#美人なお姉さんがヨチヨチしたがってる
「しかし意地が悪いねえフィオナちゃん。月見草の採取だなんて。50本なんて二か月ぐらいかかるんじゃねーか?」
ギルドで酒を飲みながら冒険者の一人がカウンターの上に大きな胸を乗せている女性に呼びかける。
「ふふふ、だってあの子なんかいじわるしたくなっちゃう可愛い顔してたんだもん。見つからないよーって泣きついてきたらヨチヨチしてあげるの。お家に連れて帰って「あーん」でご飯食べさせて、似合いそうな洋服も買ってあげたい!」」
「あんなナヨナヨしたのが好みなのか? おれにしとけよフィオナちゃーん」
「Dクラスなんてお断りよ」
「でもあのガキはFだったぜ」
「顔が好みだったからいいの! すっごい可愛かったし! あとちょうどいいぐらいの年下なのがたまんなーい」
「お邪魔します!!!」
バン!とドアを開いて虎太郎が入ってくる。
両手いっぱいに月見草の花束を抱えていた。
「へ?」
ガシャンと、誰かが落としたグラスが割れる音がする。
「月見草一杯見つけてきました! これ割増料金もらえますか!? って皆さん、どうしました?」
「あ、あれから一時間しかたってないのに?? もう見つけたのかよ??」
酒を飲んでいた体格のいい冒険者に問いかけられ、
「はい!! 百本あります!」
と虎太郎は答えた。
「……百本?」
「一時間しか経ってないよね?」
「はい! 見つけるのものすごく大変でしたよ。公園行ったり広場行ったり。でも見つかって良かった」
「ど、どんな魔法を使ったの?」
「え? あ。目力でみつけました」
「目力?」
「はい」
「…………」
「すごく目を凝らしました」
「そう……」
コピーペーストだと知られたら値切られそうなので虎太郎は嘘をついた。
「と、とにかく報酬を支払うわね。百本なら10000ゼニーよ」
「待ってください。50本で6000ゼニーなら、100本なら12000ゼニーですよね?」
「……」
「僕、商売スキルと交渉スキル100なので」
「意外と強いスキル持ってた!!」
「戦闘スキルが無いって聞いていたから、てっきり何もできない子なのかと思ってたわ」
「僕もそう思ってました」
戦闘能力はない。剣も魔法も使えない。
けれど、採取ならできる。商売だってできるかもしれない。
コピーペーストがあれば、もっと色々なことができるかもしれない。
自分にも、この世界で生きていける可能性がある。
そう思うと、自然と笑顔になった。
こうして、虎太郎は冒険者としての最初の一歩を踏み出したのであった。
報酬は12000ゼニー。途中で見つけたおいしそうなバーガーが一つ500ゼニーだったので昼飯にありつくには十分の金額だった。
「ああん、可愛い子に首輪をつけて飼う生活がパーになっちゃたぁあ」
フィオナがカウンターに肘をついて両手で顔を隠しさめざめと悲しむ。
「フィオナちゃん、そこまで考えてたのかよ」
冒険者の一人が、ドン引きしている周囲の仲間たちを代表して突っ込みを入れた。




