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#コピペでボス戦

「第三層に到着! って、だだっ広い空間だな。東京ドームぐらいの広さがあるんじゃね!? そして、あいつが最後のボスだな」

 紫色の巨大なスライムが、中央に置かれた玉座に座っていた。しかし、ただ丸いだけのスライムだ。

「クイーンよりは戦いやすそうに見えるけど───え?」

 スライムキングというステータスを確認した、その一瞬でスライムは玉座から消えていた。

 二人の頭上に巨大な影が落ちる。

「あぶねえ!!!!」

 クロが虎太郎の襟首を引っ張り、影の外へ押し出した。だが、クロは逃げきれなかった。それどころか、虎太郎を押し出した反動で、影の真下に取り残されてしまう───。

「カット! ペースト!」

 クロが潰される寸前、虎太郎の声が響いた。クロの身体が消え、次の瞬間には再び虎太郎の隣に現れた。


 ずうううんんん、と激しい地鳴りが響いた。地震のように地面が揺れる。

「やべえ、今のはやばかった! 押しつぶされたら確実に圧死だ! オリジナル! お前は階段に避難しろ! こいつは格が違う!」

「ダメだ、戦う。【触手ラッシュ】!!」

 地面にめり込んだ最下層のボス、スライムキングに唯一のスキルを叩き込む。しかし、スライムキングは突然分裂し、触手の攻撃をすべて回避した。しかも、分裂した一体一体が桁違いに大きい。スライムプリンス並みの大きさの球体が、高速で二人を襲う。

「ぐぅ!」「くっ!」

「こんな命がけのドッジボール、やってられっかよ!」

 ドドドドドッ!!

 百本の風切剣が、二人を取り囲むように地面へ突き刺さった。剣の柄が、揺れる床の上で一斉に震えている。

「投げて攻撃しろ! 切ろうとしたら、こっちが飲み込まれる!」

「くそ! めんどくせえ!」

 高速で飛び回るスライムを避けながら、地面に突き立った剣を投げつけて攻撃する。


 投擲はさして得意ではないが、何しろ相手がでかい。どこに投げても当たる状態だった。

 一つ、二つとスライムが割れていく。だが、唐突に一か所へ集まり始めた。


「クロ!!」

 クロは自分ではなく、まず虎太郎を守るように動いていた。そのため、反応が遅れた。一瞬の隙を突かれ、クロは巨大なスライムに飲み込まれてしまう。

 カットしようとするよりも早く、巨大なスライムが弾けた。

 紫色の肉塊が無数に分かれ、地面に着地する。

 その一つ一つが、人間の姿をしていた。

「……は?」

 そこに立っていたのは、全員クロだった。

 巨大なスライムが分裂し、残ったのは数えきれないほどのクロだった。武器を持たない状態で取り込まれたため、どれが本物のクロなのか分からない。


『よくも我が妻と息子を殺してくれたな』

「なっ……」

 スライムがしゃべるとは想像もしていなかった虎太郎は虚を突かれた。

 目の前にいるクロたちも、全員が驚いた様子で宙を見上げている。声がどこから聞こえてくるのかは分からない。


『この中の一体だけに、我が核を忍ばせてある。だが、お前の同胞も中にいる。さて、誰が同胞なのか分かるか? 同胞が混じっていると知って、戦えるか? お前に同胞殺しの罪を背負わせてやる!!! 大切なものを失う痛みを知れ。お前が私の家族にしたことと、同じ痛みを味わわせてやる!』


