#幸運の指輪
「道が二手に別れてるな…でもどちらの道の奥にも扉がある」
「【危険察知】」
エルがエルフィナよりも先に、罠を見抜いた、エルフィナが「ぐぬぬ」とエルを睨む。エルは「ふん」と得意げに胸を張った。
片方の道には進みようがないほどに床にも壁にも罠が仕掛けられていた。
「これは、たんなる罠なのかな」
「いや、わざわざ罠だらけの道の先に扉があるんだ。何か重要なもんがあるに決まってる。しかもエルフ関連と見た。俺が行く。死にかけたらカットしろよ」
「待って!」
エルがクロの服を引っ張った。
「また、弓が出てくるかもしれないんのよ! あんた、痛くないの!?」
「いや、痛ぇけど、オリジナルが無事なら死ぬわけじゃねえし」
「私は怖いよ! 痛いのも嫌! どうして平気でいられるの!?」
「だから普通に死なないってわかってるからだけど──って、どうした虎太郎。すげえ面してるぞ」
「いや、そんなこと考えたことも、なかった、から。お前に痛覚があって、感覚があって、感情も──あるのに」
おそらく瞳には何も写っていないだろう。床を凝視するようにして、つづけた。
「僕はずっと、お前を死んでも作り直せる存在だと思ってた」
「はぁ? 面倒な事考えるなって。とにかく俺らは効率! モンスターを倒す! そのための先兵が俺! 死んでも替えがきくもんなの! とにかくカットしろよ」
大股でジャンプして罠のパネルの上に着地する。途端に何百本もの矢がクロめがけて壁から射出される。
「カット!!───ペースト!」
「よし、あそこのパネルは解放した。後三歩ほどでドアにたどり着くな。いくぞ」
エルとエルフィナが抱きしめあってクロから目をそらす。虎太郎だけが罠に飛び込んでいくクロをカット、ペーストする。
いつもの作業だ。
クロはいつだって死にかけていたし、経験値を自動的に回収するタンクのはずだった。
なのに、どうして、
クロが罠に着地するより前に「カット!!」クロを、カットしてしまった。
「ペースト…」
「おい、罠を踏む前にカットしてどうすんだよ。またやり直しじゃねえか」
「ごめん…」
「いや謝られるのもきめえな。うっし、もう一回行くぜ」
繰り返すうちにクロは扉までたどり着き、中にあった宝箱から指輪を見つけてきた。飛び石のように解放した石を踏みつつ、帰りは無傷で戻ってくる。
「いや、エルの危機察知マジで役に立つわ。無駄に怪我せず帰ってこれたし。やっぱエルフ用の装備があったぜ。幸運値+100上がる指輪!! しかも「使用者にとって一番いい幸運を引き寄せる」だってよ。お前ら幸薄そうだし丁度いいアイテムだな。虎太郎、エルをカットしろ」
「─────────」
「おい、どうしたんだ?」
「いや、なんでもない。───カット」
エルがエルフィナに統合される。
「ほら、お前がはめてやれよ」
美しい宝石のついた指輪を投げてよこされる。
虎太郎はエルフィナの指にそっと指輪をはめた。
利き手にはめるのは邪魔そうだから左手を選び、サイズ的に薬指を選んだ。
「わ」エルフィナが驚きに赤くなる。
「……」
「おい、虎太郎。何か一言ねえのかよ」
「……」
虎太郎は左手薬指に指輪をはめることの意味さえ理解していないのだろう。
自分の髪の毛をかき回して、代わりにクロが答えた。
「たくよぉ……。宝石が派手だけど似合ってるぜ」
「ありが、と」
「ペースト」
エルの腕にも指輪がはまった状態でペーストされる。
「その…私たちの為に、ありがとね」
「お前から礼言われるのもきめえな」
「…………」
「いや突っ込みは!?」
エルも虎太郎も何も言わない。
クロだけが取り残された。
──ピコ。
【装備者:エルフィナ】
【幸運値+100】
──ピコ。
【装備者:エル】
【幸運値+100】
──ピコ。
【同一装備品の複製を確認】
【特殊条件を満たしました】
「……なんだろう?特殊条件って」
【個別レベル:20】
【新機能が解放されます】
「新機能かぁ。幸運の指輪だし、攻撃が当たりにくくなるとかそういうか奴か?」




