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旅のお供は変わり者~種族を越えて囲むテーブル~  作者: 彩
第四章 ラミアとケットシーの村
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海龍


 大波が近づき村に被害が出る前に決着をつけようと飛び上がるふたり。ひとりはナイフと杖を持ち風を纏ったマモル。もうひとりは天使の輪を輝かせぬいぐるみモードから美少女モードへと変わったエルエル。


「一気に片づける!」


「あれを倒しても津波に村が壊されるのねぇ!」


 緊迫した空気のなか速度を上げ泳いでいる集団を追い越し眼下に捉えると一気に下降し輝くナイフを振り下ろす。が、高い金属音と共に大きな声が上がる。


「い、命ばかりはお助けをっ!!!」


 聖属性が付与された黄金のナイフを額から伸びる巨大な角で受けつつ叫ぶ命乞いに呆気に取られるマモル。エルエルも強化した蹴りを放つ瞬間のことであり巨大な柱のような長い胴体はフルフルと震え、固いウロコに覆われているとはいえ無事では済まなかっただろう。


「えっと、敵意はないと?」


「ないです! ないです! 絶対的にないです! こっちは水の精霊から使途さまとやばい天使さまがいらしているので挨拶へ行った方が後々問題がないだろうとアドバイスを受け、こっそり様子を窺いいまならと顔を出したのですが……」


 巨大な頭とそれを支える巨大な首と同を持つそれは海龍。巨大な蛇のような見た目だが頭には龍らしい角とヒレがあり胴体にも腕と足がある存在。多くの信仰の対象となっている海の神に等しい存在である。で、あるのだが明らかにマモルとエルエルに恐怖しており頭が高いと感じたのかゆっくりとその巨大な頭を海面近くまで下げる。


「挨拶ですか?」


「はい、挨拶です……もし見つかったら命を保証される前に討伐されかねないと……特にそちらの天使さまが……」


 海面がフルフルと震えガチビビリなのだと理解するマモル。同時にやばい天使といいうエルエルを示す単語に納得しつつも、海龍の背後にいまだ存在する巨大な大波に視線を移す。


「あの後ろの大きな波が陸に上がったら危険なのですが」


 素直に津波が危険だと伝えるマモル。


「これですか? これは自分が制御している海水でまだ幼い水の精霊を育てるための揺りかごのようなものですので問題ないです。気に入らないのであればすぐに消すことも可能です」


「水の妖精を育てる揺りかご……それなら消さなくても大丈夫です。すぐ近くの村に被害が出ないのであれば問題ないので……」


 互いにペコペコと頭を下げ合い恐怖しながらも挨拶に来た海龍の扱いをどうしたものかと思案するマモル。


 はじめから敵対の意志ありで周りに迷惑をかけているのなら追い払えればと思っていたのだが、明らかに敵対ではなく挨拶に来るほどの平和主義であり幼い水の精霊を育てるために自身の力を使っているほど教育者であれば討伐という選択肢はなくなる。エルエルに対して恐怖しているが海龍に助言した水の精霊の印象であってそこまでヤバイ奴ではないのになぁと思いながらナイフを鞘に納める。


「ひとつ聞いてもよいのねぇ?」


目を細め見つめるエルエルから放たれた言葉に背筋を伸ばす海龍。海上で見えないが海の底まで背筋を伸ばしているのだろう。


「ななな、なんでありましょうか!」


「助言した水の精霊はどこの誰なのねぇ? それとホウボウという大きな魚はこの辺りにもいるのねぇ? いたらほしいのねぇ」


「み、水の精霊は魚の姿をした空を泳ぐ細身で、ホウボウは足の生えた変な魚ですか? それならこの辺りの海には多く、必要でしたら十や二十、すぐに捕ってまいりますが」


「なら、お願いするのねぇ。我の印象を悪くいった水の精霊の特徴は覚えたのねぇ……どうしてやろうかねぇ……」


 悪い表情を浮かべながら指を鳴らすエルエルに、元から青い巨大な顔を青くする海龍はすぐに海に潜りホウボウを捕まえに動く。


「被害がなさそうで良かったけど……やばい天使に挨拶とか……」


ジト目を向けるマモルだが、それを聞いたエルエルは腕組みをしながら同じく不本意だといわんばかりに頷く。


「まったく失礼なのねぇ! こんなにも可憐で儚く優美で賢く超絶美少女な我を水の精霊ごときがヤバイ天使などと表現しやがってねぇ! 横にいるマモルの方がヤバイってのに失礼なのねぇ!」


 いつの間にか自分の方がヤバイ奴認定されたことに、そういう所ではと思うマモル。


 エルエルはマモルが転生し新たな肉体を創造の女神カルアミールが作り出し、成長の補助をさせるため作り出した天使であり、基本的にはマモルのために行動している。行動しているのだがどこで間違えたか完全な忠誠を誓う存在ではなく、互いに切磋琢磨するライバルのような存在に進化し、地上へも一緒に降りる許可が下りた極めて異例な天使である。


「どっちにしても、そろそろみんなが心配するだろうからボクは戻ってみんなに説明してくるよ」


 まだ戻らない海龍にマモルが提案するとエルエルは渋々頷くが、次の瞬間には水柱が上がり水の檻に入れられたホウボウが何体も空へと打ち上がる。


「戻ってきたのねぇ」


 巨大な海龍の顔が水面から現れ、自分頑張りましたといいたげな表情でエルエルとマモルの顔を交互に見つめるのであった。





 お読み頂きありがとうございます。

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