「虎太郎! 俺がクロだ!」「いや、俺が本物だ!」「俺だ! 信じてくれ!」

 クロたちが一斉に話し出した。虎太郎は苦笑し、

「……こんなものが脅しになると、本気で思っているのか?」

 そう言った。

『なんだと?』

「僕がクロを見間違えるわけないだろ」

『なに!?』

 虎太郎は自分の胸に手を当てた。

「クロは僕の本能だ」

『──────!?』

「生きることを諦めかけている僕より、ずっとずっと」


 虎太郎が唇を吊り上げて笑う。

「モンスターへの憎悪が深い」

 その言葉を口にした瞬間だった。

 大勢のクロの中で、一体だけが動いた。

 戸惑うクロたちを殴り倒し、首をねじ切っていく。

 助けを求める声など、聞こえていないかのように。


「スライムの形より、ずっと壊しやすい形にしてくれてありがとう」


 虎太郎は大勢の自分たちの中に飛び込み、自分と同じ姿をした者たちを次々と切り殺していく。


 あの時、アップルパイを食べたいとさえ言わなければ、笑っていた人がいた。

 生きて、自分を待っていてくれる人がいた。

 あの時、自分がいなければ。

 今こうしてのうのうと生きている自分が許せない。


『そんな、馬鹿な』

 スライムキングの絶望の声が響く。

『ばかなああああああ』

 50体も倒さないうちに、核を持つ虎太郎を切り殺してしまった。

 残った虎太郎たちが溶けていく。


 二人の体が光り、足元に魔法陣が浮かび上がった。

【スライムキングが倒されました】

【虎太郎:ランクEになりました】

【クロ:ランクEになりました】

 どこからともなく声が聞こえてくる。


「あぁ……もう終わっちゃったのか。もっと切り殺したかったのに」

「マジでお前の感性、壊れてるね」

「でも、少しだけすっきりしたかな。自分じゃないけど、自分を殺せて」

「んじゃ、俺でも殺して、もっとすっきりしてみる?」


 クロが自分を親指で指さして言った。

「……クロ」

「ん?」

「そういうこと、二度と言うな」

「そうなの?」

「カット」

 と同時に、

――ピコピコピコピコピコ

【レベルが8に上がりました】

【レベルが9に上がりました】

【レベルが10に上がりました】


 一気にレベルが上がった。


「ペースト」で、再びクロを呼び出す。

「本体を切ったのは俺のほうだったみたいだな」

「レベルが上がる前にランクが上がったのはどうしてだ?」

「あ、俺、わかったかも」

「なにが?」

「お前って、一般スキルが異様に長かったろ? もう一遍見直してみろよ」

「今さらだけどなぁ」

 ザーッとスクロールすると、一番下にあったコピーペーストだけが特別に見えていたが、

「ほら、あった」

 クロがぐい、と自分のステータス画面に虎太郎の頭を引き寄せる。

「個別レベルアップ? なんだそれ?」

「わかんねえけど、ランクとは別にレベルアップがあるんじゃねえの?」

「だとしたら、キラーマンティス戦でもっとレベルアップしてもよかった気がする」

「アンロックされるまでが、めっちゃ長いタイプもあるから、それだったんじゃねえ?」

「あんろっく?」

「なんで俺が知ってる言葉をお前が知らないんだよ。まぁいいや、そんなことよりお宝確かめようぜ」

 スライムキングが座っていた玉座の後ろに、巨大な宝箱があった。

「武器か? 盾か?」

「盾はいらないかな。両刀で慣れちゃってるから」

 ぎぃ、と重い音を立てて宝箱が開いた。


 中には、黄金色に輝く巨大なインゴットが鎮座していた。


「「なあんだぁ、金かぁ」」


 変なところで息が合ってしまい、クロが笑い、虎太郎も苦笑する。

「じゃあ俺は休むから、切り取ってくれよ」

「クロはそれでいいのか?」

「それでって?」

「僕の中にいるだけでいいのかって……ことなんだけど。外に出て人と話したり、いろんなものを食べたりとかしたくならないのかなって」

「それは、お前が食ってるものを共有してるから興味ねえな。俺が望んでいるのはモンスターとの戦闘! それだけだからな」

「なら……いいけど。クロ」

「ん?」

「何度も助けてくれてありがとう」

「またそれかよ。自分に礼を言うの、きめえって」

「……それでも言いたいんだ」

「……そっかよ。んじゃ、おやすみ」

「うん。カット」

 パチン、と虎太郎が指を鳴らすと同時に、目を閉じたクロが切り取られた。


「……静かすぎるなあ」


 虎太郎は一瞬だけ目を閉じ、それから歩き始めた。


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