魚への名付けと今後の方針
日が落ちはじめる頃には水の檻の中の魚はほぼほぼ解体を終えたのだが問題は名の付いていない魚が多く、似た魚には〇〇もどきなど新しく名付け、まったく見たことのない魚には記号を割り振り指輪型のアイテムボックスに入れ保存した。アイテムボックス内の鑑定機能で名が判明するものもあったが名称のない魚は人魚と魚人が多く案を出し、ケットシーたちの出す案の多くは美味しそうな魚や、焼いたら美味そうな魚に、煮て食べたいという料理法が多くほぼほぼ却下された。
「名付けの方が解体よりも大変でしたね」
「まったくなのねぇ。国や地域によって魚の名前が変わるのはあるみたいだけど、これほど多くの魚に名前が付いていないのは怠慢なのねぇ」
「怠慢?」
「そうねぇ。これは天使が調べ辞典に名前を記入する案件なのねぇ。世界にはすべてを記載した辞典が存在し、天使が調べ上げ記入することでその記入された文字がリンクするねぇ。あとで上に報告して感謝されるべき案件だったのねぇ」
ぬいぐるみ姿のエルエルが自分は頑張り、仲間であろう天使たちの怠慢を天使長へと伝えると宣言する。この場には天使という職はエルエルだけでありツッコミを入れるものや異議を唱えるものはいないが、朝から機嫌の悪い天使長の相手をしたくないマモルは口を開く。
「真っ赤なクラゲにブラッドダンサーと名付けたのはセンスあるよな」
「我もそう思うのねぇ。血のように赤く優雅に漂う姿にぴったりな名前なのねぇ」
「カツオAからCとかも雑だけどわかりやすかったよな」
「そうねぇ。どう見ても同じ魚に見えるけど頭から尾に流れる模様が横にしたABCに見えるのねぇ」
「サンダーシャークもカッコよかったね」
「尾に電撃を放つ器官があったのねぇ。隣で確保されているLEDアンコウの発光器が音に合わせて点滅していたから電気属性だとわかったのねぇ」
エルエルが機嫌よく持ち上げられ、そろそろだなと話題を変えるマモル。
「炎龍さんともちょこっとだけ話したけどさ、ワイバーンの巣だっけ? その調査にはボクがいった方がいいのかな?」
解体作業をしながらマモルが討伐したワイバーンの巣にあるだろう戦利品という話題。ワイバーンは光るものをため込む習性があり、見た目が同じカラスも同様に光るものを巣に持ち帰り光の反射を嫌がる捕食者から巣を守るために集めているとされている。
ワイバーン討伐に多くの戦士が赴き返り討ちにあったという話を耳にしていたマモルはお金に困っていない現状からしても行きたくはないのが正直なところである。
「ワイバーンの話なの?」
「巣の場所に案内できるっすよ」
ケットシーが作る串焼きを見つめていた海龍と炎龍がマモルの声を聴き振り向き、同じように竈に張り付いていた精霊王や羊メイドにヒマワリ執事もマモルのまわりに集まる。
「怖いワイバーンさんを倒したマモルは凄いのです」
「精霊であっても油断をすれば存在を消滅させるほどブレス吐くメェ」
「多くの精霊も被害にあったと報告を耳にしましたが……古龍種すら手を出さなかったのですね」
どこについているわからないが海龍と炎龍にジト目を向けるヒマワリ執事。
「あれは規格外過ぎなの。古龍といっても強さはバラバラだし、私は海専門なの」
「自分は数回立ち合ったっす。自分よりも空を飛ぶのが上手で、二対一だと手が出せなかったっす。風龍や天龍が参加してくれたら勝てたかもしれないっすけど、あの二人は気まぐれで……」
こめかみをポリポリとかきながら話す炎龍。知り合いなのかエルエルは黙って数度頷く。
「天龍って、あの全身ピカピカのだよね?」
「そうなのねぇ。暗闇以外だと目と頭が痛くなるから近づくなと天使長からぶん殴られて落ち込んでいたのねぇ。少しはまわりの迷惑を考えるといいのねぇ」
酷い言われような天龍だが空を泳ぎ魔力の循環を手伝うなくてはならない存在で、天空にある創造の女神カルアミールの城の近くを根城にしている。以前、近くに住んでいたマモルも目撃したことがあり、殴られ地上へと落下する天龍に手を合わせたのを思い出していた。
「目に悪そうな色をしていたのは確かだったけど、泣きそうな声で叫びながら落下していく様は見ていて悲しくなった。ワイバーンの巣の話から脱線したけどやっぱり僕が行かないとまずいですかね?」
「ワイバーン討伐したのがマモルさんですから、そこは筋を通した方がいいっすよ」
「金銀財宝とはいわないまでも歴戦の戦士たちが装備しただろう武具は確実に埋まっているのめぇ」
「行かなかったら行かないで各国の冒険者が動き争いが生まれます。場所的にもドワーフの国から近いこの海の少し先ですから送り届けられますよ」
ヒマワリ執事からの提案に鰹節作りがまだ一夜干しも完成していない現状や、精神的にも古びた装備は必要ないマモルからしたらワイバーンの巣の攻略に挑む気になれず、モヤモヤとした気持ちでケットシーたちが作る夕食にご馳走になるのであった。
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