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旅のお供は変わり者~種族を越えて囲むテーブル~  作者: 彩
第四章 ラミアとケットシーの村
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パンケーキと優しい英雄

 ケットシーの子供たちは長い列を作りマモルが必死にパンケーキを焼きラミアのミランダが果実を剥きカットする。エルエルとミッケルはパンケーキを食べすぐに立ち直ったのだがケットシーの子供たちが甘い匂いに誘われ涎を垂らし、マモルが量産を決意すると二人は必死になってメレンゲを作るためホイッパーを全力で回している。


「う、腕がもげそうなのねぇ」


「これは確かにしんどいのにゃ……」


 メレンゲ作りに必要なのは卵白を撹拌する腕力と泡立ちやすいよう砂糖を複数回に分けて入れる事である。基本は腕力を使い混ぜ続けることであり、その姿すらもケットシーの子供たちからしたら楽しいイベントになっている。


「ミッケルねーちゃんがんばれ!」


「天使さんも負けるなー」


「ヘイヘイスピードが落ちているぜー」


「持久戦に持ち込むな! 一気に決めろー」


 多少変な応援が入っているが額に汗して卵白を撹拌する二人。次のホットケーキが焼き上がりカットされた果実と蜂蜜を乗せ提供すると何度も頭を下げて受け取るケットシーの母。子供は目を輝かせお礼を口にして嬉しさのあまり走り出す。


「安請け合いは今後しないのねぇ……」


「お金にならないとわかっていると疲れが増すのにゃ……」


 一口サイズであっても甘味は貴重なのかケットシーの子供たちを皆笑顔に変え、ちゃっかり口に入れた主婦たちも警戒心が解かれたのか笑顔を浮かべている。男たちはケットシーの長老を連れ戻ってくると祭の開催を宣言して何やら準備を進め、魚人たちは多くの魚介類を用意し、人魚たちも目を輝かせ鼻をスンスンしている。


「もしかしなくても人魚の子供たちに振舞うのですか?」


 果実を切る手を止めたミランダからの質問に笑顔で頷くマモル。絶望という表情を上手く再現するエルエルとミッケル。歓声を上げる人魚の主婦たち。更にカオスな状況なのはケットシーの男性たちが海鮮を焼くために用意した石を積み上げる竈と、その魚を焼くために魚を下ろし血生臭い香りも漂いはじめたのである。


 甘い香りに混ざる魚介類の血生臭い香りにメレンゲを作るエルエルとミッケルは腕への耐久力低下に伴う疲労と心へ疲労が重なり、今作っている料理は血生臭いものであると混乱しはじめる。


「生ごみを作っているのねぇ?」


「血の入った甘い果実が……にゃ?」


 腕だけは高速回転を続ける二人が現実逃避をはじめたことで不安を感じたマモルは二人に声を掛ける。


「エルエルとミッケルさんは少し休んで下さい。代わりに手伝いたいひとはいませんか?」


 まわりで見学する子供とその親から有志を募り多くの手が上がったのを確認すると主婦二人にお願いをして解放されるエルエルとミッケル。


「ふ、不思議なのにゃ。手が、手が勝手に動くのにゃ」


「本当なのねぇ……パンパンの腕が勝手に動くのねぇ」


 開放されてなおメレンゲを作るために撹拌していた動作を続ける二人。もちろんスピードは落ちているのだが勝手に動く腕に困惑していたが、ケットシーの主婦から上部をカットして飲みやすくしたココナッツを渡されるとその手は自然と動くのを止め、疲れた体に自然の甘さに癒されている。


「ストローの代わりに草の茎を使うのですね」


「ここいらじゃその辺に生えているのにゃ。ココナッツを飲むのに便利にゃのにゃ」


 硬い皮の中には繊維質の皮があり、更にその中にあるココナッツジュース。ケットシーが人魚たちとの交流で手に入れた魔物の牙をナイフに加工して使っている。これらのナイフも販売しラミアには受けが良いのだが、ドワーフたちは自分たちの鉄製品に誇りがあるのか買うものはいない。


「マモルさまもどうぞ!」


「この辺りではありふれたものですが美味しいですにゃ」


 緊張気味にココナッツジュースを渡して来たのはケットシーの女性。まだ幼いがラミアや人魚でも魚人でもなく、ケモミミがない存在を前に興味が勝ったのかまじまじとマモルを見つめる。


「は、初めてエルフさまを見ましたにゃ」


「自分はエルフではないですよ。普通人族という人種なのですが……」


 頬を染めながらエルフだと勘違いするケットシーの女性に優しく声を掛け訂正すると、やや赤かった顔が青く染まりその場で何度も謝罪を口にする。


「ももも、申し訳にゃりませんにゃ!」


 ワイバーンを討伐した人への無礼だと緊張や興味よりも恐怖が勝った女性は数度頭を下げると助けてという視線を横で作業するラミアのミランダに向ける。


「安心しなよ。マモルはそのぐらいじゃ怒りはしないさ」


「私の村では精霊王さまを連れて来てかき氷なる美味な甘味を作って下さった方ですから」


「そうにゃ。こうして子供たちに美味しい料理を振舞ってくれるぐらい優しいのにゃ」


 若干の自慢が入れるミランダと笑顔を浮かべ隣でパンケーキを量産するミケーラ。その言葉とマモルの表情が変わらず優しい笑みを浮かべ主婦ケットシーにパンケーキを手渡す姿にホッと胸を撫で下ろす。


「そろそろ下拵えも終わるぞ!」


「こっちは火力も十分だ!」


「ワイバーンを討伐した勇者への祭りを始めるぞ!」


 男たちの掛け声に一気に盛り上がりを見せる浜辺。串に刺された魚が一斉に焼かれはじめると大量の煙が砂浜に上がり、すぐに香ばしい匂いに包まれるのであった。



 お読み頂きありがとうございます。

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