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Eren's tower  作者: 氷見つかさ
第一章
9/16

第八話 死者の巣

「今何階かな?!」


「ちょうど10階と11階の間くらいだ」



フリは飽くこともなくスキップしている。


元来好奇心旺盛なのだろう。


リネンはその底のない体力に、若いっていいなあ、と妙に達観していた。



「……ほんと元気だな。

今度ドッグランにでも連れていってやろう」


「うるさい!!

これでも石掘ってるんですよ!」


フリがリネンにすごい勢いで威嚇した。



下の方になってくるとまとまった島が少なくなってきた。



リヴルのように大きな大陸のような島がない。


ほとんど小石のような島を渡り歩いて下へ向かっていた。


そのせいで、バランスをとれずふらふらしてしまう。



「さっきから鳥の音、すごいね」


「目をつけられないように、慎重にな」


魔物の羽ばたきが聞こえる中で耳打ちしてくる。


塔内では、いつでも気が抜けない。



「この島大きいな」

「ほんとだっ」


リヴル程ではないが一際大きい。


フリが跳ねて駆け寄った。



「洞窟だ!」

「階の境目のようだな」


リネンはそう言って大岩にぽっかり空いた空洞を見つめた。


奥は真っ暗で見れたものじゃない。


フリ、その様子にぴしっと固まった。



「行くか」

「……」


フリは動かずにリネンを睨んでいる。


なぜかごく自然にリネンの後ろに回っていた。


「どうした」

「先に行って」


突然むすっと。


何だ急に、とリネンは首を傾げた。



「嫌な予感がするから」


「貴様に分かるか、そんなもん」



呆れつつも先導する。


彼女、前で歩くのは本日初である。



「暗くて見えん……」


目を擦りながら慎重に進む。



中は一般的洞窟とほとんど変わらなかった。


じめっと空気が湿っており、苔が生えていた。



「うーん…」



構わずずんずん進むリネンに必死についていく。


背筋に走る悪寒が奇妙なのだ。



「おっ、開けた」


リネンの声が前から響いた。


恐る恐る洞窟を出た。



「いっ…!」



広がったのは、いかにも禍々しい空間だった。


薄く霧が立ち込め、墓がいくつも立っていた。


空気は重く沈み、何だか怪談の現場みたいだった。



「……」


リネンがじっとフリを見つめている。



フリは洞窟の中で縮こまっている。

泣きそうなまである。



「……もしや、怖いの苦手なのか…?!」


「ち、違うし……!」


慌ててフリは首を振った。



「……お前、ここから先は墓地地帯だぞ。

平気か?」


「へ、へーき、へーき…」


無理やり笑って踏み出す。


若干足が震えていた。



ばふっとブーツが柔らかい土に埋まった。


「……埋まった…」

「腐葉土だな」



「うう、気味悪……」

「もう少しの辛抱だ」



薄く苔が生えた石レンガの壁に「B12」と書いてある。



「…なんでいちいち階表示なんだろうな」


「確かに…。上の浮島の階とか一セットでいいのにね」



フリ、首を傾げた。


わざわざ5階分も使うなんて贅沢な塔だねえ。



「うっ…!」


フリは短い悲鳴をあげた。


手首が、誰かに掴まれたみたいな気がしたのだ。


しかも、ひどく冷たかった。



「おい、何だ…!」


必死に倒れかけたフリの体を支えた。



「今、誰かに…」

「霊か?」


リネン、周りをきょろきょろ見渡した。


霊族の出現の多い階ではあるが。



「げっ…!いつの間に湧いて…!」



土を突き破って出てくるアンデッドにゾンビ。


コウモリが羽ばたき、霧が一層濃くなった。


妙な肌寒さに、リネンは生唾を呑み込んだ。



「走り抜けるぞ!しっかりしろ!」

「う、うん…!」


ぐっとリネンがフリを引っ張って走り始めた。



───浮島フロアから打って変わって、この階で命を落とす冒険者は多い。


このフロアは墓場で出来ており、霊やゾンビ系の魔物の巣窟だ。


単純な攻撃ではなく、精神的に追い詰めてくる魔物も多いから注意だ───

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