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Eren's tower  作者: 氷見つかさ
第一章
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第九話 墓守さん

「ねえ、この塔広くない…?!

向かいの壁がさっぱり見えない…!」


「相当広いな、こりゃ」


なんて真顔でリネンは言っている。



「そうだ、魔法があるじゃないか」


やっと思いついたとでも言うように魔導書を取り出した。



「ダメだよ!」


フリ、それを必死に留めた。



「何故だ?!魔物に容赦は要らないだろう!」


「元々は人間だったかもしれないじゃん!」



そう言って頑なに魔法を使わせようとしない。



「そんなわけあるか!

人間が魔物になるなど……」



「そうかもしれないじゃん!!

とにかく、人道的にダメ!!」



「わけがわからない!!

それなら尚更楽にしたほうが…!」



なんと墓場の中心で口論が始まった。


つくづく思想が合わないらしい。



終わる気配が微塵も感じられない。


その間にも魔物たちは容赦なく寄ってきていた。



「だーかーらー!!」


「うるさい!!もう死んでも知らん!!」


大声で論争を続けている。



そこで別の声が聞こえた。


「大丈夫ですか!」



ぶわっと青い炎が広がった。


炎なのに冷たい、優しい光。



「む…?」

「魔物が……」


フリが指を指した先で、魔物が次々と崩れていっていた。


骸骨が、アンデッドが、力を失ったように倒れていく。



「あ、あの……」


また同じ声が聞こえてきた。



「助けてくれたのか…?」


リネンは首を傾げて。



墓場をかき分けるように、少女が霧から出てきた。


死神みたいな(すごく失礼だけど)黒いローブに、骸骨のお面。


白い長髪がローブによく映えている。



「わ……えと……」


リネンの言葉に彼女は狼狽える。


彼女は慌てて顔を覆い、ごそごそとローブから何かを取り出した。



『大丈夫でしょうか


ここらでは魔物が多いので急いで次の階に行ったほうがいいです』



こうマジックで書いて見せてきた。



スケッチブックだった。



「え、え…。あの、あなたは?」


フリが戸惑い混じりにこう聞く。



「あ……わ、わたしですか…?」


またもや彼女は狼狽してそっぽを向く。



『わたしは墓守です

ここの墓守をしています』


ずれたお面から青紫の瞳が覗いた。



「墓守?こんな魔物がいるのに?」


『はい

ここの魔物とはもう仲良しです』



そう言ってふわっと笑った──気配がする──。



「その杖は?」


フリが墓守の持つ杖を指差した。



金属製のランタンみたいな大杖。


青い光が優しく揺らめている。



『墓守の一族に伝わる杖ですよ

それより、ここは危ないです


近くにお家があるのでぜひ』



墓守はそう言って手招きした。



「……油断禁物だぞ」


「判ってるって。


それより、リネンはもっと人のこと信じたほうがいいと思う」



フリがべっと舌を出して。


そう言い返されてまたもやリネンは眉をひそめた。

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