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旅のお供は変わり者~種族を越えて囲むテーブル~  作者: 彩
第四章 ラミアとケットシーの村
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人化の理由


 浜辺には多くの竈が組まれ串に刺したホウボウの身が焼かれ煙を上げ、違う竈では大きな鍋にホウボウのアラや身に貝などが入れられたスープに、塩茹でされるどう見てもカニにしか見えない足が調理されている。


「あの大きさの足ならみんなに行き渡りますね」


「ラミアの私らにも食べる許可がでるなんて驚きです」


 競技をしてまで争って食べるホウボウの足だったが海龍が大量に捕ってきたこともあり長老が快く許可を出し、小さいながらもドヤ顔を決めた海龍幼女。ラミアたちは深く頭を下げて感謝し更にドヤ顔を浮かべ、それに無駄にライバル心を燃やしたエルエルはジト目を向けるとドヤ顔が真顔になり逃げるようにマモルの後ろに隠れるという幼女丸出しの緩急と逃避を見せ今に至っている。


「どれも美味しそうですね」


「う、うん……」


 海岸近くに設置されている壁の休憩場所にはケットシーが調理した料理が並べられそれを前に涎を垂らすエルエル。同じ席に着くラミアのふたりも早く食べたいという感情が身を揺らすという行動で感じ取れ、マモルは本日の主役である海龍幼女に串に刺さったホウボウの身を食べやすいよう串から外し切り分け皿に乗せフォークと共に目の前に置く。


「わぁ……食べてもいいのかな?」


「海龍さまに用意して下さったのですからいっぱい食べて下さい」


「早く食べるのねぇ。そうじゃないと皆が手を出せないでいるのねぇ」


 流石のエルエルも空気を読んだのか早く食べるよう急かし、海龍幼女はフォークを手にすると一切れ刺して口に運ぶ。


「お、おいしー! 甘みがあってしょっぱくてふわふわしてるの! 美味しいの!」


 目を輝かせながらホウボウの身の感想を口にする海龍幼女に調理をしたケットシーたちは喜びを驚き表し、マモルは茹でられた立派なカニにしか見えないホウボウの足を食べやすいようにナイフで切り込みを入れ身を取り出し皿に切り分ける。


「む、カニに匹敵する甘みのある身なのねぇ」


 海龍幼女に切り分けたカニにしか見えない切り身に手を伸ばし一切れ口にするエルエル。素早く動けるよう瞬時に元の天使の姿に戻り手を出すあたり本気で食べたかったのだろう。


「こらこら、エルエルにも切り分けるからひとのを取らないの。海龍さま、どうぞ」


「あ、ありがと」


 殻から外され一口サイズに切り分けたカニの身もどき。それにフォークを刺して口に運ぶ海龍幼女。数秒の沈黙するとわなわなと震えだす。


「大丈夫ですか? 味が気に入らなかったり殻が入ったりしましたか?」


 フルフルと震えフォークを持つ手に力が入る姿にマモルが慌てて声を掛けると海龍幼女は顔を上げる。


「いままでとんでもなく勿体(もったい)ないことをしていたの……」


「勿体ないですか?」


「そう、勿体ないの! こんなにも美味しかったのを知らなかったの! 海龍は基本的に海に溶けている魔力を吸って生きているの! だからお魚がいても食べないし、食べても美味しくないの! でもでも、ここで食べたお魚は美味しいの! この足なんて凄いの! 甘いの! プルプルなの! 人化したらこんなにも美味しく感じるの!」


 早口で敏感になった舌で味合う美味しさを伝える海龍幼女。その姿にケットシーたちは目を丸めつつも料理を褒められ喜び、マモルも微笑みを浮かべる。同席しているラミアのふたりも互いに顔を見合わせ手を出すなら今だとホウボウの足の切り身にフォークを刺して口に運びその味に酔いしれる。


「争うほどの味……」


「確かにこれほど美味しいのであれば争いも起こりますね……」


 ラミアの二人もカニにしか見えないホウボウの足を目を閉じて味わいその舌に記憶する。


「このスープも食べたことがないぐらい美味しいの……食事は人化のためにあるのかもしれない……」


「何をあたりまえの事をいっているのねぇ。古龍種が酒の深い味わいを知るために人化の術が作られたのねぇ。これは古龍種であればウロコに刻まれた魔法陣と同じぐらい常識なのねぇ」


 エルエルからの説明に海龍幼女は酒が飲めるのではとマモルへ視線を向け、どう見ても五才ほどの幼女にお酒を進める気にはなれないマモルは笑顔で首を横に振る。


 振るのだが、その視界の隅で串焼きを受け取る羊メイドと、ココナッツの殻で作られている器に入れられたスープを受け取る精霊王ツムギに、ココナッツを手刀で割りストロー代わりに使える草の茎を刺す顔がヒマワリ執事の姿が見え苦笑いを浮かべる。


「このスープも美味しいの!」


「こちらの串も美味しいですメェ。これは大型魚のようですが珍しい魚なのですメェ?」


「爽やかな甘さで美味しいです」


 飲食をしながらマモルの下へとやってくる精霊たち。それに気が付いた海龍幼女は席から立ち上がりマモルの後ろへとすぐに逃げ、同席していたラミアたちは空気を読んでか席を立ち離れる。


「マモル!」


 精霊王のツムギがマモルと目が合うと走ってこちらに向かいそうになるが、その手にはスープを持っており慌てながらもゆっくりとこぼさないよう気を使い進み、羊メイドとヒマワリ羊も同じスピードで向かってくる姿に、背中の海龍幼女はちらちらと顔を出しながら挨拶のタイミングを計るのであった。





 お読み頂きありがとうございます。

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