↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
旅のお供は変わり者~種族を越えて囲むテーブル~  作者: 彩
第四章 ラミアとケットシーの村
97/118

鰹節の完成と涙の天龍


 燻しては冷蔵室で保管を繰り返し七日目が経過した午後、燻製室から取り出され黒く変色した鰹節を前に胸を張ってはいるが涙が流れ落ちそうな屈強なケットシーたち。マモルは鰹節を確認しながら声を掛ける。


「これで荒節の完成です。黒いところはタールが付いているので使う前にナイフなどで削ってから使いましょうね。発がん性物質だという話もあってヨーロッパに輸出できない理由でもあるらしいのでって、ここでいってもあれかな」


 精霊石に魔力を通し形をナイフに変えると慣れた手つきで真っ黒な鰹節を削る。銀色の刃が黒い表面を撫でるように進むと琥珀に近い色が現れ、涙を流しそうになっていた屈強なケットシーたちが驚きの声を上げる。


「日が経つにつれ黒く染まる切り身を見ながら気落ちしていたが、あんなにも中は美しく変わっているとは驚きだ……」


「ああ、俺たちは炭を作っていたわけではなかったのだな……」


「多く身が崩れ8割以上が失敗したが2割は成功し、鰹節になる魚の選定がこれで決まる。ここからは味を比べて鰹節に使える魚をもっと厳選するぞ」


 やる気のある声が沸き上がり更なる闘志が燃え上がる鰹節工場。既に精霊王であるツムギとヒマワリ執事に羊メイド本体は精霊界へと帰還し、風龍と炎龍も巣へと戻っており、この場には海龍幼女と疲れた顔の天龍が参加し鰹節の味見ができると目を輝かせている。


「この後に食用できる安全なカビを付け乾燥した部屋に置き熟成させる工程もありますが、そのカビがどの種類かはわからないので独自に研究していただけたら、って、これはこれできっと美味しいと思いますので悲しそうな顔をしないで下さい」


 屈強なケットシーとはいえ途中で突き放されるような発言に表情を落としそうになるが慌ててマモルがフォローする。


「そのまま食べるにしてもこうやってうずく削って、やっぱり鉋(かんな)みたいな形の方が削りやすいかな」


 精霊石の特性を生かし鉋とその下に削った鰹節を受ける箱をイメージする。すぐにナイフから鰹節削り器へと変化し驚きの声が生まれるなかマイペースに削り、その一枚の厚みを確かめ口に入れる。


「ん!? これは美味しいですよ! 僕が持っている鰹節のパックよりも旨味が強いですし風味も格段に上です! ただ、燻した香りが強く出ているので出汁を取るよりも振りかけて使った方が、天龍さん?」


「ううう、味見を、カロリーを下さい……」


豊満感が若干減り顔がやつれ気味な天龍から両手を合わせ祈るような仕草で懇願され苦笑いを浮かべるマモル。天龍の方が常に黄金であり古龍種という圧倒的な存在感を放っているのだが、逆に片膝を付き祈りの姿勢で懇願され信仰でもされている気分になり、慌てて片膝を付く天龍の肩に手を添え立ち上がらせる。


「えっと、ボクが酷い人に見えそうなので立っていただけると有難いです。もちろん鰹節も味見も、これから他に料理も作りますので立ち上がって下さい」


「ううう、ありがとうございます……天使長のダイエットトレーニングという名の拷問は効果があるのですが厳しさが、水や空気ですら制限があって、当たり前のように食べ物や水を摂取できる生活の有難さを知りました……生きていてすみません……」


 震える手でマモルから削った鰹節を一枚口にする天龍。海龍とエルエルも互いに手を出し削りたてのカツを節を口に入れる。


「確かにこっちの方が味と旨味が濃いのねぇ」


「お魚の味がするの」


「ううう、美味しいです。生まれてきてから一番美味しいものを食べました……うわぁ~ん……」


 ボロボロと涙を流すやつれた天龍。天使長から地獄のダイエットプログラムを組まれ朝起きたらこの惑星を七周ほど飛び、帰ったら人化した姿で海水浴がはじまる。更に亜空間の庭では天使長が組手の相手をしながらダイエットに効果のあるツボを刺激され、それが終わると食事になるのだが出されるのがケットシーの村で作り始めた豆腐から出る産業廃棄物であるオカラ。それも料理をしたものではなく、ただただ喉に引っかかる搾りかすのオカラである。午後になると天龍へと姿を変え上空の魔素を循環させるべく飛び回りその身を絞り、夕方はマモルが作る料理を横目にオカラを口に無理やりに入れカロリーというなの産業廃棄物処理をしていたのである。


 削りたての鰹節をひと切れ口に入れ涙するほど旨味と塩分に飢えていたのも頷けるだろう。


「そろそろ引き締まってきましたし、僕から天使長へダイエットの終了を、」


「それは甘いのねぇ。鰹節はしょっぱいけどマモルの考えが甘いのねぇ。龍種のなかでも古龍種は特にサボるのが得意なのねぇ。どうせひと月もしないで元の肥満に戻るのねぇ」


 ジト目を向けるエルエルに確かにと思いながらも、いま流している涙は本物だろうと口には出さず進言しようと心に決めるマモル。


「この鰹節を削る道具は我々で模倣し作っても構わないだろうか?」


「ええ、どうぞ。わかりやすくばらしますね」


 魔力を流し展開図のように鰹節削り器が開き感心したように見つめる屈強なケットシーたち。これから多くの鰹節と豆腐がケットシーの村で作られるようになるだろうと確信するのであった。





 お読み頂きありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。