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旅のお供は変わり者~種族を越えて囲むテーブル~  作者: 彩
第四章 ラミアとケットシーの村
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出汁の取り方と違い



「新鮮な魚を切り、茹で骨を抜き、それを煙に当て、それを数日休ませながら繰り返し内部の水を抜くと……料理とはこんなにも手間が掛かるものなのかしら?」


 鰹節工場の見学をする豊満天龍の言葉に首を振るマモル。


「鰹節という食品の作り方が特殊ではありますが、出汁という文化の象徴といっていいのがこの鰹節です。極限まで水分を抜くことで長期保存ができますし、何よりも味が凝縮されることで魚の旨味の塊のような食品になります」


 豊満天龍に説明しながら指輪型のアイテムボックスから市販されている削られた鰹節を取り出し封を開ける。


「鰹節を削ったものがこれになります。まわりの透明な袋は食べられないので返却してください」


「あら、透明なクラゲのような入れ物なのね。それに木屑のような見た目……本当に食べ物なのかしら?」


 少量を分厚い手に乗せ鼻を近づけ匂いを確認する。が、鰹節工場の燻煙施設を出たばかりでまだ鼻に魚の匂いが残り正確に鰹節の香りがわからず複雑な表情を浮かべる。


「ん? 精霊王さまも食べますが?」


 羊メイドに抱っこされながら袖をクイクイと引き目を輝かせる精霊王に新たな鰹節のパックを取り出し開封すると喜んで受け取り、少量を口に入れ「おいしー魚の味ー」と叫ぶ姿に豊満天龍も口に運ぶ。


「あらあら、これは美味しいわ。でも、保存食といったけどどれだけ食べたらお腹が膨れるのかしら……」


「保存食といっても長く保存ができるという点ですね。あと、鰹節はそのまま食べずに料理にふりかけたり、お湯に入れて出汁として使ったり、脇役になりますね」


「こんなにも美味しいのに脇役なの?」


「名脇役ですね。特に出汁に関してならある意味主役かもしれません。お吸い物とかなら汁が主役ですし、出汁茶漬けならそれこそ出汁の美味さがそのまま料理の美味さになると思います。鰹節は料理の上で香りと旨味を、出汁にして陰から料理を支える名脇役ですね」


 マモルの説明に料理を習い始めた羊メイドは共感できるのかうんうんと数度頷き、精霊王のツムギも動きが面白かったのか同じように無言で頷く。


「その出汁というのは味見できるのかしら?」


「ここでは無理なので、見学を終えたら外に出て鰹出汁を取ってみましょうか」


「あら、それは楽しみだわ」


 豊満天龍が微笑みを浮かべ他の龍たちもまた料理が食べられると喜び、羊メイドもキラリと目を輝かせる。


「マモル殿、さっきから思っていたのですが鰹節は煙を当て内部の水を数日掛けて抜く作業なのですか? それなら水の精霊や魔法を使い内部の水を抜き出してはどうでしょうか?」


 顎だろう部分に手を当てそう口にするヒマワリ執事。


「その考え方はなかったです。水の精霊さんたちにお願いしたら切り身の中から水分だけを取り除くことができるのかな? 魔法に関してはどう思う?」


 横で浮くエルエルに疑問を投げかけると右の口角を上げながら口を開く。


「ふっ、我に不可能はないのねぇ。例えばこうやって魚の切り身を魔力で包み外側から圧縮するようにして水だけを抽出するように……」


 ぬいぐるみの腕を振り振りしながら説明するエルエル。今度試しにやってもらえばいいかと外に向け足を進めるマモルと一行。


「圧縮よりも空間を固定して圧力を与えれば沸点が低くなって内部の水が蒸発するのねぇ?」


 作業するケットシー以外いなくなった燻煙場の前でブツブツと呟くエルエルが若干香ばしい匂いが付いた頃には新たな魔法が誕生するのであった。




「これが鰹節を使ったスープなの?」


 鰹節工場を少し離れビーチが見える場所へ移動すると焚火台をセットして薪に火を起こし湯を沸かす。


「出汁を取るときは沸騰したお湯に鰹節を入れて火から外し、なかの鰹節が下に沈殿するのを待ちます。お湯で煮込まないのは鰹節から余分な灰汁やえぐみを出さないためですね。そろそろかな……最後にこうやって清潔な布でこしたら一番出汁の完成です」


「一番? 他にも二番や三番があるのメェ?」


「三番は聞いたことがないですが二番はありますよ。一番出汁を取った後の鰹節を鍋に入れ水を入れて昆布も入れた方が美味しいので入れ、弱火でゆっくり熱して沸騰する寸前に火から外して蒸らし旨味が出るのを待ちます。それをこしたのが二番出汁ですね。


 一番出汁は鰹節の香りが強く、二番出汁は鰹節に加え昆布の旨味も出ています。ただ、鰹からの油分も出ているので少しだけ白濁した色の出汁になるのでお吸い物などには向いていないですね。炊き込みご飯とかに使えばいいのかな」


 ガラス製のボウルには二種類の黄金の色をした出汁が取れ、それを真剣な瞳で見つめる羊メイド。そしてもうひとり真剣な表情で出汁を見つめる豊満天龍。


「まるで私の鱗のように美しいわ……」


「よかったら味見してみますか? 飲み比べると違いがわかりますよ」


「え、ええ、お願いするわ」


 小皿に少量の出汁を入れ渡し、味を確かめ比べる豊満天龍。


「確かに味は違うわ。どちらも美味しいけど見た目の美しさと香りなら一番ね。逆に味なら二番目の方が複雑で奥深いわ……あんな木屑のようなものからこんなにも美しく香り高いスープになるなんて驚きだわ……」


 目を丸め驚く天龍に他の龍種や精霊たちも味見を求めるのであった。



 お読み頂きありがとうございます。

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