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Eren's tower  作者: 氷見つかさ
第一章
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【後日談】食べれる宝石

「先生!!先生(せんせ)ぇ!!」



酷く切実な声が聞こえる。


少年っぽい声だ。



──なんだ、そんなに騒ぐことか……?


鬱陶しく感じながらも目を開けた。



何だか熱いと思ったら、焼かれていた。


蜃気楼でぼやけて周りの状況がうまく認識できない。



「ここ、は」


リネン、燃え盛る炎の中で片膝をついていた。


うまく思考がまとまらない。


誰かと一緒にいたような……。


そしてここに覚えがないようなのに、妙に忌々しいのだ。



「残念だったじゃろうが、貴様の人生は此処で終わりじゃ」


そうばっさり言い切られる。


顔を上げれば、冷えきったナイフの視線で射抜かれていた。


誰だ、と思ったが声が出なかった。



熱い、熱い、熱い。


立ち上がらないと。


あれ……立ち上がるってどうやってやるんだったか。



「先生……」


先ほどから聞こえるこの声が、何処から聞こえているのかも分からない。


ここが何処なのかも曖昧だ。


全ての記憶がぐちゃぐちゃに混ざり合っているような感覚。



なのに、まったく怖く感じないのだ。


ただひたすらに機械的な脳に違和感を覚えた。


矛盾しているが、その感覚が一番怖いのだ。



神よ、本当にいるのなら、私の願いを聞いてくれよ。


私の、願いは───



◇


「うーん、見当たらない」


フリ、唸りながらぐるぐるとその場で回っていた。


その様子をリネンもまた首を捻って見つめていた。



「位置的にはここらのはずなんだが……」


「ないよー?」



そう言ってフリが辺りを見渡す。


あるのはただ、濃い霧と死者の気配。


人影はもちろん、家すら見当たらなそうだ。



「あ、あれ……」


フリが、あっと声をあげて指をさした。


そこには、色褪せた赤のポスト。


ところどころ装飾が剥げ落ちているが、レトロでおしゃれだ。



「もしかして、あのポスト?」


「……む、座標では合っている」



今の一瞬で計算してたのかよ、と思いつつ手紙をポストに入れる。


中は案外入っていないのか、コトンと乾いた音がした。



「それにしても、こんな所に回収に来るのか?」


「そりゃ、来るんじゃない?」


フリが気楽そうにこう言った。


フリも本でしか聞いたことはないが、一応配達業もあるらしい。


ペガサスを使ったり、小型ドラゴンを使ったりと様々だったが。



「よし、これでひと段落……」


フリはそう言って腰に手を当てるなり、眉を下げて。



「お腹すいた……」


「……阿保か」


リネンに呆れたように睨みつけられた。



「そういえばお爺さんから何か貰ってたよな、フリ」


「あっ、確かに」


フリがバッグから色々取り出す。


驚くほど汚かったが、リネンはもう何も言わないことにした。



「テッテレー!食べれる宝石っ」


満面の笑みでこう言う。



「何だそれは。そういえば、私もそれは見たことがないぞ」


「旅人用の保存食にもなってるんだよ!ほら」



フリに差し出された、煌めく破片を咥えた。


しばし咀嚼。


フリ、受け取らずに直接食べた……と思ったが天然なのだと思い直した。



「……悪くない」


「ねー?!ねー?!」


きゃっきゃっ、と子供のように喜んで飛び跳ねた。



◇



「……あらら」


彼女は壁からその様子を覗いていた。


残念そうなのに、妙に微笑ましい気持ちだった。



「……作戦は失敗ってところかな、墓守クン」


その皮肉な言い方にむっとする。


いいよなあ、ナイトメアばっかり得して。



「なかなか美味な悪夢だった。

特に片方、赤いほうは複雑なトラウマのようだ」


ナイトメアがうっとりと舌舐めずりして……って仮面の向こうは見えないけど。


気持ち悪いなあ……。



「手紙は届けておきましょう」


墓守さんが手紙をポストから取り出し、手に取る。



「む、そういえば何なんだ、それは」


不思議そうに彼が首を傾げていた。


人間ではないから、表情こそ分からないが。



「…ここね、有名なパワースポットなんです。

ここに手紙を出せば、死者に手紙が届くって」


「なるほど、実際は君が届けていると言うわけだ」



墓守さんが、それはそれは大事そうに手紙を抱えて。


ナイトメアが静かに口を開く。



「よかったのか、連中を進ませて」


「いいのです」


彼女は酷く穏やかにこう言った。


それから指を組んで、こう言うのだった。



「強い絆で結ばれた彼女たちならば、どんな逆境でも乗り越えられるでしょう。


彼女たちに、祈りの魔女の祝福がありますように」



「祈りの魔女とは何だ」


「あなたが一番知っている筈でしょう?」



墓守さんが困ったように言った。



しかし彼には、何のことだかさっぱり判っていなかった。

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