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旅のお供は変わり者~種族を越えて囲むテーブル~  作者: 彩
第四章 ラミアとケットシーの村
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精霊王とラミアたちとの別れ


 ラミアやアラクネたちからの感謝を受け一夜が明け、早朝から亜空間にあるキッチンでは天使長と羊メイドとの睨み合いというイベントもあったが、料理に興味がある羊メイドが折れる形での幕引きがあり朝食を済ませる一同。


「天使さんの料理はとても美味しかったの」


 口のまわりにフレンチトーストの欠片を付け自然と微笑みを浮かべる精霊王のツムギ。天使長は優しくおしぼりを手に口元を拭き、それを目に入れぐったりと床の上に横たわる音の大精霊である羊メイド。エルエルはぬいぐるみ姿でありながらも器用に残りの野菜スープ食べ終えたのである。


「あのクソ天使めっ! 精霊王さまの口を盗むとは次あったらどうしてくれようか!」


 若干にニュアンスがおかしいことを口にする羊メイド。フレンチトーストの欠片を拭き取ったというのが正しい表現なのだが、口を盗むと声を漏らしながら拳を固めている。


「メイド長はすべてにおいて素早いのねぇ。全力で逃げても一分と逃げられないのねぇ。初動を抑えなければ先取できないのねぇ」


 精霊王のツムギの口元をメイドとして拭き取りたかったのかエルエルからの助言にギラリと瞳を刃のように尖らせ悲鳴を上げそうになるが、この場が隔離された亜空間ではなくラミアたちが住む村の中央であることに怒りを抑えるように深呼吸を繰り返す。


「本当にお気を付けて良い旅を……」


「我らアラクネたちは旅の安全をお祈りしております」


 ラミアの長老たちとアラクネのサボテンたちからの別れの言葉を受けながらも、震えるエルエルを掴み上げ頭を下げるマモル。


「こちらこそ、いろいろと良くしてくださりありがとうございます。多くの果実や蜜に珍しい香水までいただいて」


「いえいえ、ワイバーンという共通の敵の討伐に対する感謝です。それに新たな食の可能性まで見せていただき感謝ですぞ!」


 スパイダーマンゴーのかき氷の味を思い出したのかテンションを上げ口調に力がのる長老。ラミアたちも嬉しそうにその身を揺らし、子供たちからはまた食べたいというリクエストの声がちらほら聞こえる。ラミアたちのなかにも氷の魔法が使えるものがいるらしく再現も可能で、来年からは村を上げてのかき氷祭りが開催される事になっている。


「私たちも楽しかったの! マモルにはまた遊んでほしいの!」


「とても有益な時間でしたメェ。まだ他の料理を教わりたいですが精霊王さまにも仕事がありますので戻りますメェ。料理に関してわからないことがあったら聞きに行っても良いですメェ?」


 精霊王のツムギと音の大精霊である羊メイドからの別れの言葉に首を縦に振るマモル。羊メイドに抱っこされ元気に手を振り空へと飛び上がり一瞬にして飛び去るふたり。まわりのラミアやアラクネたちは手を合わせ祈りながらその姿を見送る。


「これで静かになるのねぇ」


「寂しくもあるけどな……それでは行きましょうか」


 移動式屋台の傍にはラミアの村へ向かったときと同じ面子が揃っており、ラミアの商人であるマムミラとミランダ。ケットシーの双子のミケーラとミッケルがマモルたちを待っている。


「森を抜ければすぐに海のあるケットシーの村があるのにゃ」


「村に着いたらお魚いっぱいごちそうするにゃ」


 元気な双子と屋台を引くラミア二人に先導されラミアの村を発つマモルとエルエル。


 森の木々が分かれ道を作りその間をゆっくりと歩きながら進む。精霊王のツムギがいたときほどの緊張感はないのかトレントたちは針葉樹のように姿勢を正すことはないが、それでも森を割るように道を作る姿はファンタジー感があるなと思いながら足を進め、次第に森の香りに混じる海の匂いに期待を膨らませる。


「海で一番美味しいのは何なのねぇ?」


エルエルの言葉に顔を見合わせるケットシーの双子。


「一番とか人それぞれだろうけど、刺身ならマグロやハマチにサーモンかな。ホタテも好きだな」


「もう既に四種あげているのねぇ」


「エルエルはどうなんだよ……」


「エビフライにカキフライにホタテのバター焼き、魚と貝にトマトを入れたスープも美味しかったのねぇ。海鮮系はホワイトソースともよく合うからグラタンやクラムチャウダーにしても好きなのねぇ~」


 フワフワと浮かびながらご機嫌に料理名を口にするエルエル。基本的に精霊たちと同じで天使も食事をしないのだが、天界でマモルと共に切磋琢磨するうちに食事を取るようになり食事の楽しみを覚えた珍しい天使である。他にもマモルの親しい天使は料理を口にするようになり天使長に至っては毎朝、亜空間の家に現れ朝食の準備をするほどである。


「聞いたことのない料理名がいっぱいにゃ」


「カラアゲは魚でも作れるのにゃ?」


「クリスタルリザードのカラアゲも美味しかったけど、貝でカラアゲを作ってほしいね」


「油で揚げる料理はこれから流行りそう……油が取れる植物の種を先に買い漁った方が……」


 ケットシーの村に着くまで海の差しの話で盛り上がるのであった。



 お読み頂きありがとうございます。

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