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次の料理





 病み上がり直前だった割にその食欲は旺盛で、用意したシチューの鍋はすぐに空になり急いで次の料理を作るマモル。


「紫のポーションを使ったからねぇ。飲まず体にかけてもその効果はバッチに内側に届くのねぇ」


 考えを読んだかのように話すエルエル。紫のポーション(大)としてはエリクサーの次に回復力のあるポーションで、市場に出回ればオークション価格で金貨数千枚ほど取引される品物である。


 稀にダンジョンなどで手に入るがそれを売り冒険者を引退するものも少なくはない。ただ、そういった引退者たちは騙されることが多く数年後には冒険者として復活していることが多く、笑い話の種になるのが定番である。


「素早く作るのなら炒め物かな」


 脂の乗ったトカゲの肉を細く切り玉ねぎや葉野菜などと炒め、醤油に砂糖と生姜に酒を合わせたタレを入れ炒め合わせる。すると醤油の香りがキッチンに広がり鼻をヒクヒクさせるオークの親子。


 並行作業で皮付きのジャガイモを茹で加減を確認してから、トカゲ肉の生姜焼き風炒めを提供すると一斉に食べ始め、竹串で火が入ったのを確認するとザルに開ける。


「エルエルも見てないで皮むき手伝って!」


「手伝うのもいいが……無粋な事をいうものでもないねぇ……」


 一瞬眉間に皺が寄るが天井からふよふよと下りて来るとぬいぐるみのような手を器用に使い茹で上がったジャガイモの皮を剥き始める。その横でマモルはトカゲ肉を細かく切り玉ねぎも同様にみじん切りにすると塩コショウをして炒め始め、アイテムボックスからバゲットのようなハード系のパンを取り出す。


「皮が剥けたら炒めるのを交代して!」


「やれやれ、天使使いが荒いですねぇ」


 文句を云いながらも竈へやってきて炒める作業を変わると、マモルは近くにあった鍋にバゲットを入れ両手に魔力を集中させる。


「風よ!」


 小さな魔方陣が現れたかと思うとバゲットが震え鍋の中で回り始め、下から徐々に粉砕されその姿を粉状に変える。30秒ほどでパン粉を作り上げ、小麦粉と玉子に水を入れよく混ぜバッタ液を作ると、皮を剥いたジャガイモを適当に潰しエルエルが炒めていた肉と玉ねぎと合わせ成形する。


「オレもやりたい!」


 作業を見ていたリララグが叫ぶように走りマモルの横に並び、母であるリラララも腕捲りを始める。


「浄化の光よ!」


 温かな光が降り注ぎ手洗いを省くマモル。その神聖な光に照らされ目をパチパチとさせる二人。


「このぐらいの大きさに丸めて下さい」


 手の平サイズの楕円形に成形するとリララフとリラララはすぐに作業に取り掛かる。


「芋を蒸して形を変える料理……手間の掛かる料理ですね」


「でも、これ面白いよ! 色々な形にしても面白そう!」


「成型したらこのバッタ液とパン粉につけてから油で上げます。油は手持ちのものがあるので僕はそっちを用意しますね」


 コロッケの成型を二人に任せ深めのフライパンに油を入れて加熱する。


「見て見て、綺麗に丸くできた!」


「本当ね。ママのよりも上手にできたわね!」


 妻と息子が料理をする姿をリビングから見つめるリラグオは先ほどまで自身が命の危機だったことも忘れ平和な時間を堪能する。


 油が温まったのを確認するとバッタ液に潜らせパン粉を付け揚げ始め、それを興味深く見つめる二人。


「油が跳ねることがあるのであまり近づかないようにして下さい」


「こんなにも大量の油を使う料理ははじめてですし、それに獣などから取る脂とは違いサラサラとしていますね」


「これは植物から取れる油ですね。種を圧縮して作るのかな? 魔物から取れる脂で揚げることはできますが少し味がくどくなりますね」


 そんな話をしているうちに衣は綺麗なキツネ色へと変化し油を切り皿に乗せ、それをワクワクと運ぶリララグ。後ろではリラララが心配そうに見つめながら後を追い席に着く。


「そのままでも味がありますがこのソースをかけて食べて見て下さい」


 マモルがアイテムボックスから小さな壺を取り出し開けると複雑で香ばしい匂いがテーブルに広がり鼻をスンスンと動かし、リラグオが先に動き熱々のコロッケを自身の皿に取り壺に添えられたスプーンを手に取り少量をかけ口に運ぶ。


サクッ!!


 揚げたてのコロッケは香ばしくサックリとした衣からリズムのよい音が鳴り、中身の玉ねぎと芋本来の甘味に肉の旨味とソーススパイシーな刺激と香りが口に溢れ自然と表情を崩すリラグオ。


 リラララとリララグも同じように口に運びハフハフと熱々のコロッケを堪能し、その姿に自然と笑みと小さな達成感を覚えるマモル。


「天界でも先輩たちが同じ顔してたねぇ」


「エルエルもだよね。ほら、ここにエルエルのもあるから温かいうちに食べるといいよ」


「マモルは食べないのかい?」


「まだバッタ液とパン粉があるからトカゲの肉をフライにするよ」


「それも楽しみだねぇ」


 一心不乱にコロッケを食べるリラグオ一家。その輪にエルエルも加わりその様子を視界に入れながら肉に下味を付け衣を纏わせてゆく。


 出会ったばかりのオークたちだが天使であるエルエルとも仲良く料理を囲み食事する姿にマモルは手応えを感じつつトカゲの一口カツを揚げるのであった







お読みいただきありがとうございます。

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