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旅のお供は変わり者~種族を越えて囲むテーブル~  作者: 彩
第四章 ラミアとケットシーの村
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料理の下準備とシースパイダーの焼き係


 海岸では石で組まれた即席の竈の上に大きな鍋が湯気を上げ辺りにはカニの香りが広がり、スンスンと鼻を動かしながらも正座する三名の人化した龍の姿がある。青い瞳に青い髪をした五才ほどの海龍幼女、赤い短髪に赤い瞳の少年は体育会系炎龍。最後にスーツを着崩しイケオジ系風龍。


「元のサイズが大きすぎて相手を粉みじんにするのなら人化した状態で戦えばいいのねぇ。そもそも、あんたらは最強の生物である古龍種なのに自覚がないのねぇ。強靭なウロコを持ち空を駆ける龍なのにワイバーンに負けただの、ウニの棘が怖いだの、攻撃したら粉みじんだの、気合が足りないのねぇ」


 ぬいぐるみ状態のエルエルからの説教を受けながらシュンとする龍たちを横目に、巨大なウニから生殖巣を慎重に取り出し海水を入れた鍋に移す。


「ウニのサイズも大きいと身も大きいな。これだけ大きかったらひとつでうに丼がいくつ作れるか」


 ロングコートサイズウニの身を見つめながら呟き、次の身を剥がすべく手を動かして次々に海水へと入れる。


「人化した状態で戦えば良かったのねぇ。人化すればサイズも小さくなって潰すようなことはないのねぇ。まあ、海龍の大きさで戦うのは逆に不利になりそうなのはあるとしても、」


「エルエル! そろそろ浄化してくれ!」


 説教がノッてきたところへマモルから声が掛かりその口を閉じ、正座する三人を見つめる。


「呼ばれたから行くけど帰ってきたら人化した状態での力の使い方を覚えるのねぇ」


 その言葉だけ残してマモルの下へとフヨフヨと浮きながら向かうエルエル。


「エルエルさまは怖いのです……」


「あの天使の強さを目の前で見たら逆らえないっすね……」


「昔から天使は怖いヤツが多かったけど、あの天使は天使長ぐらいヤバイかもな……」


 飛びながらマモルの下へ向かうエルエルを見つめながら逆らってはいけない存在だと三名の意見が一致するのであった。


「呼んだのねぇ?」


「ウニに浄化魔法をかけてくれ、カニのしゃぶしゃぶがしたいのならそっちも頼む」


 大鍋に入れ海水に浸るウニと、まだ解体していないロッククラブという名称の岩に似た姿をしているカニを指差して浄化魔法をお願し、涎を垂らしながら魔法陣を錬成するエルエル。


「浄化魔法は得意なのねぇ! 気合を入れて、じゅるり、浄化するのねぇ!」


 魔法陣から光が溢れ大鍋に入れたウニとロッククラブに近くに置いていたシースパイダーや上海蟹に似たカニにも浄化の光を当てる。


「これでどれも美味しく食べられるのねぇ」


「浄化魔法を使えば刺身でも食べられるからな。よし! カニのしゃぶしゃぶ用に殻と身を外すかな」


「しゃぶしゃぶも楽しみなのねぇ」


「そうだ! エルエルはシースパイダーは焼いた方が風味も良くなるだろうから適当に炭火で焼いてね」


「それって、マモルが蜘蛛を触りたくないだけなのねぇ……」


 ぬいぐるみ姿のエルエルからジト目を向けられつつも、ロッククラブに向かいナイフに魔力を通して解体をはじめるマモル。エルエルは渋々自分でやろうとするが正座をしている三人が目に入り声を掛ける。


「炎龍なら火加減が得意なのねぇ。これを美味しく焼いてみせるのねぇ」


 先ほどの会話からも拒否権がないと悟った炎龍はしびれる足に気合を入れて立ち上がり、砂浜に木を組み小さなブレスを吐いて火を灯すとシースパイダーをその上に乗せ焼きはじめる。


「乾いた木を土台にしているのに木に火が燃え移らないのねぇ……」


 不思議そうに炎龍を見つめあることに気が付くエルエル。


「火の精霊にやらせているから木に燃え移らないのねぇ!」


「その通りっす。自分は燃やし尽くすのは得意っすけど、ちょうどよく焼くのは苦手っす。それならば火の精霊に任せた方が無難っす」


「そういう所なのねぇ。向上心を持つのねぇ……」


 呆れたように呟くエルエル。炎龍は何ともいえな表情を浮かべつつも頭を下げる。


「あっちは大丈夫そうだからしゃぶしゃぶの付け合わせとタレの用意かな」


 指輪型のアイテムボックスからは野菜に豆腐を取り出して思い出す。


「ケットシーさんたちと豆腐を作る約束をしていたのにな……帰ったら謝らなきゃな……」


 塩炊き場での約束を思い出し一人反省しながら野菜をカットし、水を入れた鍋に昆布とキノコを入れゆっくり弱火で出汁を取る。つけダレはポン酢とゴマダレを用意し、しゃぶしゃぶしやすいようロッククラブの身を縦長に切り揃えていると香ばしい匂いとパチパチと薪がはぜる音に視線を向ける。


「泡が出てきたのねぇ!」


「そろそろ焼き上がりだと思うっす!」


「早く火から上げるのねぇ! 待ちきれないのねぇ!」


 素手で焼けたシースパイダーを手にする炎龍にエルエルが驚きつつもテーブル代わりの石の上に乗せられ湯気を上げ、マモルの肩に乗っていた羊メイドも興味があるのか吸い寄せられるように向かう。


「あっ! 熱っ! はっ! ほっほ!」


 湯気を上げるシースパイダーの腕を強引に引きちぎったエルエルは熱さを我慢しながら口へと運び表情を崩す。その顔に火加減を見ていた火の精霊は喜び揺れ、炎龍も一緒に喜びの舞だろう踊りを披露するのであった。



 お読み頂きありがとうございます。

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