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旅のお供は変わり者~種族を越えて囲むテーブル~  作者: 彩
第四章 ラミアとケットシーの村
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塩作りと干物



 坂道の両脇に広がる細かな砂の引かれた塩田を横目に進み到着した塩炊き小屋。いくつもの大鍋が並び、火入れをはじめ海水がぐつぐつに煮込まれている。


「細かな石に海水を撒き天日と風の力で蒸発させ、この場で砂ごと煮て濃い海水を作り、そこに残った砂を戻す。一日以上焦がさず煮て塩分濃度を高め、塩の結晶が現れ始めたら火加減に気を使いながら残った水分を取り除く。これがマザーリカーだ」


 この塩炊き場を仕切っているケットシーの男の説明を真剣な表情で聞くマモルとエルエル。熱気のこもる塩炊き場には多くの塩が積まれ、桶には取り除かれたにがりだろう水分も見える。


「最後に天日で干して完全に乾かせば塩が完成する。荒い結晶のままでも美味いが細かく砕いたものを使ったり、近くの内陸には岩塩が採掘できる場所もあったりするぞ」


「岩塩も料理の仕方次第では美味しいですよね」


「ああ、あれはあれで美味さが変わるな」


 太い腕を組みながら自分たちが作っている塩と比較することなく認める器の大きさはあるようで、にがりを入れた桶をマモルの前に移動させる。


「これがマザーリカーだが味見はするか?」


「少しだけ失礼します」


 指輪型のアイテムボックスを起動させるとスプーンを取り少量をすくい口に入れ顔を歪ませると男たちが笑い声を上げる。


「苦いですが塩味と奥に旨味を感じますね」


 その言葉に笑っていた男たちの顔が真剣なものに変わる。


「まだ若いのに違いがわかるか」


「違いですか?」


「おう! ここで作っている塩には海の魂が入っている! 岩塩では出せない繊細な旨味とマザーリカーを完全に取らずに残したことで食材を引き立てつつも奥底では少量の苦みとコクを足しているのだ。この塩はドワーフはもちろん、ゴブリンやオークも購入しているものだ。昔はエルフの顧客もいたほどだ!」


「それを大々的に販売できるようになれば村も栄えるだろう!」


「ワイバーンがいなくなったからには多くのものにこの塩を届け認めさせるぞ!」


「またエルフの顧客も作らないだな!」


 ワイバーンがいなくなったことで生まれるチャンスを生かすべく気合たっぷりに叫ぶケットシーの屈強な男たち。今後はケットシー印の塩が大々的に輸出されるのだろう。


「マザーリカー以外にも好きなだけ塩を持って行ってくれ!」


 塩炊き小屋から出た一行は隣にある保管庫へ移動し麻袋に入れられた塩と、美容用に使われているにがりを入れた壺を受け取り指輪型のアイテムボックスに収納する。


「こんなにも沢山の塩をありがとうございます」


「昨日もそうだったが英雄殿の料理が美味かったからな。子供たちが喜んでいたぞ」


「うちの子供たちも喜んでいた。寝るまでパンケーキの味を語っていたほどだ!」


「そりゃ夢の中でも食べていただろうな!」


 昨日振舞ったパンケーキのことを話題に出すと皆で盛り上がり子供たちがどれだけ喜んでいたかと力説する男たち。屈強な男たちも子供の喜びと成長には勝てないのかどの男たちも嬉しそうに話す姿に作って良かったと思うマモル。隣で浮かぶエルエルはその味を思い出し薄っすら涎を垂らしている。


 「ほらほら、お礼を言って次に向かうぞ」


 フワフワと浮きながら涎を垂らすエルエルを掴み、お礼をいって次の目的地である干物を作っている場所へとミケーラの案内で向かうマモル。塩田がある場所から既に魚を干している場所があり、潮風の香りに混ざる生臭さを感じつつも期待を膨らませつつ足を進める。


「ここが干物を作っている場所にゃ! ドワーフの向けのものはたっぷりの塩で漬け、自分たちやラミア用のは軽い塩分で漬けるのにゃ」


「塩分を増やして痛みづらくしているのですね」


「そうにゃ! 塩を入れ過ぎるぐらいじゃにゃきゃ遠くまで運べないのにゃ!」 


 ミケーラの説明に魚を干していたケットシー女性たちが次第に集まり姦しく説明を受ける。


「干物を美味しく食べるのなら一夜干しがお勧めにゃ!」


「魚の種類にもよるけど炙ったイカもお勧めだよ!」


「塩水に付け風通しの良い場所で海鳥に睨みを効かせながら乾かすのにゃ!」


「よかったら食べて見るかい?」


「それなら色々と味見させないとね! 昨日は私らも美味しい甘味を頂いたからね!」


「干す前の貝もあるから焼いて食べにゃ!」


 まだ幼さが残る顔立ちのマモルにケットシーの女性たちはキャッキャと母性を爆発させ、あっという間に火がおこされ煙を上げ焼かれる干物たち。アジに似た魚やイカに貝なども鉄製の網の上で焼かれ始めると香ばしい匂いが広がりフワフワとしていたエルエルは目を輝かせ、マモルも身が沸騰したように熱くなり現れる脂に絶対に美味しいヤツだと確信しながら焼き上がりを待つ。


「骨は全部取った方がいいかい?」


「まだ熱いから気を付けにゃ!」


「昼とはいえ海からの風があたるから火の向きには注意しにゃさい」


 完全に甘やかせモードなケットシーの主婦たちに恐縮しながらこんがりと焼けた干物を受け取り口に運ぶ。


「思っていたよりも塩気が抑えられていて美味しいです。身もホクホクで適度に締まって、白米が欲しくなるな……」


 小さく呟くマモルにエルエルも口をもぐもぐと動かし黙って数回頷き、白米を思い浮かべて共感するのであった。



 お読み頂きありがとうございます。

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