ワイバーンの巣から帰還
ワイバーンの巣から大量のお宝をゲットし、更には近場に住むウニやカニを取りそれを料理して満足するまで食べた一同。特にウニ料理はどれも美味しかったのかマモルも皆も満足な表情を浮かべていたが、思い出した約束を守るために風龍にお願いして急いでケットシーの村へと戻りたいことを伝える。
「約束があるのなら早く戻るべきだな」
イケメン風龍はすんなり提案を受け片づけたが終わったのを確認すると急ぎ空路を戻る。
「どの料理も美味しかったのねぇ。次はウニ丼が食べたいのねぇ」
「ウニ丼とはどういうものですメェ?」
「ホカホカご飯の上にウニを敷き詰め醤油をかけて食べるのねぇ。酢飯の場合もあるねぇ」
「酢飯……奥が深そうですメェ」
「人化してこんなにも食事をしたのははじめてっす」
「パンケーキとはまた違った美味しさがあったの」
料理の感想を言い合いながら風龍の手に乗り空を走る。途中、巨大なウツボとカメがまたやり合っている姿を視界に入れるが、ライバルか何かなのだろうとマモルは視線を戻しこれから作る豆腐について考える。
作り方は伝えたから豆乳までは簡単に作れると思う。そこからにがりをどのぐらい入れるとか、どのタイミングで入れるとか、容器に入れて水気を切るとか。そこまで詳しく説明しなかったよな。まだ、鰹節作りの方が説明できたと思う……
反省しながら空路を進み眼下には小さく映る人魚や煙を上げる砂浜に大きな塩釜が設置されている小屋に人が多く集まっている姿が見える。
「そこって、塩を作っていた場所だよな」
「そうなのねぇ。いっぱい人が集まっているのねぇ」
「そろそろ、降りるぞ」
風龍からの言葉に足を踏ん張り降下する揺れに反応し、下から聞こえる歓声が耳に入る。
「帰ってきたぞ!」
「英雄殿が古龍さま方を連れ戻った!」
「精霊王さま方に伝えろ!」
騒がしい眼下にゆっくりと着地すると精霊王のツムギがまっすくマモルへと飛びつき、それを優しくキャッチする。
「おかえりー!」
元気な出迎えにマモルは笑顔でただいまと口にし、肩から殺気ある視線を感じながらも優しく地面に下ろし頭を撫でる。
「精霊王さま、外聞もありますのでお戯れはその辺にしてほしいメェ」
「や! ちゃんとお留守番して偉かったもん! もっと褒めてほしいもん!」
見た目以上に子供っぽさを発揮する精霊王のツムギに苦虫を噛み潰した表情を浮かべる羊メイド。ヒマワリ羊と本体である羊メイドはそれほど気にしていないのか慌てた様子もなく成り行きを見守っている。
「ウニが美味しかったですよ。あとでご馳走しますね」
「うん! えへへへ、楽しみ!」
先ほど食べたウニを思い出しながら午前中の冒険を美味しいところだけ説明すると目を輝かせる精霊王のツムギ。多くのケットシーたちもウニを知っているのか複雑な表情を浮かべ、巨大な棘のある姿に巨大な瞳が現れ、それを倒し食すという発想にはならないだろうとマモルも苦笑いを浮かべる。
「英雄殿! 見てくれ!」
群衆の中から屈強なケットシーが皿を持ち現われ白く輝くそれが一歩進むごとに振るえ、マモルは目を丸める。
「豆腐ですね!」
「ああ、何度か試作して我々で完成させた!」
「村長の許可も得て豆を量産することに決まったぞ!」
「プルプルで少し甘かったの!」
「塩で食べると甘みが増す気がしたメェ」
精霊王のツムギと羊メイドも味見したのか豆腐の感想を口にし、屈強なケットシーから皿を受け取り豆腐の見た目と香りを確かめる。
「見た感じは木綿豆腐ですね」
ややごつごつとした印象を受ける豆腐。一口サイズということもあり指でつまみ弾力を確かめつつ口に運ぶ。
「うま! この豆腐の方が甘みがあって美味しいですね」
「そうだろう! 三回ほど失敗したが四回目にはこの絶妙な硬さと甘みになったぞ!」
「我らが作る塩をかけると甘みが増して美味いぞ!」
「歯の悪い老人たちが喜んでいた!」
ケットシーたちは歓声を上げ豆腐の完成を喜び、マモルはまだ寄せ豆腐や絹ごし豆腐もあるのだがこれだけ喜んでいるなかでいうのは空気が読めていないだろうと口を噤む。
「英雄殿! 鰹節工場も完成した! 確認してくれ!」
遠くから叫び走ってくるケットシーの男性群。鰹節を作るため身を茹でる大釜や燻煙場に氷魔法を使った冷暗所が完成したことを大声で伝える。
「午後は鰹節作りの説明からかな」
小さく呟くマモルにケットシーたちは歓声を上げ、精霊たちも手伝う気なのか一緒に移動を開始する。
「こっちだ! 来てくれ!」
「どの魚が適しているか確認してくれ!」
「新たな産業が生まれるぞ!」
テンション高くマモルを誘い皆で完成したばかりの鰹節工場へと向かう。海からの風を頬に受けながら足を進めていると空から光が降り注ぎあまりの眩しさに手で視界を確保する。
「やっと見つけたわ! こんなところで人化して何を企んでいるのか……し……ら……天使!?」
風流を思わせる巨大さと黄金に輝く鱗を持つ巨大な龍が空を覆い隠し、唖然とする一同。
「面倒くさいのが来たのねぇ」
「天龍お姉ちゃん……」
「やべえっす」
「はぁ……頼むから暴れないでくれよ……」
知り合いの古龍とエルエルは眩しさを我慢しながらその巨大な姿を見上げるのであった。
お読み頂きありがとうございます。




