巣の調査
知能が高いワイバーンは巣を清潔に保つため餌場とトイレは離れた場所で行い、巣にしている木々も定期的に交換し虫がわかないよう気を付けている。特に巣の周辺には気を配り外敵になりそうな生物を必要に追いかけ駆除するほどである。
「この辺りでは水陸移動可能なカメやカニにヘビのような魔物が多いっすけど、岩に擬態するカニ以外はワイバーンが敵認定をして追い払ったっす。特に酷かったのが海トカゲなどでこの地域にしか生息していない種をいくつかが滅ぼされたっす」
「ワイバーンは恐ろしいのですね」
「それを軽々首をはねたマモルがいうのねぇ」
「もう一体はエルエルが討伐したろ」
「不意を突けば簡単なのねぇ。天使長の隙を突く方が難関なのねぇ」
「それはそうだけど……」
「どちらも強いということなの」
皆で協力しながら巣の中に落ちている金貨や宝石類を拾い集める一行。
「金貨も複数あるのねぇ」
「呪われている宝石や呪術を込めた鎧もあったの」
「ワイバーンを呪うために目立つ金属や宝石に呪いを付与したのだろう」
「呪いぐらいじゃどうにもならないと思うっす」
海龍幼女の手には黒い霧のような光を薄っすらと放つペンダントと黄金に輝く籠手が握られている。どちらも呪われているのか一目見ただけで嫌な予感を感じるものでエルエルがすぐに手を翳し力ある言葉を口にする。
「浄化の光よ、不浄なる闇を払うのねぇ」
翳した手から魔法陣が現れ光が漏れると黒い霧のような光が四散する。
「すごいの、一瞬で呪いが解けたの!」
「我はこれでも天使なのねぇ。解呪は得意なのねぇ」
「この辺りに渦巻いていたものも浄化されたようだな」
「多くの恨みを買うと自然に負の気が集まるっす。それらも余波で浄化したっすね」
ワイバーンの巣ということもあり獣臭が立ち込めそれが原因で居心地の悪さや不快感があるのだろうと思っていたマモルはエルエルの活躍を素直に嬉しく思い、エルエルは気恥ずかしさがあるのか視線を反らして遠くに落ちている豪華に装飾された短剣を手に取る。
「立派な剣を見つけたのねぇ。金とミスリルを使った短剣なのねぇ。貴族が使っていたのか家紋いりなのねぇ」
「家紋? ああ、装飾のあれなの!」
「その血統を示すための紋章だな。この槍に埋め込まれた魔石の下にある馬と重なる二本の剣が家紋だ」
「こっちにもあるっす! 弓の上部に流星と花が恐らく家紋っす」
「どの国の家か特定できたら返したいけど」
「返すのです?」
「そりゃ遺品だからね。きっと由緒あるものだろうし返還できた方が武具や使っていた人も喜ぶんじゃないかな。もちろん家族の方も……」
いまはもう主人をなくした武具や宝石たちを前にマモルは返還したいことを伝えると手にしていた豪華な短剣をそっと背中へ隠すエルエル。普段のぬいぐるみ状態であればどんなに隠しても背中からはみ出て気が付かれるが、いまは美少女モードなので隠す気になれば完全に隠せ口を横一文字に閉じるとゆっくりマモルの視界から外れようと移動を開始する。
「拾った短剣を隠してどこへ行くメェ?」
その言葉に一気に皆の視線がエルエルへと向かい不自然に背中に手をまわす姿に大きなため息を吐くマモル。
「こ、これは違うのねぇ! 罠! 罠なのねぇ!」
苦し過ぎる言い訳を口にする姿に更にため息を吐くのは仕方のないことだろう。
「これは家紋が入っていないので貰いたいの!」
エルエルが有罪判決を受ける前に海龍幼女が水属性の魔石が嵌められた木製の杖を掲げて叫び、その手があったかと手にしていた短剣を放り出し新たに家紋が入っていない豪華そうな武具を探しに走るエルエル。
「水属性の魔石があればほしいといっていましたよね。こっちのイヤリングにも小さいですが水属性の魔石が使われていますよ。これは炎龍さんが求めていた火の魔石が組み込まれた盾かな?」
自身が拾ったアーモンド形の盾の下部には真っ赤な魔石が組み込まれており、魔法具なのか魔力を通すと盾の下部が赤く熱を持ち、その部分で敵を突けば熱のある打撃で受ける方は恐怖を与えるだろう。魔物が相手でも熱いと悟ることができうかつに近づくものは少ないだろう。
「これは盾のままでも使えるっす! ありがたく使わせてもらうっす!」
目的だったものをふたりが受け取ると更に入念に回収作業を進め、日が真上になる頃には巣のまわりに落ちている武具や金貨などの回収を終えた。
途中でいなくなったエルエルはミスリル製のショートソードと光属性の魔石が埋め込まれた盾を見つけ、ドヤ顔で両手に持ちながら家紋がないアピールをして自分の物だと言い張る一幕もあったが、どう見ても量産品でショートソードはミスリル製だとしても刃は半分にかけており盾も魔力の流れが悪く回路に不具合があり使えるものではなく歯を食いしばりながら地面に叩きつけるのであった。
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