説教とコロッケ
「だから精霊はこの星にある魔力を運ぶ血液のような存在で、天使はその魔力がちゃんと運ばれ循環しているかどうかを見守り障害があれば取り除く存在なのです。どちらが優秀、どちらが上ということではないのです!
そもそもドワーフたちの前で酒を飲みながら煽り合いをする方が間違っているのであって、天使や精霊のイメージダウンになるような言動を日ごろから控えるよう姿が見えない隠蔽や空気化のようなスキルを付与しているのですよ。それなのに堂々とドワーフたちの前で姿を現し殴り合い、まだ幼い精霊王を泣かせたのも問題です」
マモルたちが逃げるようにこのどこでも的なドアに繋がる亜空間に家にやってきた理由を説教を込め説明する創造の女神カルアミール。その説教を正座しながら真剣な表情で拝聴するふたり。エルエルはマモルに呼ばれ電子レンジで温めたイモの皮を熱さに耐えながら剝き、マモルは酒の肴を作っている。
「皮が剥けたらポテトマッシャーを使って潰してね。完ぺきに潰さずに食感が残る程度に潰して」
ゴブリンの国でいただいたキノコと玉ねぎにクリスタルリザードの肉を細かくカットして炒め軽く塩コショウで味を付け、エルエルは説教地獄に戻るのは嫌なのか真面目に手を動かしている。
「いいですか! 精霊王が定期的に幼く若返るのはあなたたち精霊が真面目に魔力を循環させなかった罰であり、他者への関心を持たせるために精霊たちの王の命を永遠のものとさせたのです。記憶のリセットと問われれば残酷かもしれませんが、リセットの度にその記憶は保管され必要があれば私が開示させることもできます。
そもそも、精霊王も悪いのです! 星の半分を災害で覆い笑い転げているなど、この星の維持に必要な魔力だって残り少なくなり……
はぁ……思い出すのはやめましょう。あら、こんなにも美味しい花酒が減っていませんが私からの酒が飲めないと?」
その言葉に急ぎグラスに入れられている花酒を一気に飲み干す天使長と羊メイド。完全なるパワハラでありアルハラである。
「小麦粉、卵液、パン粉の順番でつけて、熱した油で揚げれば完成です。基本的には火が入っているのでまわりが色付いたら揚げあがりです」
熱した油に入れながらエルエルに作業の指示を出し、マモルは千切りのキャベツとソースを用意すると次の料理に取り掛かる。
エビの殻を剥き背ワタを取り腹の筋を切り身を伸ばして塩コショウ。
「尻尾の真ん中の棘ような固い殻は油で揚げたときに破裂することがあるのでここだけ取り除いて、あとはコロッケと同じように小麦粉、卵液、パン粉を付けて揚げましょう」
揚げ上がったコロッケを皿に乗せるとアルハラが続いているテーブルへと料理を運ぶマモル。エルエルに運ぶよう指示をするといまにも泣きそうな顔で顔を横に振り続け、仕方なくエビフライを任せて移動する。
「やった! 可愛い我が子が料理を持ってきてくれた!」
説教とアルハラが停止し喜ぶ創造の女神カルアミールは器用に箸を使い自身の皿にコロッケを移動させ、天使長はホッと小さく息が漏れ、羊のメイドは正座しながらマモルへ助けてと目で訴える。
「説教はそのぐらいにして温かいうちに食べて下さいね。お酒以外にも紅茶やお茶にスパイダーマンゴーとオレンジを絞ってジュースにしましょうか」
適当に思い付いたアルコールから逃れられるだろう意見に二人は首を縦に振り、コロッケを大きな口で噛みつきあまりの熱さに転げまわるこの世界のトップ。
「何をやってるの!」
慌てて声を掛けながらも素早く移動してコップに水を入れ、転がりが収まり涙を浮かべる創造の女神カルアミール。コップを持たせると口に入れマモルの手を借り立ちあがる。
「ううう、火傷した~」
どっちが子供なのだろうと思いながら席へと戻らせ、その間にコロッケを口にする二人。
「サックリとした衣に包まれ玉ねぎの甘みと肉の脂を包み込むイモが美味しいです。このソースとよく合いますし、キャベツの千切りと交互に食べると口の名がリセットされ食べ飽きることがないですね」
「精霊は食事を必要としないがこの料理が素晴らしいのは理解できるメェ。複雑な味とサクサクの食感にキャベツの豊潤な甘みと歯切れの良さ! 精霊王さまにも食べさせたいメェ」
まだ寝息を立てる精霊王のツムギに視線を送り微笑みを浮かべる。
口内が冷えた創造の女神カルアミールは息を吹きかけ冷ましながらコロッケを口に入れ、次に登場したエビフライとスパイダーマンゴーとオレンジの果汁を絞り炭酸水で割ったジュースを届けるマモル。
次第に部屋の空気もいつものような緩いものへと変わりエルエルは揚げ物の手を止め、マモルに進められ取っておいたコロッケとエビフライを口に入れる。
「やっぱりエビフライが最強なのねぇ。苦労して剥いたゆで卵で作ったタルタルも美味しいのねぇ」
サクリとしながらも弾力のあるエビを口に入れ表情が自然と崩れるのを感じながら平和な時間へと変わったリビングを見つめるエルエルなのであった。
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