精霊王からのプレゼント
亜空間の家のリビングには急にやってきた精霊王のツムギと、音の大精霊である羊メイドに、顔がヒマワリという斬新すぎる表情を浮かべる光の大精霊であるレイ。それに加えてキッチンで鮮魚を手に入れご機嫌に捌き料理する天使長と手の平サイズで分体である羊メイドがもうひとり。
リビングのソファーに横になり食べ過ぎの余韻を残すエルエルと、精霊王のツムギが嬉しそうに手にしているそれをマモルへと向け口を開く。
「レイがお土産をくれたの! おすそ分けなの!」
元気にここへ来た目的を告げキラキラと輝くそれを受け取るマモル。手にしたそれは思っている以上に軽くキラキラと輝いて見える不思議な金属。初めて見るそれに思い当たることがないマモルは素直にそれが何なのか質問する。
「精霊王さま、この金属はいったい何ですか?」
「ふふふ、これは精霊石と呼ばれるもので精霊が長く生きた力が宿ったものなの。魔石と似ているけど込められている力が桁違いなの! すごい石なの!」
「これは精霊王さまに謀反を企てた鉄精霊のなれの果て、どうせならと持ち帰ったところを精霊王であるツムギさまがマモル殿に献上したいと申されましてお届けに上がりました」
「謀反ですか?」
「はい、鉄精霊はドワーフたちとの契約に不備があったと進言し、詳しい話を火の精霊に聞きまして……どうやら長年ドワーフたちに打ち付け続けられたことに不満があったようです」
確かに鉄側からしたら長年打ち続けられているのも事実だなと思うマモル。エルエルが食べ過ぎていなければツッコミを入れるぐらいはしそうだが、横になりながら大きな欠伸をするだけで興味もないご様子。
「マモルは嬉しい? 持って来たけど嬉しい?」
どうやら褒めてもらいたいのか顔をふりふりしながら下から見つめてくる精霊王のツムギに、マモルは「嬉しいですよ」と口にしながらその頭を優しく撫でる。パッと笑顔が咲き、その横ではヒマワリも咲き誇り、悔しそうな表情を浮かべる本体の羊メイド。
「鉄の精霊石は魔力を流せば好きな形と大きさに変えることができるメェ。ただ存在自体が魔力に由来するので魔力がなくなれば消滅するのメェ」
「精霊は魔力を自然現象として使う存在ですから……」
「精霊石の魔力が尽きるか、容量を超える魔力を注いでも消滅するメエ」
「過去には水の精霊石を巡って争いが起き、海を割ったなどという伝承も残っております」
「ナイフやソードとして使うと便利なのメェ。魔力を流せば刃こぼれも新品のように復活するのメェ」
ライバル視でもしているのか互いに言葉を重ねその度に少しずつ圧でも与えるようにマモルに近づく二人の大精霊。そこへ天使長と分体精霊の羊メイドが料理を持って現れる。
「試作の刺身です。醤油と呼ばれるタレをつけ御試食して下さい。こちらのワサビは辛いので少量をご使用ください」
「鑑定で安全な魚を料理したのメェ。大精霊さまに食べてほしいのメェ」
手乗りサイズなこともあり可愛らしさが多少なりプラス値になっている羊メイドからのお願いに精霊王のツムギはエッヘンと胸を張り口を開く。
「ツムギはお姉さん! お願いされたら頑張るのです!」
幼さ全開で羊メイドからの試食に試みようとフォークを手にし、醤油を付け刺身をひと切れ口に運ぶ。エルエルは首を振って断りマモルは慣れた手つきで少量のワサビを切り身の上に乗せ醤油を付け口へと運ぶ。
「美味しいですね。タイに似てあっさりしていますが甘みも感じます」
「うん! 仄かに甘いの! 美味しいの!」
キャッキャと喜ぶ精霊王のツムギとマモルの感想に天使長も視線と笑みがこぼれ、分体精霊も羊フェイスでドヤ顔を作る。
「明日はこれを漬けにして白米が食べたいかな」
「でしたらお味噌汁も貝やワカメを使ったものにしましょう」
「朝から海鮮丼と贅沢なお味噌汁。明日の朝が楽しみです」
「お味噌汁は知っているのです! 茶色いスープなのです!」
手を上げて先日食べたお味噌汁を説明する幼女に皆が微笑みを浮かべ、和やかな時間が過ぎて行く。皆でワイワイと刺身の試食を続けているうちにツムギは電池が切れたように眠りにつき、それを大事そうに抱える羊メイド。後ろではピンと姿勢を正すヒマワリ執事。使っていない寝室を精霊たちに貸し、マモルもベッドへと向かう。
「確か魔力をゆっくりと通して……」
精霊王から譲り受けた精霊石を手に魔力を通すとシルバーだった石は形を変え、使い慣れている万能包丁の形になる。流石にグリップ等も鉄でできておりひんやりとした手触りだが、これはこれで使い道があるなと様々な形へ魔力を通しながら試行錯誤するのであった。
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