#今までの持ち物を換金しよう
「そうだ、ドロップした品物を売りたいんですけど、どこで売れますか?」
「ドロップ品ならうちで買い取るわよ。マリリンちゃん!ドロップ品をお願い!」
「はぁーい♡」
ハートが見えるような声が返ってきた。
ただし、無理に甲高く作っている声は、隠しきれない野太さを帯びている。
現れたのは、体積で言うと虎太郎の三倍はあろうかという大柄な男性だった。紫色の坊主頭に、やたらとゴージャスなドレス。
つまり、女装した男性だった。
「えとその、ドロップ品が結構溜まっちゃったんで買い取ってもらいたくて」
「わかってるわぁん。どうぞかたっぱしから出してちょうだい」
「じゃあまずスライムボール10200個」
ブワッとギルドの一角がスライムボールに埋まった。ちなみにおねえと虎太郎も一緒に埋まった。
「酒の中にスライムボールが入ってきたじゃねーか!」後ろで飲んでいたガルカンに怒鳴られる。
「すいませんん!」
「一万個も一気に出す馬鹿がどこにいるんだこのドアホが!!」
「ひいいいごめんなさい!!」
おねえにまで地声で凄まれ青くなって謝罪する。
「まったく! 私のインベントリ100もあるのにスライムボールだけで一杯になっちゃったわよ! あんた一体いくつインベントリ持ってるの!?」
「すいませんすいません!」
「とにかくまずはギルドの共通金庫に納めてくるから待ってなさい」
一万個回収されても二百個以上転がっている。虎太郎の頭の上にも一つ転がっていた。
「次は!?」
「はい!鉄塊750個」
「ぎゃあああ重ぇええええ!!!」
「あだだだだ」
「いてえじゃねえかいっぺんに出すなっつってんだろうが!!!」
とげとげの鉄塊がギルドの一角に山になって現れる。重みで皮膚に食い込んで防具を付けているのに普通に痛い。またおねえに凄まれてへこへことあやまることしかできない。
「すいませんすいません、こんな量になるとは思ってなくてインベントリ100個に入るからいいかなって思って!!」
「あんたねぇ、何年寝かせたらこれだけの量が手に入るのよ」
「えと……二日ぐらい?」
「なんなの?スライムをプチプチみたいに潰す作業でもやってたの?」
「そんなところです」
「スライムダンジョン、そんなにスライム多かったの?」
横で見ていたフィオナが問いかけてくる。
「はい。そりゃあもう隅田川花火大会かってぐらいに」
「そのたとえはよくわからないけどごった返してたってことだけは伝わってくるわ。ちょっとづつ出しなさい。50ずつぐらい」
「判りました。スライムブロック五十個」
一辺が一メートルほどある立方体のスライムブロックが五十個もギルドにあふれてえらいことになった。
「ギャーつぶれるううう!!!」
「ぐげええええ!!」
「喧嘩売ってんのかてめえええ!!!」
「ごめんなさいごめんなさいでも50個っていうから!」
なんやかんやあって最終的にはゲンコツをもらったけど、売った金はなんと200万ゼニーを超えた。ちりも積もれば積もれば積もればで積もりすぎた結果だったが。
ちょっといいものを食べよう。と思って歩いてると。
「皆さんどうです、珍しいエルフのメスですよ。買いませんか? 安くしておきますよ」
「安いのはいいけどエルフは役に立たないからなぁ。力も弱いし魔力も無いし」
「飾りにはなるけどねえ」
「───!!!」
手かせをつけられ、男につるし上げられている銀髪のエルフ。
長すぎる前髪に隠され、顔は見えない。年齢も、自分とそう変わらないように見えた。
だけどルルとセレナの顔が、脳裏をよぎった。
虎太郎の両手が、無意識に腰の剣へ伸びる。
「まだガキだがエルフは見た目がいいからな。俺が買ってやる。たっぷり可愛がってやるよ」
恰幅のいい肥えた男がエルフの前髪を引っ張った。銀色の瞳が男をきつく睨みつけている。
「いくらだ」
「120万ゼニーでさぁ」
「80万なら買ってやる」
「そこは足元みすぎでしょ。せめて100───」
「僕が買う」
「はぁ? 兄ちゃんがか? 最低でも100万ゼニーからだぜ。金はあるのか?」
ギルドから受け取ったばかりの金の袋を男の足元に投げた。
「200万ゼニーある。それで十分だろう」
「に、に、に200万ゼニー!?」
肥えた男も舌打ちをして去っていった。
男が零れ落ちた小銭も必死に拾っている隙に鍵を奪い、エルフの手かせを解く。
細い手首から枷を外す。今度は間に合った、と、心のどこかが安らいだ。
手首についた枷の擦過傷にポーションをかけて癒す。
「エ、エルフにポーション200万払った挙句にポーションまで使ってやがる! 誰だあいつ」
「ほら、最近ちょっと噂になってたFランクの」
「Fランク!?!?」
外野の声など気にせず、残ったポーションをハンカチでふき取る。
「怖かったよね。もう大丈夫だから。これ、あげるよ。好きに使って好きに生きて」
金に換えてなかったレアアイテムの一つ、スライムダンジョンの最下層で手に入れた金の延べ棒を手渡す。
「え、あ、あ、ば、ばかぁ! わたしにこんなもの渡したらすぐ人に取られるに決まってるでしょ! いらない!! ううん、いらなくない欲しい! ちょうだい! そしてこのお金でお前を買わせて!!」
渡した金塊を受け取られまた押し付けられて、
「え?え?」と虎太郎は混乱することしかできなかった。




