おにぎりとゾンビ
翌朝、目が覚めたマモルが目を擦りながら着替えを済ませ階段を降りはじめと嫌な臭いに気が付き昨晩のことを思い出しながら足を進め、視界に広がるカオスに顔を引きつらせる。
「天界の闇を見ているようだな……」
そう声を漏らした視線の先には創造の女神カルアミールが酒瓶を抱いて廊下で寝息を立て、天使長エルナリーゼがソファーの上で正座をしながらからのカップを手に眠り、羊のメイドこと音の大精霊スタイが立ったまま寝息を立て、更に見覚えのある天使が二人追加され酒盛りの途中で寝落ちしたのかテーブルに突っ伏して寝息を立てている。
「インファラ師匠とジャスティル師匠も降臨して寝落ちとか……まずは空気の入れ替えかな……はぁ……」
ため息を吐きながら窓を開け風魔法を使い部屋の空気を入れ替え、落ちている酒瓶を拾いながら指輪型のアイテムボックスを起動して収納する。
「どうせ二日酔いだろうから朝食はスープでも作ろうかな」
キッチンに向かい慣れた手つきで湯を沸かしワカメの塩抜きをしてサッと湯で、カットした長ネギを鍋に入れ豆腐をカットする。長ネギに火が入ったところで豆腐を入れ顆粒出汁と味噌を入れ味見をし、最後にワカメを入れて味噌汁が完成する。
「これなら二日酔いでも食べられるかな。そういえば昨日はソファーで寝ていた精霊王さまがいないけど、エルエルと一緒に二階で寝ているのか?」
昨晩のことを思い出しながら追加で朝食の準備を進める。
「エルエルと精霊王さまは二日酔いはしていないだろうから普通に食事するよな……」
指輪型のアイテムボックスを起動して前に炊いたご飯を取り出すとまだ湯気を上げており時間停止のアイテムボックスの便利さに感謝しつつ、同じように焼いた魚を取り出して身をほぐしおにぎりを握る。
「鮭に似た味の魚だから精霊王さまも喜んでくれるかな。エルエルはマヨ好きだから鮭マヨのおにぎりにして、海苔の佃煮もあったしマヨを入れて……ん?」
急に後ろから上着を引っ張られそれを確認すべく後ろへ振り向くと精霊王のツムギがにっこりとしながらマモルの上着の裾を引いる。
「精霊王さま、おはようございます」
「うん! おはよう! 美味しそうな匂い!」
元気な挨拶の赤毛の幼女に自然とマモルも笑顔を浮かべる。
「いまおにぎりを作っていますが一緒に作りますか?」
「おにぎり?」
「炊いたお米をこうやって具を入れて手で握って形を作ります。食べるときは海苔を巻いて手で持ちガブッとできます」
握ったおにぎりを持ち食べる仕草するとツムギも大きく口を開け、ふたりで一緒に笑い合う。
「おにぎりする! おにぎりする!」
「なら手を洗いましょうね。手洗いの仕方は一緒にやるので真似してくださいね」
「うん! 手洗い! おにぎり!」
マモルのやり方を確りと見つめ一緒に手を洗いおにぎりを握るふたり。最初のうちは力加減ができずおにぎりが崩れてしまうが、前世でテレビで子供が作っていたお椀に米を入れ具を入れ、更に米をかぶせお椀で蓋をして優しく回すように振るやり方を思い出し作って見せると目を丸める精霊王のツムギ。
「クルクルクルクル~」
マモルの声に合わせてツムギが小さな手でお椀を抑えて優しく回転させ、慎重に片方のお椀を取ると丸いおにぎりが完成しておりパッと笑顔を咲かせ、階段からその様子を窺っていたエルエルは朝食の内容を確認して大きな欠伸をすると二階へ二度寝に戻る。
「上手にできましたね」
「うん! マモルとおにぎり楽しい! スタイもおにぎり食べてくれるかな?」
「精霊王さまが一生懸命握ったおにぎりですから、きっと食べてくれると思いますよ」
「本当に?」
首を傾げながら不安そうな顔をするツムギ。
精霊は基本食事をする必要がなく、魔力を摂取してその体を成長させている。この星の空気中の魔力を体に接種し、自然現象として作り変え星へ還元する役割を持つ。水の精霊であるのなら水を作り自然へ返し、火の精霊なら炎を生み出し、風の精霊なら季節風を作り出す。様々な形で魔力を自然現象へと変えつつ、星の力へと循環させているのである。
「音の大精霊さまは精霊王さまのことが大好きだから食べてくれますよ。ほら、起きたようですよ」
リビングの方から足音が聞こえ二人で視線を向けると顔色が青い羊メイドの姿があり、いまにも吐きそうな表情に慌てて指輪型のアイテムボックスを起動してバケツを取り出すマモル。ツムギは自身が握ったおにぎりを食べてほしいのか片手を上げて口を開く。
「スタイのためにおにぎり作った! 食べて!」
ストレートな提案を受け真っ青だった顔色がいつもの白い羊色へと瞬時に戻り、これが音の精霊王なりの忠誠心なのかなと感心しながら見つめ、ぞろぞろとゾンビのように起き上がる神や天使たちの姿に若干の恐怖を覚えるマモルなのであった。
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