黄金のタワー
村の入口では作業台を指輪型のアイテムボックス方取り出しスパイダーマンゴーの皮を剥き細かくカットするマモル。突如、料理を始めたことにざわつくラミアたちであったが、それ以上に精霊王のまわりで嬉しそうに踊る精霊たちの姿に大半は目を奪われている。
「カットしたマンゴーに砂糖とレモン汁を入れて煮詰めてソースを作って、エルエルはここに氷をお願い」
「任せるのねぇ」
キャンプ用品で使われる焚火台を用意すると薪に火をつけ鍋をセットしてマンゴーを煮込み始める。エルエルは集中し力ある言葉を開放するとバスケットボールほどの氷の塊が五つ空に浮かびドヤ顔を浮かべる。
「それを雪ぐらいに細かくして、半分はこのボウルにお願い」
マモルからのリクエストに応えるべく宙に浮いている氷の塊に風魔法を使い一瞬にしてパウダースノーへと変わり、半分をボウルへと移す。
「エルエルはこのガラスの器に残りを高く積んでね。煮込んだソースをこっちで冷やして、見た目が鮮やかになるようにフルーツを盛り付けないとな」
指輪型のアイテムボックスから色取り取りの果実を取り出すと皮を剥き一口大にカットする。エルエルがパウダースノーを塔のように高く積み、マンゴーはもちろん、イチゴやキウイにブドウやパイン、丸くくり抜いたスイカやメロンなどをバランスよく盛り付ける。
「凄いのができてるの!!」
精霊王のツムギが嬉しそうに叫ぶとラミアたちの視線が一斉にマモルとそびえるフルーツのタワーへと向き、最後に冷やしたスパイダーマンゴーのソースを上からゆっくりと注ぐと黄金のフルーツかき氷タワーが輝き完成する。
「果実に彩られた黄金の塔だわ!」
「あのような料理が存在するのか!!」
「精霊さまも喜んでおられるぞ!」
精霊王のツムギはマモル目がけて走り出しまわりの精霊たちもスピードを上げ、かき氷のタワーをエルエルに任せ自身は衝撃に備えて作業台から距離を取る。が、ツムギは標的は初めからマモルではなくかき氷だったのか作業台へと向かい、落ちないスピードを心配したが羊のメイドが手を払う仕草をするとツムギと精霊たちの速度が落ち、ゆっくりと静止する。
「取り分けますメェ」
何事もなかったかのようにメイド作業をする羊メイド。二本のスプーンを使いてっぺんから切り崩しかき氷を分け皿へと移す姿は優雅という単語がぴったりで、その様子を見つめるラミアたちの視線を釘付けにする。
「ありがと!」
かき氷を作ったマモルと、目の前にかき氷を取り分けた羊メイドにお礼を口にするとスプーンを構えてひと匙口に入れる。パッと笑顔が咲き乱れたことで胸を撫で下ろすマモル。羊メイドもその顔を蕩けさせ、ふわりと浮かんでいるエルエルも積み上がっているかき氷を前にスプーンを使い口に運び笑顔を浮かべる。
「これおいしい! 甘いし冷たいしおいしい! すごくおいしい!」
「前に作ったときはイチゴと練乳ベースだったけど色々な果実を入れても美味しいのねぇ。食べられない天使長がきっと悔しがるのねぇ」
「では、私もひと口……これは素晴らしいですメェ。甘いだけではなく酸味もあるソースが冷たい氷と合わさり、シャリシャリとした歯ごたえも心地良いですメェ」
三人の好意的な印象を受け満足そうな表情を浮かべたマモルは次の料理に取り掛かる。指輪型のアイテムボックスからクリスタルリザードのモモ肉を取り出すと一口サイズに切り分け塩コショウに醤油とショウガとニンニクのすりおろしを入れよく混ぜ、更に卵白を入れ揉み込む。
「山のようなかき氷が消えたのねぇ……」
精霊たちもわらわらと集まりかき氷タワーを食べ始め数十秒と掛からずに消えうせわなわなと怒りを溜めるエルエル。精霊は本来食事をすることはなく魔力を体に取り入れ成長する。そんな存在が食事をするのは精霊王へ対する忠誠心からくるもので、精霊王が食し笑顔を浮かべたことで自分たちも同じことをして同じ気持ちになりたいと願った結果である。
「もうなくなってしまったのです……」
取り分けてもらったかき氷を完食したツムギが悲しそうな表情を浮かべ、羊のメイドは自分に取り分けたそれをツムギの空いた皿と素早く取り換える。すると、すぐに笑顔を取り戻し自身も笑顔を浮かべる。これもまた忠誠心や愛なのだろう。
「揚げるにはまだ寝かせたいから、先に雲を作るかな」
独り言のような小さな声で詠唱を開始するとラミアや妖精がざわめきマモルから発せられる魔力を前に長老が手を合わせる。それは祈りの姿勢へと変わりラミアの側近たちも同じように手を合わせはじめ……
「マモルも目立ちたかったのねぇ……」
拝まれるマモルを前にエルエルが誤解しながら最後のスパイダーマンゴーの欠片を口に入れ、複数の半透明なシールドが宙に複数枚設置され、その中で紅蓮の炎が渦を巻く。
「あとは火傷しないように気を付けながら風魔法を使って……」
周囲からの視線を集めながら器用に魔法を使うマモルを前に精霊王のツムギはキラキラした瞳で見つめるのであった。
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