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旅のお供は変わり者~種族を越えて囲むテーブル~  作者: 彩
第四章 ラミアとケットシーの村
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ケットシーたちの料理と生食について


 精霊を前に静まり返る海岸であったがエルエルがふわりと浮き上がり羊メイドの前に立つと眉を吊り上げる。


「分体で来たことを呪うのねぇ!」


「分体であってもサイズが小さいだけで精霊としての力はあるのメェ!」


 ぬいぐるみ状態のエルエルの短いストレートパンチを更に小さな羊メイドが受け、空中で蹴り返しとエルエルの腰にクリーンヒットして苦悶の表情を浮かべるが、エルエルもただでは蹴りを受けておらず頭上から降り注ぐ光球を頭に食らい砂浜に落下する。


「くっ! 全然痛くないのねぇ!」


「こちらだって同じこと! メェはこれからやってやるのメェ!」


 腰を抑え宙に浮くエルエルに対して立ち上がり腰を落とし寝技にでも持ち込もうとしているのか手をニギニギと動かす羊メイド。


 まわりのものたちはぬいぐるみ姿だが天使であるエルエルと、精霊だとわかる不思議な姿で浮遊する羊メイドの急な戦いに困惑していたがマモルが焼き魚を綺麗に食べ終わり口を開く。


「それ以上するのなら料理は教えませんし、エルエルの好きなサバの味噌煮だって作りません! せっかくの魚介類を前に争うなど愚の骨頂です!」


 腕組みをして二人に言い放つマモル。素早く行動を起こしたのは羊メイドでマモルの前に急降下すると頭を下げ謝罪し、エルエルもふわふわと降下すると言い訳を口にする。


「いまのはふざけ合っていただけなのねぇ。羊頭もそうなのねぇ」


「ふざけていたのはお前の頭の中ですメェ。私はマモル殿から教わる身でありますメェ。反省していないのならあっちで砂でも食べるメェ」


「ぐぬぬぬ、ああ言えばこう言う態度とは先輩であるエルエルさまがわからせ……るのはなしにしても、いつかぎゃふんといわせるのねぇ」


「ぎゃふん」


「ムキィィィィィィ!!!」


 羊メイドの方が冷静であり精神的にも若干だが上であるのか、いいように転がされるエルエル。マモルはそれを見て吹き出しそうになるが、堪えて次々に運ばれてくる貝を蒸し焼きにしたものやイカを魚醤に付け焼いたものや、香草と煮た魚介の鍋などに目を奪われる。


「どれも近くで捕れた新鮮な魚介類だ!」


「好きなだけ食べてくれ!」


「ありがとうございます!」


 料理を届けに来た魚人たちにお礼をいうとイカ焼きに噛り付く表情を蕩けさせ、ぎゃふんといっていた羊メイドも貝を串でほじり口にする。エルエルも怒りの表情で金目鯛のような真っ赤な魚の煮付けをフォークで口にすると美味しさで表情が蕩け、白米が欲しくなったのかマモルへアイコンタクトを送る。


「ん? ああ、すぐに切り分けるよ」


 アイコンタクトは失敗に終わるがイカ焼きが目の前に置かれたエルエルはそれを口に運び魚醤が塗られたイカ焼きを口に入れ香ばしさと弾力に独特の甘みを楽しむ。


「あむあむ……美味しいのねぇ」


「だろ。後で分けて貰えるか交渉しないとだな。イカリングやイカ飯とかも食べたいし、魚を生で食べる文化とかはあるのかな?」


 ポロリと漏らした言葉に隣で焼き魚を食べていたラミアのミランダは驚きのあまり目を丸め、ケットシーのミッケルも口を開く。


「にゃにゃにゃ、生で食べたらお腹を虫に食い破られるのにゃ! 生で食べてはダメにゃのにゃ!」


「火の入りがいいように内臓を抜き取ってから串焼きにしているのですにゃ」


 ミケーラも話に加わり生食の危険を伝え、少しだけ残念そうな表情を浮かべながらイカそうめんを思い出すマモル。


「魚の内臓が危険なのは知っているけど……カワハギやアンコウは肝が美味しいのになぁ……」


 前世で食べた肝料理を思い出しながら貝やエビに魚の切り身が入ったスープを口にする。芳醇な旨味のあるスープは少し辛めに味付けされ癖のある香草が添えられていることもあってかトムヤムクンが頭に浮かび、再現してもいいかもと指輪型のアイテムボックスを起動して材料があるか確認する。


「マモルは魚の生で食べたことがあるのですメェ?」


 急に話が戻りミニサイズの羊メイドからの質問にマモルはどう答えたものかとスープの器を置き、代わりにエルエルが口を開く。


「ふっ、我はあるのねぇ。マグロという赤い身の魚の切り身に醤油を付けて食べるのねぇ。他にもサーモンと呼ばれる脂の乗った切り身も美味かったのねぇ。もっといえば、寿司という料理は魚を生で食べる最高峰なのねぇ。マモルでもまだ上手く作れないと嘆いていたのねぇ」


 ドヤ顔で刺身と寿司を語るエルエルにケットシーたちは顔を引きつらせ、魚人や人魚も驚きの表情を浮かべる。


「それは気になりますメェ。今度、ご馳走して貰えますメェ?」


 小さい羊メイドからの圧力のある声にマモルは無言で頷き、更に驚きの表情を浮かべるケットシーたち。


「えっと、氷系の魔法が使えれば寄生虫は殺せると思うので……鑑定魔法とか使えば安全な魚かどうか見分けられますし……」


 気まずい空気のなか生食の安全性を皆に伝えるマモルであった。





 お読み頂きありがとうございます。

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