#そのころタカシは
「選ばれし勇者よ。そろそろ冒険に出てダンジョンを攻略せよ」
国王に呼ばれて直々にそう命じられていた。
「おれはまだ修行中の身だっつってんだろー?それに、剣を振ったらこの綺麗なネイルが取れるかもしれねえしさ」
無駄に宝石をちりばめた爪を国王に見せつける。
「チョーかわいいよねーアタシとお揃いー!」
なぜかぷりんまでついてきて勇者にべたべたしている。
「お前たちがいくら国庫を食いつぶしているのかわかっているのか。わがままもいい加減にせよ!」
「勇者様にそんな口聞いていいのか? 俺はこの国がどうなったって構わないんだけど」
「いざとなったら違う国に行くしねー」
「国王陛下、たった今、城下町の魔素の十六分の一が浄化されました!」
「ほらほらーおれがいるだけで街が浄化されてるじゃねえか」
「すごすぎー」
「違います! クリアされたのはスライムダンジョン、最近の調査ではAランクでも攻略が難しいとされていた最下層、3層までクリアしたのはFランクの黒崎虎太郎です!!」
ブン、と空中に画像が現れ、街を歩いている少年を映し出した。
「は」
タカシが一泊置く。
「はぁあああ~~~~!? なんであいつがしゃしゃってんだよ!!おれのおまけでついてきただけのくせに!」
「市街地で起きたキラーマンティスの大量殺戮を捨て身で止めたのも同名の少年です!! ひょっとして勇者とは───」
「おい、それ以上何を言うつもりだ」
タカシが剣を抜いて兵士の首元に押し付ける。
「い、いえ、なんでもございません!」
王の御前で抜刀するなど…! と、王の側近が言うが、タカシに睨まれて怯む。
「とにかく勇者はお・れ・さ・ま。あいつは単なるおれの小間使いみたいなもんだ。戦ってるなら好きに戦わせとけばいい」
「ぐう…」
誰も何も言えないまま、高笑いを残してタカシとぷりんは謁見の間から立ち去って行った。
深く長い溜息を吐き、国王は将軍の一人に命じた。
「黒崎虎太郎とやらをここへ連れてまいれ!」
と。




