#階段での会話
「よく寝た……気がする」
「15時間寝てましたからねー」
「30分で起こせって言ったろ!」
「いや、人間、睡眠は大事よー。というわけで、俺のことカットしてくんないかな。俺が寝不足なの」
「分かったよ。カット」
ピコピコ───【レベルが7に上がりました】
「ペースト」
「おお!寝不足ばっちり解消。疲れもHPもMPも全快してるわー。お肌の調子もばっちり。お前って超便利なー」
「レベルが2も上がった。かなり倒してくれてたんだな。その、ありがとう」
「は? 自分で自分に礼言うとかきもくね?」
「僕の気分の問題だからクロにとやかく言われたくないよ」
「じゃあレベルも上がったところで行きましょうか。第三層。初心者ダンジョンの最深部へ」
「死ぬまで戦え。でも死ぬな」
「そんな、戦死以外は軽傷みたいなこと言われても、加減が難しいわー。俺としては、お前が安全地帯にいてくれる方がよっぽど戦いやすいんだけど」
「………」
「どう考えてもさ、虎太郎が死んだら俺も死ぬだろ?」
「それは分からない。僕の傷がクロに共有されたりはしないから、僕が死んでも生きているかもしれないじゃないか」
「あのね、俺たちは別々の電源から電気を引いてるんじゃなくて、同じ電源から引いてタコ足配線してる状態だと思うんだよね。主電源がお前で、タコ足が俺ね。だから主電源が落ちたら、タコ足配線も落ちるのよ。当然」
「そうかもしれないけど……」
「だったらさぁ、この安全な階段地帯で待っててくんない?」
「それはできない」
「お前さあ」
クロが深くため息をつく。
「実は死にたがってるだろ」
ぎくりと虎太郎が足を止めた。
「まぁ、気持ちはわかるぜ。こんなわけわかんねえ世界に飛ばされて、仲良くなれた姉ちゃんと妹も死んじまって、死んだら楽になれるかなーとか、実は夢で、死んだら元の世界に戻れるんじゃないかなーとか思う気持ちはさ」
どん、と虎太郎がクロの胸を叩いた。
「もういい。それ以上言うな」
「───俺にも本音を言えないとか、だいぶ壊れてるよ、お前」
くるりと踵を返し、虎太郎が階段を下りていく。
「無駄死にだけはすんなよ。俺はお前以上に、この世界のモンスター全てを殺したいと思っているんだからな」
「それは僕だって同じくらい強く思っている」
「……そうかよ」
「だから行こう」
「おう」
二人は並んで階段を下りていった。
ダンジョン、最後の階層へ。




