精霊王さまが認めたスパイダーマンゴー
ラミアの長老から長い感謝の言葉と精霊の来訪に対する喜びを受ける一同。精霊王のツムギがその間にもお腹が減ったのかマモルの手を引き、それに嫉妬した羊メイドから睨みつけられ、更に対抗したエルエルが方眉を上げ下から睨み返し、まわりではファンタジーらしくキノコや雲や空を泳ぐ魚の精霊たちが戯れ、住人であるラミアたちはいつもとは違う景色に落ち着かない様子で見つめ、一番冷静でありつつも空気を読み頼まれたら断れないマモルは精霊王からのリクエストに応えスパイダーマンゴーの皮を剥きカットするとツムギと長老に配り始める。
ある意味カオスな空間が出来上がるのだがスパイダーマンゴーを精霊王が口にしてその味に喜び笑顔になるとラミアたちは一斉に歓声を上げ、長老も涙しながら喜び、羊メイドにカットしたそれの乗る皿を渡すと目を輝かせ次のあ~んのベストタイミングを計る。
「あむあむ……美味しいの」
「このマンゴーは味が濃くて美味しいのねぇ」
エルエルもその味に感動しているのか味を確かめるように目を閉じゆっくりと咀嚼する。
「我らラミアの村の果実を精霊王さま方が喜んで下さるとは……長生きした甲斐があるというものです……ワイバーンが空を占拠し森以外で暮らせなかった我らも、これからは他の地へ出向き精霊王さまお墨付きの果実を売り歩けるのです」
長老はこれを機に精霊王印の果実を売りビジネスチャンスを掴もうと脳内をフル回転させている。
「えっと、精霊王さまはこのスパイダーマンゴーが大量に欲しいらしくて、自分も買えるようならお願いします。それなりに支払える金貨もありますので購入させていただけませんか?」
マモルからの提案に目が金貨な長老は二つ返事に許可を出し若いラミアにスパイダーマンゴーなどの果実を取りに行かせ、あ~んされる度に可愛く飛び跳ね喜ぶ精霊王の姿に羊メイドはもちろん長老や老いたラミアたちは孫可愛がりな瞳を向ける。
種族が違えど老人が子供を可愛く思うのは同じなのだろう。しかも自然の中に生きるラミアからしたら絶対的な敬意を持ち接する精霊、そのなかでも王が喜ぶ姿に感動を覚えるのは仕方のないことだろう。
「格安でお譲りします! ですが、その、精霊王さまが喜んで食しているという事実だけは販売の歌い文句にさせていただけたらと……」
「これだけ喜んでいるのメェ。構わないと思うのメェ。ただ、悪い品質のものを売り精霊王さまの舌の評判を落としたら覚悟するのメェ。この森からすべての精霊がいなくなるのメェ」
あ~んの手を止めずに長老たちへ警告し、頭を縦に振るラミアの長老とその取り巻きたち。
「これだけ味がいいのですからそこは心配しないでも大丈夫じゃないですか?」
「いえ、過去にも同じように水の精霊がポーションの歌い文句になったことがありましたが、そのブランド名に鼻だけ高くし品質が落ち……自然が豊かだった緑の大地から精霊が消え、水が消え、砂漠と干からびた山が残りましたから」
マモルの疑問に聞きなれない高い声が答え、声の主を聞きながら探しているとエルエルが頭を軽くペチペチと叩きその存在の場所を知らせる。
「私の上司だった水の大精霊さまが行ったことです」
トビウオのような大きな胸鰭を持つ魚の姿をした水の精霊が目の前に降り、エルエルが指摘するように口をパクパクとさせ言葉を話している。
「もう昔の話だメェ……品質をこの水準で守れるのであれば許可するメェ……」
「は、はい、徹底させます!」
羊メイドと長老との契約が結ばれ、精霊王のツムギがマモルの前に現れた水の精霊に興味を示し手を翳し声を掛ける。
「おいで」
その一言で水の精霊がマモルの前から消えツムギの掌に移動するトビウオ姿の水の精霊。他にもキノコや雲の形の精霊などが集まり声というよりも演奏のような音が響きツムギは嬉しそうに耳を傾け、ファンタジーな光景にマモルも自然と表情を溶かしているとドアップの羊が顔が目の前に現れ悲鳴を上げ後ろに倒れそうになるのを何とか堪える。
「そろそろ用意してもらいたいのメェ」
「用意ですか?」
頭の上でペチペチと叩き口を開くエルエル。
「女神さまが認めた塔、肉汁が溢れる料理、甘い雲なのねぇ」
「精霊王さまが認めても、私が納得しなければそこの天使崩れを罰するのメェ」
「ん? それって自分に何のメリットもないのでは?」
「そ、そんなことないのねぇ! 美味しいは嬉しいのねぇ! 精霊王さまだって食べられなかったら泣いてしまうのねぇ!」
急に話題にでた精霊王のツムギからのキョトンとした無垢な視線にマモルは指輪型のアイテムボックスを起動するのであった。
お読み頂きありがとうございます。




