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旅のお供は変わり者~種族を越えて囲むテーブル~  作者: 彩
第四章 ラミアとケットシーの村
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ワイバーンの巣へ



 風龍の顔面が引き抜かれた砂浜には大きなクレーターと胸元の空いたスーツを着崩しているイケおじの姿があった。


「おじさん何か悪いことしたかな? まだ、頭が痛いんだけど……」


「どう見ても我を無視していたのねぇ。それだけじゃなく顔がムカついたのねぇ」


 エルエルが踵落としを入れ墜落し砂浜に顔面を埋めた風龍はおでこに大きなたんこぶを作り蹴られた脇を撫でなでる渋いおじさん。ブラウンのスーツのワイシャツを第二ボタンまで開け、靴にこだわりがあるのかビーチに先の尖った革靴を履き近寄りがたい雰囲気を醸し出している。


「海龍が巣穴付近にいなくて心配になったんっすよね」


「そりゃ古龍として心配はするさ。炎龍が付いているようだったけど念には念で様子を見に来たらこの様だけどね」


「エルエルがすみません。あの、良かったらこのポーションを使って下さい」


 ポーション片手に頭を下げるマモルに目を丸める風龍だったが、それを両手で受け取り頭を下げる。


「噂は聞いていたけど……本当に幼い子供がワイバーンを倒したんだね……」


 マモルを頭からつま先まで見つめると封を開け一気に口に入れるイケオジ。


「マモルは若いけど強いのねぇ。まあ、我が鍛えたから当然なのねぇ」


「鍛えたはいい過ぎだろ……それよりも痛みの方は大丈夫ですか?」


「うん、大丈夫。このポーションは凄いね。頭とお腹の痛みがすっかりなくなったよ。それにほら、腕の古傷も……本当に凄いポーションだね」


 たんこぶになっていた額の腫れも引き古傷のあった右肘を動かし確認し、それを見て驚く炎龍。


「その傷は天龍に嚙みつかれたやつっすよね?」


「ああ、暴れる天龍を抑えて噛みつかれた傷だよ。腕が取れかけ傷は癒えたが動かすと痛みがあったんだけど……本当に治ったよ……どうお礼を言ったらいいか……」


 右腕を動かしながらマモルを見つめる風龍。


「なら、恩返しの方法があるの。これからワイバーンの巣に送るの」


「ワイバーンの巣? ああ、戦利品の回収だね。それぐらいならお安い御用だよ」


 海龍幼女が提案し快く引き受ける風龍にワイバーンの巣へと行くことが完全に決定するマモル。


「それにしても精霊王さまの気配も感じていたが、本当にいるとは驚い気だね」


「マモルとは友達! 精霊石をあげたの!」


 自身の話題がでると嬉しそうに両手を上げて背の高い風龍にアピールし、それを見つめ表情を柔らかくする羊メイドやヒマワリ羊にイケオジ。マモルも今朝方、喜んでパンケーキを食べていたなと思い出し表情を崩す。


「だらしない顔していないで早く鰹節の準備をしてワイバーンの巣に行くねぇ」


 エルエルに急かされたマモルは指輪型のアイテムボックスから昨日使った樽を改造して作った燻製器を取り出し、休ませた鰹節一日目を並べウッドチップに火を入れ、こちらの様子を窺っていたミケーラとミッケルを手招きする。


「話は聞いていたと思うのですが、これの様子をたまにでいいので見てもらえませんか?」


「任せるにゃ! マモルはマモルのできることをするのにゃ!」


「頑張ってミケーラが食べないよう見張るのにゃ!」


「勝手に食べるわけにゃいにゃ!」


 騒がしく了承してくれたふたりに感謝しつつ自身の装備を確認する。普段から皮鎧を装備していることもありナイフと女神が象られた杖を取り出し確認し、他にもポーションや役に立ちそうな物があるか指輪型のアイテムボックスを探る。


「準備ができたら送るので声を掛けてくれ」


 準備をするマモルに声を掛けた風龍はそのまま空へとゆっくり上がり元の龍の姿へと戻る。その姿は雄大で恐る恐る見ていたケットシーや人魚たちが慌てるほどであり、急ぎ安全だと叫び走るケットシーの双子のミケーラとミッケル。


「や! 私も行くの!」


「精霊王さまにもしもの事があってはなりません。どうかお考え直しを」


「そうですメェ。我らの希望である精霊王さまに何かあれば皆が悲しみますメェ。また、マモルには分体を付けておきますメェ」


 どうやら精霊王であるツムギもマモルについて行きワイバーンの巣を冒険したかったのだろうが、ヒマワリ執事と羊メイドが許すはずもなく口を尖らせている。


「準備はこれで大丈夫かな。戦闘を考えると余分なものは持ちたくないし、いつも通りでいいよね」


「問題ないねぇ。問題が起きても我が付いているのねぇ」


 エルエルの心強い言葉に「そうだな」と声を返すマモル。準備が終わったこともあり風を纏って空へと上がると巨大な風龍の手が目の前に現れ、遅れて空に上がったエルエルは既に元の美少女天使の姿へと変わり掌へと着地し涅槃像(ねはんぞう)のように横になる。


「楽ちんで移動ができるのは良いことなのねぇ」


「楽ちんって、もう少し緊張感をもって、今更か……」


 エルエルの態度に苦笑いしながらマモルも巨大な掌の上に着地し、横には海龍幼女と体育会系炎龍が並び、マモルの頭の上には拳サイズの小さな羊メイドも現れ、空を進み始める。地上では精霊王のツムギが大きく手を振りケットスーや人魚に魚人たちも手を振り見送りワイバーンの巣へと向かうのであった。





 お読み頂きありがとうございます。

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