↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
旅のお供は変わり者~種族を越えて囲むテーブル~  作者: 彩
第四章 ラミアとケットシーの村
65/118

海岸へ



「すぐに知らせてくるわ!」


「にゃーたちも行くのにゃ!」


 長い下り坂を下りた先には岩礁地帯があり多くの人魚が寛ぐ姿が見え、ケットシーの子供たちは初めて見るぬいぐるみ姿のエルエルに興味があるのかふわふわと浮く姿を見つめていたが、ミケーラとラミア二人からワイバーン討伐の知らせが伝えられると人魚と子供たちは急いで村へと報告へ走る。


「子供はみんな小さいのに……」


「だから溺れないよう目を離さずに見守るのです」


 残っている人魚の言葉に自身の胸をぺたぺたと触るミッケルとエルエル。まだ凹んでいるのか俯きながら足を進め、砂浜の先に見える壁がない休憩所へと辿り着く。


「風が心地よい場所ですね」


 海からの風が吹き抜け頬を撫でる風に心地よさを感じ少しでも沈んだ二人の機嫌が戻ればと口にするが、纏った空気はどんよりしたもので何かしらご機嫌を取るために指輪型のアイテムボックスを起動させる。


「二人とも甘いものが好きだからアラクネの蜜を使ったパンケーキでも焼けば……ここで火を使ったり料理をしたりしても大丈夫ですか?」


「それぐらいは大丈夫だにゃ。ただ、村に走った子供たちがそろそろ戻ってくるのにゃ」


「なら子供たちのものを作らないとですね」


「いやいや、きっと大人もいっぱいくるのにゃ! マモルさまに大勢でたかったら悪いのにゃ!」


「その時は皆さんも手伝って下さいね」


「にゃ、それぐらいするのにゃが……」


 ミケーラが両手を伸ばし手を振り振りする姿に笑いそうになるが、グッと堪えて必要な食材や道具を取り出す。この休憩所にはテーブルや椅子もあり作業もしやすく、ボウルに卵の白身と黄身を分け、卵黄には少量の牛乳を入れよく混ぜ、ホイッパーを手に卵白を拡販する。


「面白い形の道具なのにゃ」


「あれなら簡単に混ぜられそうね」


 初めて見るホイッパーの形に興味があるのか視線もグルグルと回し、マモルの息が切れ始めると砂糖を少し入れてはまた回しと繰り返しメレンゲを完成させる。


「はぁはぁ、これで機嫌が戻らなかったら諦めるとして、向こうからいっぱい人が来ますね」


にゃーにゃーと遠くから聞こえる声に視線を向ける一同。凹んでいる二人は砂浜で体育座りをしているが、流石ににゃーにゃ―と聞こえ始めると視線を向け立ち上がりマモルたちがいる休憩所へと向かう。


「最後にメレンゲに卵黄と溶かしたバターと香り付けのバニラエッセンスを入れて、小麦粉を入れながら切るように混ぜる」


焚火台を取り出し薪に火を入れる頃には多くのケットシーたちが集まりミケーラが大声でワイバーン討伐は真実であると宣言し、多くのケットシーたちはお祭りでも始まったかのような盛り上がりを見せる。


「ワイバーンが討伐されれば俺たちが作る塩がもっと売れるにゃ!」


「魚醤も売れるかもしれんにゃ!」


「まだ子供なのに凄く強いのにゃ……」


 焚火台にセットしたフライパンに油を薄く塗っているマモルへ視線が集まる中、作った生地をお玉に入れそっとフライパンの上に垂らすし蓋をする。弱火を維持しながら皆が喜んでいる姿を見つめていると水面からいくつもの水柱が上がり多くの人魚や魚人の姿が現れ、ラミアのミランダが説明に向かいこちらもお祭りムードへと変わる。


「空の支配者が打たれたのなら、これからはもっと多くの人々が海にやって来るわね!」


「もしかしたら船の時代がまた来るかもしれんぞ!」


「船の時代はいいが、また幽霊船が増えても困るが……それよりも今はワイバーン討伐を祝うぞ!」


「そうならないように危険な場所を教えないとね!」


「甘い香りがするわ! ラミアの果実と取引できるのかしら!」


 人魚の女性たちはミランダのまわりに集まり持ってきているだろう果実やドライフルーツと物々交換できないか交渉を始め、魚人たちは皆で海へと潜りワイバーン討伐を祝うために魚介類を取りに動き出す。


「我々もワイバーン討伐を祝うための準備をするのにゃ! 長老の許可を取って来るのにゃ!」


 ミケーラの叫びにわらわらと動き出すケットシーたち。これからこの砂浜でワイバーン討伐を祝うための祭りが開催される事となった。が、マモルはマイペースにホットケーキの様子を窺いフライ返しで丁寧に返すときつね色に焼き上がったそれが姿を現す。本来であればベイキングパウダーなどを入れ膨らませるのだがメレンゲだけでも十分に膨らみ、フワフワに仕上がったそれを上から覗き込むエルエル。


「これはバターとメイプルシロップを掛けたら絶対に美味しいのねぇ」


「アラクネさんたちから貰った蜜をかけようかと思ったがいいのか?」


「それが良いのね! 絶対に美味しい奴なのね!」


「にゃ~も食べたいのにゃ~」


 甘えたような声を出すミッケルも隣に現れ、二人のご機嫌が取れそうだなと胸を撫で下ろすマモルなのであった。



 お読み頂きありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。