巣に到着
風龍の手に乗り海上を進む一行。本来であれば強烈な風をその身に受けるはずなのだが風を操ることに長けている風龍は自然と自身を取り巻く空気の層と相殺させ、手に乗るマモルたちは無風の状態で乗り心地の良い空の旅を満喫している。
「やっぱり風龍の乗り心地が一番なの」
「自分も空を飛ぶことには慣れていても風を受けずに飛ぶのは無理っす」
「シールドを張らなくてもいいのは楽でいいのねぇ」
「楽でいいのはわかるけど楽し過ぎだろ……」
涅槃像のような姿で横になるエルエルジト目を向けるが効果はないらしくリビングで寛ぐ姿そのもので、海龍幼女と体育会系炎龍は立ちながらまだ見えぬ目的の場所へ気持ちを高ぶらせている。
「龍さんたちはワイバーンのお宝に興味があるのですか?」
「宝にはあまり興味がないのですよ。それよりもワイバーンの巣がある場所は小島が多くカニやエビにお魚がいっぱいなのです」
「深海の魚も美味いっすけど、あの辺りにいるカニは絶品っす。他にもワイバーンが食べない棘付きの貝や殻の硬い魚とかもいるっすよ」
「棘付きの貝ですか?」
「そうっす。黒かったり紫だったりする色をして海藻を食べる貝っす」
「それってウニかな? 分類的にはヒトデとかの棘皮動物だった気もするけど……」
前世の知識を思い出そうと腕組みをしながら考えていると肩に乗っている手乗りサイズの羊メイドが口を開く。
「ウニも食べられるメェ?」
「食べられますよ。でも、好き嫌いが別れますね」
「ウニは食べなれると最高なのねぇ。そのまま食べても美味しいけど軍艦巻きや海鮮丼にしてもトロリとして濃厚で美味しいのねぇ」
「それは味を確かめないとですめぇ」
肩に乗りやる気満々で息を荒くする手乗り羊メイドに、毒がなければこっちの世界のウニも食べて見たいなと腕組みをしながら料理方を考えるマモル。
「ウニと生クリームを使ったパスタとかもあったが……そういえば魚卵とかこの世界の人たちは食べるのかな? いくらやカラスミにカズノコとか……」
マイペースに料理の事を考えていると風龍の速度が落ち小さな島々が目に入り、なかには火山のように煙を上げる島も複数あり多くのカラフルな鳥の姿も目に入る。
「この辺りの中央にある島がワイバーンの巣なの」
「噴火もよくあって地震と呼ばれる地面が揺れる現象もあるっすから注意するっすよ」
ふたりの説明にこの世界にも地震があることを知り気を引き締めるマモル。だったのだが、島のまわりに見える巨大な黒い針の群生に苦笑いを浮かべる。
「あれがさっき言っていた貝っす。見てわかるようにトゲトゲしているのでトゲトゲ貝と呼ばれているっす」
「動きは遅いけど棘が鋭く危険なの間違って踏むと痛い目を見るの」
棘ひとつでも二メートルはあり、その大きさ的に踏まれる側だなと思うマモル。
「味はどうなのですか?」
「あの棘と見た目から食べている人魚や魚人は見たことないの」
「ワイバーンが消えた影響か周囲に大きな魔物の姿があるっす」
体育会系炎龍の指差す先には島の上に上陸している巨大なタコや小島とほぼ同じサイズのカメにその亀の甲羅に噛みついている巨大な龍に見えるウツボが荒波を起こし、さながら怪獣映画のような光景が広がっている。
「凄いところですね……」
「全部が大きいのねぇ……」
涅槃像だったエルエルも立ち上がり巨大な生物たちの戦いを見つめ、ゆっくりと降下しながら中央のワイバーンの巣を目指す。中央の島には木々もあり更に中央には巣だろう木々が組まれ鳥の巣のような形をしているが、サイズが体育館よりも一回りは大きくその巨大さに目を丸める。
「巣の外周に多くの武具が落ちているの」
「サビて使えるものは少ないっすけど、金や銀に組み込まれた魔石なんかは再利用できるっす」
「上から見ると巣のまわりが光って見えますね」
巣のまわりには多くの剣や鎧などが散らばり光を反射させている。サビた剣や槍なども多くあるが金で装飾されたものやミスリル製の武器は今でも輝きを失わずにギラリと光を放っている。
「魔石もちらほら見えるのねぇ」
「水の魔石があればほしいの。精霊を育てるのに使いたいの」
「それなら自分もほしいっす。海底火山周辺の精霊は未熟なのが多いから使ってあげたいっす」
ゆっくりと降下する風龍の手から身を乗り出し巣のまわりを見つめる一行。眼下に迫るワイバーンの巣には多くの黒い翼が散乱し金貨だろう輝きや水晶のような魔石などが転がっている。流石に巣の中に武器や防具などはないが、それでも価値のありそうな輝きを持つ宝石などが無造作に転がり巣の中だけでも一生遊んで暮らせそうな黄金が輝きを放っている。
「この中で昼寝はできそうもないのねぇ」
その言葉に海龍幼女と体育会系炎龍は静かに頷き、地面に到着すると皆で力を合わせ金貨や魔石を拾い集めるのであった。
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