ドワーフの褒賞
二日酔いの神と天使に精霊を相手にし終え、ドワーフの城へと戻ると待ち構えていたマモルのお付きのメイドに頭を下げられ「失礼します」と一声発するとテーブルに備え付けてあるベルを鳴らす。 どうやらマモルが現れたらそのベルを鳴らすよう上から命令されていたのか、数秒後ノックの音が響き国王であるドドランダと宰相に多くの革袋を持つメイドたちが部屋に流れ込んでくる。
「すまぬ、昨晩は精霊炉の復活もあり宴会になってしまったが、今朝方いろいろと話し合い感謝はもちろんだが報酬のことを話し合っていたのだ」
「まずはソファーに掛けていただいてからにしてはどうでしょう」
「おお、すまない。楽にしてくれ」
ドドランダにいわれるようにソファーに腰を下ろすマモルとエルエル。精霊王のツムギもマモルの横に座り、音の大精霊である羊メイドはソファーに腰を下ろさずにツムギの横に立ち部屋にいるメイドや兵士に視線を走らせ不審なものがいないか確かめている。
「まずは金貨が百枚。これは我が国で使われているドワナプラ金貨だ。それと銀貨と銅貨が同様に百枚。屋台などで支払いやすくなるだろうと細かいものも用意した。
こちらがエルエル殿に支払うミスリルのインゴットとオリハルコンのインゴットになる。精霊炉で溶かし固めたばかりのものだ。
こちらは我が国の免税書と通行書。どちらも半永久的に使えるよう記されている。他の国でも身分証として使えよう。
次にクリスタルリザードの角の代金だがこちらの宝石類で支払わさせてくれ。金貨で払っても良かったのだがいまでも物々交換で支払う種族や村はあるからな。こちら方が便利だろう。
最後にこの短剣をマモル殿とエルエル殿に送らせてくれ」
褒賞を紹介するたびにメイドや兵士がテーブルに金貨やインゴットに書類を並べる。
「こちらの探検はミスリルを使い鞘をオリハルコンで仕上げた儀式用の短剣です。これはドワナプラ王国に伝わる友好の証であり、友好国に送られる我らの誇り……どうか、マモル殿、エルエル殿に受け取ってもらいたい」
差し出した短剣を持ち頭を下げる国王と宰相。それをソファーから降り頭を下げ受け取るふたり。
「昨日おられた方や精霊王さまにも何か送った方が良いか聞きそびれてな。どうだろうか?」
顔を上げた宰相からの提案にハイハイと元気に手を上げソファーから降りる精霊王のツムギ。
「昨日の甘い果実がまた食べたい!」
「スパイダーマンゴーですメェ。昨日は気に入ったのかそればかり食べておられましたメェ」
「うん! 甘くておいしかったの! 他の精霊達にも食べさせてあげたいの!」
仲間思いな発言に目を見開き驚き、潤む瞳の羊のメイド。
「マモルが教えてくれたの! みんなでワイワイ食べる方が、もっとおいしくなるの! エルエルにわけると、もっと甘くなるの!」
マモルが横にジト目を送ると同時に、同じ方角へ首を曲げるエルエル。
「それで回避したと思うなよ」
エルエルの頭を掴み顔を向けさせるマモル。そのやり取りをキャッキャと喜ぶツムギ。羊のメイドは「これだから天使は……」とため息交じりに呟き、ひとりのメイドがスパイダーマンゴーを取りに退出する。
「いや、あれは冗談なのねぇ。ツムギは可愛いからつい面白い方を選びたくなるのねぇ」
「面白い方って……」
ジト目を強めるマモルにエルエルは小さく「ごめん」と呟き、マモルは精霊王へ視線を向け、ツムギは首を傾ける。
「でもでも、一緒だからおいしかったよ? おいしかったよね?」
首を左右に傾けながら話す赤毛の幼女の姿に、エルエルをできるだけ近づけるのはやめようと心の中で誓いを立てるマモル。その意見と同様なのか羊メイドは目を細め身震いするエルエル。
「さて、最後にこの金貨についてなのだが、金貨としての価値は金貨を超えておるのだ」
マモルが最初に創造の女神カルアミールから持たされた金貨を屋台で使おうとしたが断られ、支払いを肩代わりした際に通貨として認めてもらおうと渡した金貨である。
「金とミスリルとオリハルコンが使われ、女神カルアミールさまだと思われる肖像画と裏面には祝福のルーンが刻まれております。おそらくですがこの硬貨自体が金を上回る価値があり、枚数もマモル殿が持っているだけではないかと……」
「そうなるとコレクションや芸術品、ミスリルやオリハルコンといった値段と価値になるのだが、それらの金属が溶け合い新たな金属に変化しておる。こうなるとミスリルとしての価値はオリハルコンに潰され、錬金術の新たな素材になる可能性があるぐらいなのだ。我らドワーフには苦手な分野なのだよ」
分野が違うのを悔しそうな表情を浮かべるドドランダ国王。宰相は平然とした顔をしているがその手をぎゅっと握り締める。
「でしたらその金貨は差し上げるので研究に使ってください。まだまだ金貨自体はありますし、先ほど頂いた報酬にも多くの使える金貨があるので困ることはないです。そうそう、忘れていたのですがデビルアイという大きな亀の甲羅があるのですがこれも買い取ってもらえると……」
この国の入口の川で討伐した巨大な亀の魔物を思い出し提案するマモル。急いで戻ってきた山盛りのスパイダーマンゴーを持つメイドがフリーズするドワーフたちに異変を感じるが、精霊王のツムギがメイドに駆け寄り跳ねて喜び、羊のメイドはその山盛りのスパイダーマンゴーを受け取るのであった。
お読み頂きありがとうございます。
これにて三章は終了です。数日開くかもしれませんが、次はラミアの里かケットシーの海辺の村予定です。




