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決着と村長

 

 輝きが徐々に薄れ光の粒子が風に溶けるように消え、闇に落ちたグラゲの姿が露わになる。鬼のような角や本来のオークに存在しない牙が綺麗サッパリ消失しており、更には黒い靄のような立ち上がる瘴気も消え失せている。


「ふぅ……上手くいきました……」


 大きく息を吐き発光の収まったナイフを鞘に入れ倒れているグラゲを観察して気が付く。


「なぁ、エルエル。このオークさんは門番で僕を迎えてくれた人だよね?」


 問われたエルエルも既にぬいぐるみのような姿へ戻っておりフワフワと現れうつ伏せに倒れるグラゲの顔を確認すると頷く。


「紳士的な態度でガキのマモルの目線に立って話を聞いてくれたオークだねぇ」


 漆黒の狼に襲われたリララグを助け、その事を報告した際には膝を折りマモルの目線に合わせ話を聞いてくれた門番をしていたオーク。そんな紳士的なオークが呪いをリラグオに仕掛け、跳ね返されて闇に落ちたことに誰しもが驚いたことだろう。


「グラゲはこの村の村長の息子で誰よりも努力をしてきた男だ。それは私が証明しよう……だが、なぜ……」  


 目を開き倒れるグラゲへ視線を移すリラグオ。他のオークの戦士たちも集まり信じられないという表情や驚きを顔に浮かべ、なかには手を合わすものもおりマモルは口を開く。


「あの、勘違いされていたらアレなので説明しますが、えっと、グラゲさんでしたっけ? 生きていますからね」


 マモルの言葉に目を見開くオーク一同。


「僕が斬ったのは光で呪いの根源を絶っただけです。それにエルエルが使った拘束魔法は呪いなどの闇の力を対象者に留めておく効果です」


「それだけではなく心身の回復などの効果もあるねぇ。目覚めたときにはスッキリとした気分だねぇ」


 二人からの説明に安堵の息が漏れるオークたち。リラグオはこのままうつぶせではとグラゲを支え皆でその身を起こさせる。二人の言葉通りに頭から縦に一閃されたが傷ひとつなく、訓練で付けた古傷さえも消えていた。


 

「マモル、エルエルさま、この度はどうお礼をいっていいか……」


 仰向けに寝かせたグラゲから二人へ視線を向け、再度頭を下げるリラグオとオークの戦士たち。


「いえいえ、オークの村の特産品も知ることができましたし、実戦経験が積めるのはありがたいです。それよりも、どうしてエルエルだけさまを付けたのですか? パッと見ても不思議なだけの浮いた存在だと思うのですが……」


 ジト目を向けながらエルエルへ視線を移すマモル。


「オークの戦士にはこの尊いエルエルさまが理解できたのねぇ。これからも崇拝することを許すのねぇ……ん? 誰か来るねぇ」


 ぬいぐるみボディーで胸を張っていたがこちらに向かい走って来るオークの男の存在を伝え、それは数秒と掛からずこの場に登場し地面を滑りながらグラゲの前に座ると涙を流しながら口を開く。


「ワシの宝が! ワシの宝が!」


 涙しながらグラゲの傍らに膝を付き泣きじゃくるのはこの村の村長であるグラグ。誰よりもオークらしい丸々とした体型で宝と称す息子が倒れている姿に涙を流している。


「村長!」


「おお、リラグオ! もう傷は癒えたのか!」


 涙する顔を上げリラグオへ振り向く。その顔は涙で濡れながらも大きな腫れが右頬にあり殴られて形跡が見て取れる。どうやら最初の被害者だったのだろう。


「傷はこちらのマモル殿とエルエルさまに癒していただき、グラゲから受けた呪いやその解呪……村長はどこまで知っておられたのですか?」


「わからぬのだ。先ほど林を縄張りにした黒狼が討伐されたとグラゲが報告にきて、話を聞いている間に痛みを訴えてな……心配し駆け寄ると殴られ気を失っていた……妻から騒ぎを聞き急いでここへ駆け付けたが……息子は……」


「うぅ……こ、ここは……」


 苦悶の表情を浮かべつつ目を開き上半身を起こすグラゲ。傍らにいた村長であるグラグは目を見開き震えながらも「グラゲ!」と名を叫びながら抱き付き、意識を取り戻したグラゲが困惑するほど咽び泣く村長を前に記憶を遡らせるのであった。


 


 


 


 


 


「迷惑を掛けたようで本当に申し訳ない……」


 半壊した村長の家ではマモルとエルエルを前に頭を下げる村長のグラグ、副戦士長のグラゲ、戦士長のリラグオが頭を下げており非常に気まずい空気を体験していた。


 家の半分ほどが破壊されたが、人的被害は村長とオークの戦士が数名ほどかすり傷程度の怪我で済んだのは幸運だったかもしれない。


「風通りが良くなったねぇ」


「冗談にしても不謹慎だろ……」


 頭を下げるオークたちの前で半壊した村長卓に風が吹き抜ける。


「本当に気にしていないので顔を上げて下さい。それとエルエルの姿が変わった事や僕が色々派手にした事は黙っていただけると今後の旅が安全かなぁと……」


 マモルというオーク以上の戦力で呪いすら斬り伏せる少年と、天使という規格外の存在が旅をしていると聞けば興味を持ちちょっかいを掛けてくるものも現れるだろうと釘を刺す。


「そ、それはそうかもしれんが……」


「中央へは極秘裏に報告させてほしい。そうでなければ筋が通らないこともあるのだ」


「大々的に発表したらいいのねぇ。我を崇めればいいのねぇ」


 フワフワと浮きながら胸を張るエルエルの主張に頭痛を覚えるマモルなのであった。


 


 


 

 お読み頂きありがとうございます。

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