しにポテトをコピーして「バーガーをペースト」と唱える。現れたのはバーガーだった。(じゃあポテトは!?)小声で「ポテトをペースト」と唱えると、ポテトが出現した。「う!!!」またも叫びそうになった声を抑える。
コピーペーストと言えば、上書きされれば消えるのが一般的だ。だが、どうやらこの能力は違うらしい。クリップボードに保存されるようだ。
いつまで保存されるのか、どれだけ保存されるのかはまだ未知数だが。
(凄すぎるぞコピーペースト! なんでもありじゃないか! でもいくつ保存できるのかな。ちょっと待てその前に二セットもバーガー食べきれない! 残すのはもったいないしなぁ…)
「カットはできるのかな? わ」
カットと言った瞬間、出現したほうのハンバーガーとポテトは消えた。
「コピーペーストに、カットが使えるんだな。ちなみにオリジナルのほうは?」
買った本物のバーガーにカットを使っても無くなりはしなかった。
「カットが使えるのはコピペで出した品だけか。当然と言えば当然だよな」
「ゴブリンだああ! ゴブリンが出たぞお!!」
「え」
バーガーを手にしたまま立ち上がる。
石畳の隙間から醜悪な小人のモンスターが霧のように染み出てきていた。
「あ、あ」
エルフの女の子が腰を抜かしている。
ゴブリンがその小さな体に向かって駆け出した。
「危ない!」
虎太郎は考えるより先に走っていた。
手にはハンバーガー。
「これでも食べてろ!!」
ゴブリンの口に、ハンバーガーを押し込んだ。
「ゴブ!?」突然のことに、ゴブリンが目を白黒させる。
「今だ! 逃げよう!」
虎太郎は女の子を抱え上げ、全力で走った。
「ゴブリンなら俺に任せろ!」
「いや、おれが倒す!」
「俺が先だ!」
「お前ら喧嘩してないで早く倒せ!」
この程度のモンスターが出るのは日常茶飯事なのだろう。
周囲の大人たちは慌てることもなく、あっという間にゴブリンの駆除を済ませた。




