第二話 出会い
「はっ…!いつまで、追ってくるの…!」
足がもつれそうになりながらも走り続ける。
足元に蔓が絡まり転びそうになった。
石がぶつかろうが枝に身をひっかけようが走り続ける。
魔獣と遭遇するのはいつぶりだったか。
エレンの塔で討ち漏らした個体や脱走した個体が地下を彷徨うのだ。
見る感じ植物型の魔獣のようだ。
「にしても…!なんでこんなところに…?!」
街のすぐ近くじゃないか。
魔獣は、動きが遅い種が多い。
───つまり、ひとまず外に出れれば安全だ…!
「きゃっ!?」
足首に蔓が巻き付いた。
バランスを崩して尻餅をつく。
振り向いてやっと全体を認識する。
こんな浅い坑道に似つかわしくない草の化け物。
草なのに歯とか腕とかがある。
花まで咲いている。
「ひっ…!」
足が動かない。
目の前にいるのは魔物ではなく、魔獣だ。
過去がフラッシュバックして頭が真っ白になった。
なんだか石になったみたいに、身体が痺れて言うことを聞かない。
──もしかして、死ぬ…?
レィにも会えないまま?こんなところで?
また魔獣に大切な人を奪われなきゃいけないの……?
レィは、たったひとりの親友なんだ……!──
「あたしのことは、いいから…!レィを…!」
伸ばした手に蔦が絡みついた。
閃光が、走った。
太陽に抱きしめられたみたいな眩しさ。
そして同時に、ぶわっと冷気がなだれこんできた。
冷気は煙のように地面を這い、たちまち真冬のような冷たさが体を覆う。
「な…どういうこと…?」
光は収まって、やっと目を開ける。
「わっ、えっ…」
蔓が突然力を無くして垂れ下がった。
蔓がひんやりしている。
「……貴様。何をしている」
同じくらいの冷たさの声が降ってきた。
フリは顔を上げた。
「…えっ、エルフ?!初めて見た…」
「初対面でそれか。なんて失礼な小娘だ…」
磁器みたいな肌に銀髪銀眼。
耳はもちろんとんがっている。
「まさか魔獣がこんなところにいるとは…。
どういうことだ…?」
「ね、ねえ。助けてくれたの?」
フリ、慌てて立ち上がって。
「ああ。君こそなぜこんなところにいるんだ」
「えっ、仕事で…石、掘ってて…」
相も変わらず辺りは静まり返っている。
みんなは本当にどこに行ったの…?
それに、レィも、まだ……。
「仕事?君みたいな子供が?」
「子供じゃないし…!もう14だし…!」
フリはムキになって反論してしまう。
「ここは危ない。なぜかここが塔と繋がってしまったようなんだ」
「えっ…?それって、まさか──」
掘り続け過ぎて塔の地下と繋がってしまったと言うことじゃ…!
「あの、レィ…!
いや、片方だけお団子した金髪の子、見なかった…?!」
「なんだ急に。見ていないぞ」
──レィが、危ない…!
もしかしたら、魔獣に…!──
ぞっと嫌な予感が走った。
「行かなきゃ」
「おっ、おい、待て…!」
慌てて走り出そうとするフリを彼女は引き留めた。
「ここから先は危ないと言っている!引き返せ!」
「嫌だ!レィが、死んじゃう…!」
本能的に振り払って行こうとする。
しかし彼女は尚もしつこく引き止める。
「レィ…?さっき言っていた者の名か?」
「そう!あたしの、親友…!」
──塔と繋がってしまったと言うなら、他の仲間も、あの化け物に…!
あたしはたまたま浅いところにいたから無事だっただけで…!
「駄目だ!それだけは許可できない!」
「なんで!」
フリ、怒鳴り返す。
赤の他人なのに!
「エレンの塔は危険だ!君も聞いていただろう!
最高難易度のダンジョンだ!」
「でも…!」
「さっきのも70の位の植物系だ」
彼女、なにやらぶつぶつ呟いている。
───え、この人もしかして塔の知識結構ある…?
しかも、この感じあたしの命を心配して言ってる…?
フリ、内心で策略を巡らせた。
じゃあ…!
「じゃあ、あたしを連れて行って!
レィを探し出すのを手伝って…!」




