鰹節の進展とフリーズドライ
天龍と鰹節作りがはじまり数日が経過した。経過したのだが、天龍が当たり前のようにどこでも的なドアの先に入り天使長と鉢合わせをして白目を剥いて倒れたり、水の精霊の力を使い水分を抜いた魚の切り身が失敗し魚のパウダーを作りだしたり、エルエルが水の精霊が強引に水分を抜くことで身が崩れたのを知り、新たに改善し作りだした魔法で鰹節ではなくフリーズドライ食品を作りだし成功と失敗の狭間のようなツッコムにつっこめない成果を出したりと色々あったのである。
「鰹節自体は成功しそうですね」
「カップ入りラーメンも作れる気がしてきたのねぇ」
「フリーズドライの技術を使えば可能かもしれないが麺がなぁ。無理にラーメンにこだわらなければ、ほら、スープとか雑炊とかさ」
「マモルはわかっていないのねぇ。異世界で即席めんを作れば大儲け間違いなしなのねぇ。お湯を入れるだけで温かく美味しいラーメンが三分で作れるとか、それはもう奇跡なのねぇ」
「兵糧玉とはか大昔からあるお湯に入れてすぐに食べられる保存食だよな。乾燥させた味噌にキビやアワやネギとかを丸めて食べたとか。ああ、これはそのまま食べるから携帯食なのかな? 味噌玉とかか?」
「味噌玉走っているのねぇ。フリーズドライの技術があれば旅先でも暖かいお味噌汁が食べられるのねぇ」
「いや、味噌が作れないと……そっか、わかめスープとかなら作れるのか。ほら、わかめはあるし、スープは鰹出汁でもいいしさ。あの魔法を使って鍋にスープを作って水分を抜けばパウダー状のスープが残ってインスタントわかめスープの完成!」
「う~ん、できそうな気もするのねぇ……でも、ラーメンがいいのねぇ」
無駄話をしながら鰹節工場の様子を見つめるマモルとエルエル。その肩には手乗りサイズの羊メイドの姿があり真剣な瞳で二人の話を頭に入れている。
「にゃ~半数以上ダメになったのにゃ」
「揺らさないようしていたのに身が崩れてボロボロにゃ」
昨日から休ませていた身が崩れているのを確認しマモルの前に持って現れ、それを真剣に見つめ鰹節に適さないと判断すると我先にケットシーたちの手が伸び口に入れる。
「これはこれで美味しいのにゃ」
「燻煙作業の職は大人気にもぐもぐにゃるのにゃ~」
「試行錯誤すれば鰹節に適さない魚もわかりますし、食べて廃棄というのはきっと今だけですよ」
マモルからの言葉にフリーズする鰹節工場勤務のケットシーのふたり。身が崩れたら魚の名前とプレートを補完しに報告書に記載しその味も報告することになっており、これが天職だと思ったのだろうが世間はそれほど甘くはなく絶望という味を噛みしめている。
「そんなに絶望することはないのねぇ。鰹節の次はわかめスープ工場なのねぇ」
「わかめスープ?」
「そうなのねぇ! いつでもどこでもどんな場所でも熱いお湯さえあれば、すぐにでもわかめスープが食べられるのねぇ! 考えてみるのねえ。寒い朝、布団が出たくないときもお湯さえあれば温かいわかめスープがすぐに飲めるのねぇ。他にも旅先で固いパンしかなかったり、雨に濡れ凍える寒さのなかだったり、ダイエットにも優れているのねぇ」
エルエルの力説にケットシーのふたりは顎に手を当て首を傾げる。
「ダイエットに優れているのは少しだけ引かれるのにゃ」
「寒い朝にすぐに飲めるのはいいかもしれないのにゃ」
「でも、お湯を沸かす手間を考えるとそのままスープを作ればと思うのにゃ」
「そもそも旅にはでないのにゃ。売れるとしたら行商をするミケーラとミッケルにゃ」
「ラミアのふたりには売れるのにゃ。ラミアは寒いのが苦手だから集落で買ってくれるかもしれないのにゃ」
ケットシーの二人がいうようにすぐにお湯が沸かせる状態である日本が異常で、火を起こし湯を沸かしすという二つの工程を経て初めてお湯を手にできるこの世界からしたらあまり便利な食品ではないのかもしれない。ただ、あまりにも料理が下手だったり味音痴だったりする場合には必要かもしれないが……
「ぐぬぬぬぬ、ケットシーに言い負かされるとは思わなかったのねぇ」
「なんだか詐欺師みたいなこというなよ……ああ、でも、お湯を入れただけで美味しい料理、お腹がいっぱいになるとしたらどうですか?」
「お腹がいっぱいにゃ?」
「それなら売れると思うにゃ。わかめスープだけじゃ腹が膨れにゃいのにゃ」
「ということはラーメンは売れるのねぇ」
「ラーメンは麺が難しいからうどんやパスタ方がいいかもな」
「さっきからラーメンの麺が難しいといっているのねぇ。どこが難しいのねぇ」
「ああ、それは麺特有の弾力や風味がかん水を使っているからだな。かん水は強アルカリ性で炭酸ナトリウムと炭酸カリウム とかでその作り方がわからない。もっと理科や化学をやっておけばよかったよ……」
ひとり反省するマモル。それを見て首を傾げるケットシーのふたり。エルエルは難しい表情のまま固まり、肩に乗せた羊メイドもまた新たな料理と出会えないことに肩を落とすのであった。
お読み頂きありがとうございます。




