第六話 届ける想い
ふとフリがあっと声を上げる。
「あれ、どうしたのかな」
指を指した先には小さな浮島があった。
その上には崩れた馬車と数人の人が乗っている。
皆一様に困ったように首を捻っていた。
「なんか事故じゃないか?」
「雑だなあ、もうッ」
そう言ってフリは駆け寄っていく。
結構走っているが一向に体力が尽きる気配がしない。
「あの、大丈夫ですか」
「なんだい、お嬢ちゃんかい」
一人のおじいさんが顔を上げて。
「なんてことないよ。
ただ少し最近は魔物が多くてねえ。
馬車が落ちてしまったんだ」
おじいさんは困ったように笑う。
「…落ちる?」
「この階層だと地面がないからな。
魔法で浮かせるんだ」
首を傾げたフリに、さりげなくリネンが耳打ちした。
「そうなんだ……。
でもこのままじゃ荷物も運べないよね…」
崩れた場所に視線をやる。
何かの運搬中だったのか荷物が放り出されていた。
「うん、決めた!
あたしでいいなら手伝いますよ、運搬!」
そう言ってフリは自慢げに胸に手を当てた。
「いいのかい?報酬はなんかあるかねえ…」
おじいさんは顔を輝かせて馬車に戻る。
報酬品が何かあるか探しているようだ。
「おい、貴様!」
その隙に後ろからぐいっと襟首を掴まれる。
「なあに、もう」
「何してるんだ!
時間がないと言っていたのは貴様だろう!」
小声で怒鳴るとかいう器用なことをしてくる。
「でも、おじいさん困ってた」
フリ、きょとんと。
「はあ?今は貴様のほうが困ってるだろう!」
リネンに心底理解できないとでも言いたげな顔で睨まれる。
「そういう問題じゃない」
フリ、むっと頬を膨らませておじいさんに駆け寄った。
「……理解できん」
リネン、眉をひそめて首を傾げた。
「報酬はこれでどうかの」
おじいさんがそれを掲げた。
「なにそれぇ!」
フリ、目を輝かせてそれを引ったくった。
光に透かすようにその皮袋を掲げている。
「おい、行儀が悪いぞ……」
「ねえねえ、これ食べれる宝石じゃんー!
赤だから甘いやつだー!」
「ほっほっほ、元気じゃのう」
リネンが止めに入りかけて止まった。
──何でだ?
いや今、どう考えても失礼だっただろう。
何でこいつは好かれてるんだ?
「ありがと!
荷物はちゃんと届けるからね!」
フリがぐっと拳を握った。
「お嬢ちゃん。
全部は流石に重いから、これだけ持ってってほしいんじゃ」
おじいさんが一枚の手紙を手渡した。
「手紙?」
「住所は書いてあるじゃろ。
これだけはどうしても届けたいんじゃ」
他の荷物を置いていっても届けたい手紙。
万年筆で住所は書いてあった。
「……わかった!
おじいさんの想いまで届けるから!」
「助かるのう。ほっほっほ」
そんな和やかな空間の端で、リネンは腑に落ちない顔で突っ立っていた。
「……またひとつ仕事が増えた……」




