#市場にモンスターが現れた!!
武器屋の店主が消えた後も虎太郎はしばらく動けずに、片付け中だった箱に手をつきうずくまっていた。
と、その時。
にぎやかな人混みがにザワッと不審なざわめきが走った。市場の中央から人々が散り散りに逃げ出していく。
「モンスターだ! モンスターが出てくるぞ!」
「逃げろおお! 誰かギルドから人を呼べ!」
人々の間から、石畳の隙間から黒い霧が立ち上るのが見える。
霧は渦を巻きながら、巨大なモンスターの形を成していく。
「やべえ!!オークだ!! Eランクのモンスターだ! 坊主、逃げるぞ!!」
「え、え」
オークはどんどんと形になっていく。転んで人に踏まれ、逃げ遅れている人もいる。
虎太郎は無意識に手に風切剣をペーストしていた。
「戦います!!」
「なにぃ!?!?」
虎太郎は逃げ惑う人々の間を縫って進もうとする。だが、無意識に剣が人に当たらないよう気をつけてしまう。それに、逃げる人の数が多すぎる。
思うように前へ進めなかった。
そうしてる間にもオークは形になり、
そして───
倒れている人の頭を踏みつぶした!!
「う───うわあああ!!」
血しぶきが舞う。
虎太郎は半ばパニック状態でオークに剣を振り下ろした。
剣は意外にもあっさりとオークの体を切り裂いた。
虎太郎の力ではない+180もアップされる風切剣の性能だ。
オークは戦斧だけを残して蒸発した。
「おおおおお! すげえ、オークを倒しやがった! ありがとうよ兄ちゃん!」「助かったわ、本当にありがとう!!」「お前Fランクの能力じゃねえか! スゲエな! 良く勝てたな!」
感謝される。抱き着かれる。けれどそんなことは喜べもしなかった。
死んだ。人が死んだ。
頭を踏みつぶされて。
遺体を見る事さえできずに背中を向けてうつむいてしまった。
そんな虎太郎を他所に、人々が歓声を上げる。
(本当にこの世界では、人が一人二人殺される事なんて気にされなくなっているんだ!)
痛感して、がちり、と歯が鳴った。
虎太郎は知らずに風切剣をカットしていたが、剣が無くなったことに気が付く人はいなかった。




