リラグオの復活とマモルの目的
「の、呪いが解けたのなら普通にポーションで回復するのですか?」
後ろから震えた唇で声を掛けるリラララにエルエルは無言で頷き、マモルはアイテムボックスから紫色のポーションを取り出すとまだベッドで意識を失っているリラグオに振り掛ける。淡い紫色の光が数秒ほどリラグオを包み込み光が治まると紫色のポーションで濡れていた所は綺麗サッパリなくなり、変わりにゆっくりと目を開ける。
「どれほど寝ていた?」
ベッドからゆっくりと身を起こし妻であるリラララへ視線を向け、次の瞬間には溢れ出す涙を流し飛び付くように抱き着かれ、遅れてリララグも声を上げて父の復活に涙する。
「おいおい、まるで死人が生き返ったような喜び方じゃないか……」
冗談の心算で口にしたがギュッと抱き付く妻と泣き続ける息子に困った表情を浮かべ、邪魔をしては悪いと思いエルエルの足を掴みその場を後にするマモル。
「元気になって良かったね」
「あの親子は良かったかもしれないが、呪われるほど恨まれているのが気になるねぇ。オークはあまり魔法や呪いに明るくはないイメージだったけどねぇ……」
「それでも邪神の目に似ていたのなら術者を探した方がよくないかな?」
「それはそうだねぇ……ある程度、質の良い魔石なら邪神の目どころか、魔族だって現れかねないねぇ。今頃は術者に返った呪いで驚いているだろうからねぇ……」
ニヤリと口角を上げるエルエル。マモルは鳴き声が治まったのを確認するとゆっくりとドアを開け部屋へと戻るのであった。
リラグオの呪いを解呪しポーションで回復させたマモルは涙が治まり事の顛末をリラグオに説明していると巨大な腹の音が部屋に響き、本来の目的をリラグオ一家に相談したのである。
「オークさんたちの村で育てていたり名産だったり、知っている食材を教えて下さい」
お礼をさせてくれと頭を下げるリラグオだったが予想外の質問に一瞬呆気に取られたが、それならと立ち上がりキッチンへ向かいオークたちの主食である芋(男爵イモに近い品種)を紹介し、他にも玉ねぎや干した肉に酒などをマモルに説明したのである。
「ここにある食材で料理をしてもいいですか?」
「ああ、それは構わないが、助けられたのだから妻の料理で持て成したいのだが……」
「病み上がりが気にすることじゃないねぇ。いいから一家でもう少し抱き合って生きている事を実感し、このエルエルさまを讃えるといいねぇ」
キッチンの天井近くでフワフワと浮きながら胸を大きく反らせるぬいぐるみ姿のエルエル。マモルはその事に目もくれず食材を前に目を輝かせている。
「病み上がりなら消化のよいものが良いだろうし、お肉は大きなトカゲがあったからそれを使って、油はオリーブオイルで大丈夫かな……」
ぶつぶつと独り言を口にしながらキッチンに立ちアイテムボックスからエプロンを取り出す装備するとテキパキと動き火を起こして湯を沸かす。
キッチンの床は土間で作られ火災対策がなされレンガを使い造られた竈とオーブンがありどれも使い込まれているが丁寧に使われているのか磨いたように清掃されリラララの日常的な頑張りが見て取れる。
「よし、芋を使ったスープを作ろう」
湯を沸かしながら野菜と肉を切り炒め、火がある程度入ったら沸いた鍋に入れ火を弱めて蓋をする。竈で火を弱めるには勢いのよい薪を取り出し隣の窯へと入れるとフライパンにバターと小麦粉を入れるとゆっくりと混ぜながら火を入れる。
「香りが既に美味しいわ……」
リラララの言葉に顔を立てに振るリラグオとリララグ。エルエルも人形の鼻を膨らませスンスンと匂いを取り入れている。
「あとはゆっくりとミルクを入れながら溶かして、玉にならないようよく混ぜる」
弱火に掛けながらミルクを入れホワイトソースを溶かし、ある程度溶けたところで具材を合わせて塩コショウで味を調える。
「芋があるのならコロッケとかも……あの、これって魚ですよね?」
「ああ、それは商人から貰った火災から家を守る御守りだ。火災の際にその干した魚が燃え水を呼び出して火を消してくれると云われているそうだが、火災に注意しろということだろうな」
御守りはカッチカチに乾燥した鰯のような魚を中心に蔦で作られた円状の部分には香りの強いハーブが巻かれている。
「これってローズマリーかな? 唐辛子が干されたのもある……」
ハーブや香辛料が添えられている事を考えるとこれをお守りとして渡した商人の器がでかいのか、それとも無知なのか首をひねりながらもシチューを完成させ、熱々のうちに振舞いながら次の料理を作りはじめるのであった。
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