エルエルの変化と光
満腹になるまで食べたこともあり大きなお腹を摩り満足げな表情を浮かべるリラグラ。リラララやリララグも初めて食べるシチューにコロッケにトカゲの一口カツに大満足だったのか少々食べ過ぎ苦しそうな顔を浮かべている。
「どの料理も美味かった」
「知っている芋なのに料理の仕方でこんなにも美味しいのね」
「ソースはじめて食べた! すっげーうまかった! うぷっ……」
満足気な表情で料理の感想とお礼を口にし、リララグは食べ過ぎ戻ってきたソレを手で押さえて止めると飲み込む。
「満足してくれたのなら良かったですし、まだ病み上がりなのですからご無理なさらないで下さいね」
マモルと言葉にハッとして顔を上げる口を開く。
「そうだったな! つい先ほどまで部下を庇い大怪我をして寝ていたのだったな!」
本気で忘れていたのかガハハと笑いながら話し、妻であるリラララは心配げに口を開く。
「あ、あの、先ほど解呪した呪いはどこへ向かったのでしょうか? それにどのタイミングでベッドの下に設置したのか……今考えるととても恐ろしいです……」
俯きながら話し先ほどまでの和やかな空気が一変するリビング。
「呪いは術者に返り今頃は大変なことになっているねぇ。どれ、闇の気配は……ん?」
エルエルはゆっくりと目を閉じたがすぐに開き玄関の方へと向け、次の瞬間には衝撃が全身を駆け抜けるほどの爆発音が響き渡る。
「むっ!?」
食べ過ぎていても村一番の戦士であり警備隊の隊長であるリラグオはすぐに立ち上がり玄関へと走り、驚き固まっているリラララとそれを守るために椅子から降りたリララグに声を掛けるマモル。
「僕も結界を張りますのでここから動かないようにして下さい!」
両手に魔力を集中させ魔法陣が起動し半透明な三角錐の中に収まる二人。エルエルはマモルよりも先に玄関へと向かい現状を把握する。
「臭いねぇ……闇が吹き出しているねぇ……」
視線の先にはドアが破壊された玄関があり庭ではオークの戦士が転がり、一人の戦士を助け起こしつつこちらに向かい血走らせた瞳を向けるオークの戦士が一人。黒い靄に覆われ本来はないはずの長い牙と真っ黒い角があり、誰もが異常事態だと認識し一般のオーク親たちは子供を避難させているのが遠目に見える。
「隊長!」
復活したリラグオの姿に多くのオークの戦士たちが希望に満ちた瞳を向け、吹き飛ばされたオークの戦士を助け起こし自身の後ろへと逃がす。
「闇に落ちたねぇ」
「グラァァアァァァァァ!!!」
エルエルの言葉を肯定しているのか、それとも否定しているのかわからないが前傾姿勢で悲鳴にも似た叫びを上げる闇落ちオーク。
そんな闇落ちオークを睨みつけるように見つめ、逃がした兵士が落としていった槍を拾い構える。オークの兵士たちのように鎧こそ着ていないがその風貌は歴戦の戦士であり、向かってものを怯ませるだけの迫力がある。
「グラゲ! 優秀なお前がどうしてっ!」
「グラァァァァアァァァァ!!」
前傾姿勢のまま突進する闇に落ちたオークグラゲ。対してリラグオは我が家と後ろにいるであろう妻と息子を守る為にその突進を受けようと槍を持ったまま両手を広げる。
「お前さんの男気を無駄にするようで悪いが、手を出すねぇ」
頭の上から降りてきたエルエルが光に包まれ、次の瞬間には少女の姿へと姿を変えその背には白く美しい翼を広げ、瞬く間に現れる黄金の魔法陣。
誰もがその光景に目を奪われ、近くで槍を片手に闇に落ちたグラゲを受け止めようとしていたリラグオさえも光に包まれたエルエルから目が離せず、眩しくて目を背けたくなるが天使と姿を変えたエルエルに釘付けになる。
「返った呪いに食われ落ちたオークよ……悔い改めよ……」
エルエルの力ある言葉と共に魔法陣から無数の光の帯が生まれ、怯むことなく突進してきたグラゲへと向かう。
「ホーリーバインド」
開放された光が三メートルはある突進する巨漢を捉え、無数に湧き出す光の帯が黒い靄が上がる体を完全に包み込む。
「グラァァアァァァァァ!」
最後に口を包み込むとその叫びは消え、光るオークの石像へと姿を変えるグラゲ。
「マモル! 終わりにするねぇ!」
後ろから全力で走りナイフを引き抜き魔力を集中させるとナイフは黄金に輝き、一気に駆け抜け飛び上がる。
「闇を晴らす刃となれっ! 光よ!」
両手で握るナイフは黄金の光を纏った刀身は三倍以上へ変化し、ロングソードを思わせる光の刃へ。それを落下しながら振り下ろす。
黄金の像へと振り下ろされた一撃は確実に頭部を捉え、そのまま真直ぐに一本の柱の如く大地へと振り切られ、膝から崩れるように前のめりに倒れはじめるとマモルは慌てて後ろへと退避する。
「よくやったねぇ」
エルエルの言葉とは裏腹に確実に縦に斬り伏せられたグラゲを視界に入れたリラグオは複雑な思いのまま瞼を閉じ頭を下げ、他のオークの戦士たちも黙とうするのであった。
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