↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Eren's tower  作者: 氷見つかさ
第一章
15/16

【番外編】墓守さんとナイトメア

「ふー……。


今日も疲れました」



彼女──墓守さんが額の汗を拭って。




青紫の綺麗な瞳、真っ白な髪。


儚げな少女の顔立ち。


肌は死人かと思うほど白く、磁器みたいだった。




目の前の大きな麓に、骸骨の仮面が立てかけてあった。



ちょうど死者を埋葬したところだった。


ダンジョン内で命を落とした者のようだ。



最期まで戦士の威厳を放っていた人だったなあ……。



「ご冥福をお祈りいたします……」



墓の前で手を合わせた。


彼女にとって、死者は敬って当たり前のものだから。




相も変わらず墓場エリアはジメジメしており、霧が立ち込めていた。


無数のうめき声が聞こえる。


常人だったら発狂しそうな不気味さ。



しかしそんなのは、彼女にとっては慣れっこだった。




真っ黒なローブの裾を摘んで立ち上がる。


土埃を払い、息をひとつ吐く。


仮面を被り直して、歩き出した。



霧の中でも、迷いのない足取り。


ここらへんの地理は完全に把握している。



そこで背後に冷たい気配を感じた。


本能的に嫌な予感のする、悪寒。




「……ナイトメア。

見てるんですよね、わかっています……」



墓守さんは呆れたようにため息を吐いた。



そのとき、闇が切り裂かれて「それ」は姿を現した。




こちらもまた、死神のような容姿。



サイズの合わない、大きくて真っ黒なローブ。


山羊の頭蓋骨の仮面を被っている。



しかし人の輪郭は見えない。


影のような暗黒が仮面から漏れ出していた。




「すぐストーキングするの、やめたほうがいいですよ」


墓守さんが拗ねたように。



ストーキングという単語に、心外とでも言うように彼は首を振った。



「ストーキングではない。」


断固として否定する。



「それに私は人間と話の通じる魔獣だ」



「知ってますし……。


でも、そんなことをしていたら冒険者さんを怖がらせてしまいます」




墓守さんは縮こまるように。


何てったって、魔獣は怖い。



魔物より凶暴だし、危険性の高い人喰いの化け物だから。




たまたま墓守の血を継いだから、死者に懐かれるだけだ。


種族はバッチリ人間だし。


ぶっちゃけ墓守さんは、ビビりで人見知りのぺーぺーである。




「君にとっては怖がらせることが目的じゃないか」



彼──通称、ナイトメアは宙に浮いていた。


足を組んで宙に座るような体制。



「それは、そうですけど……」


気まずそうに顔を背けた。


多少なりとも罪悪感はある。




「私たちは共犯だな」


「お、同じにしないでください…!」



墓守さんがムキになって言い返すのを、目を細めて見つめていた。


もう長い仲だから、こう反応することも分かっていた。




「おっ、そんな話をしていたら冒険者だ。


しかも二人も」



上層から向かってくる魔力を感じ取ったようだ。




ナイトメアは嬉しそうにしていた。


魔物と違って人間のかたちをしているだけで、彼も所詮人喰いの化け物。



食べるのが人間ではなく、悪夢であるという違いしかない。




「いつも通りだろう?


この先に進ませないように、殺さない程度に悪夢を見せて食べる」



ナイトメアがご機嫌そうに。



その様子に罪悪感を感じながらも、墓守さんは頷いた。



「うん……。


この先は、ずっとずっと危険だから。


進ませたら、絶対に死んじゃう。


そんなことはさせたくないの」



死者も大切だが、それ以上に命は大切だった。


ここで死んでしまうなら、そこまでの器だったと言うことだ。



そして、もし進めるなら───




「勿論だ。


双方に利益があるからな。win-winだ」


彼は気楽そうに。



着実に二つの魔力は近づいてきていた。



実際に、追い返すのには成功している。



もう誰も、あんな悲劇には遭わせたくはない。



ナイトメアをちらっと横目で盗み見た。



「そういえば、墓守。


君はなんで私以外には筆談なんだ?」



彼が揶揄うように問いかけてきた。


墓守さんは、恥ずかしそうにこう言った。




「墓守さんは、恥ずかしがり屋なので」


なかなかスランプです…。

次話の作成に悩む今日このごろ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。