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精霊炉と天使長VS羊メイド


「精霊に大きさは関係ないのですね……」


 半透明な体に炎を上げていた精霊はサラマンダーという種で炎を司り、乗用車ほどのサイズであったが手乗りサイズにまで縮小し、精霊炉に入るとそこが自分の新しい新居だといわんばかりに大きな欠伸をして丸くなる。


「おおおお、これでまた精霊炉が使えるようになりますぞ!」


 遅れてやってきた国王と宰相が精霊炉の再稼働を見つめ涙しながら抱き合っているのだが、心が落ち着かないマモルは睨み合いを続ける天使長と羊メイドが視界から外し左手をナチュラルに繋ぎ笑みを浮かべている精霊王のツムギ。エルエルは天使長からのロックオンが外れたのをいいことに、心配そうに見守っているドワーフの職人たちへ小さな胸を張り自分が連れてきたことをアピールしている。


「ま、マモルさま、本当にこれで精霊炉が復活するのでしょうか?」


プルプルと心配そうに事の成り行きを見守っていたドワーフのメイドからの質問に精霊王のツムギが口を開く。


「うん! 大丈夫だよ! このサラマンダーは前の精霊とは違ってまだそこまでの力はないの! この火を入れるのはサラマンダーの成長を速める効果があってドワーフの家事の手伝いをしながら魔力を貰って精霊としての力を強めているの! あのね! あのね! ツムギが選んだんだよ!」


 褒めてほしい子供のようにキャッキャと説明をする精霊王のツムギに羊メイドのスタイはメイド長との睨み合いから外れ素早く移動して赤い髪が乱れないように撫で、負けじとメイド長もマモルの頭を撫で、なぜ撫でられているのだろうと疑問に思いながらも精霊炉で大きな欠伸をして丸くなるサラマンダーという精霊へ視線を向ける。


「そろそろ鉄を入れるといいの!」


 精霊炉に光が灯り中にいるサラマンダーが顔を上げ目を開く。気のせいかやる気に満ちた表情にも見え頼もしさすら感じているとドワーフの職人が精霊炉を開けミスリルの原石を入れはじめる。

 黒い岩の所々に銀のような輝きを持つ原石がサラマンダーの近くに複数置かれると尻尾で軽くペチペチと叩き何かを確かめるような仕草をし、満足したのか体から一気に炎が上がり精霊炉が赤く輝く。


「凄い熱気ですね」


「うん! アツアツだからね!」


 精霊炉の中が見えないほどの輝きが強くなり放たれる熱も増え精霊王のツムギの手を引いてこの場を離れ、国王と宰相は警備のものたちに背を押され意気に室温の上がった作業場から退出する。


「どれだけ礼を尽くしても返せない恩ができてしまった」


「我らドワーフはマモル殿に対し半永久的な感謝とすべての税の免除を約束しますぞ」


 作業場から出た国王と宰相は野次馬たちに聞こえるよう感謝の言葉を口にし、ドワーフたちは精霊炉の復活を知ると一気にお祭りムードへと変わり男達はどこからともなく取り出した酒を手に掲げはじめる。


「精霊炉の復活だ!」


「精霊さまに乾杯!」


「エルエルさまに乾杯!」


「サラマンダーさまに乾杯!」


 多くの乾杯の声に精霊王のツムギが両手で耳を塞ぐと急ぎ羊メイドが先ほどと同じように払う仕草をしてまわりの音を消しツムギを抱き上げ、それを見たメイド長もマモルを抱き上げようとするが片手で制する。


「さすがに抱っこは恥ずかしいです」


「それは残念です……買い物では私が抱っこされたのでお返しにと思ったのですが」


「いやいや、あれはメイド長が鷹の姿に変わって、お店の人が怖がっていたから抱っこしただけで」


 言い訳を口にするマモルだが羊メイドがあからさまに勝ち誇った表情を浮かべる。


「ツムギさまは本当に可愛らしいですメェ。こうやって甘えてくれる姿は精霊のなかでも一番ですメェ」


「えへへ、一番ですぅ」


 キャッキャと喜びながら抱っこされ頬を擦り合わせる精霊王のツムギ。羊メイドは勝ち誇った笑みを浮かべる姿に、拳を握り奥歯を噛みしめいまにも殴り掛かりそうな天使長。気のせいか天使長のまわりの空気が揺らぎ背後には両手を上げ威嚇するゴリラを思わせる闘気が立ち込める。


「や、やばいのが見えるのねぇ……」


 エルエルもその怒りの化身のようなゴリラが見えたのか顔を引きつらせ急ぎ喜んでいるドワーフたちに紛れ、マモルも目の前で獣のような闘気を放つ天使長をどうにかしないと思案する。


 ここは素直に抱っこされれば天使長の機嫌が直る気もするけどもう十二才になったし、前世も足せば……抱っこされるのは恥ずかしいです。でも、天使長が戦闘モードで動いたら折角再稼働した精霊炉すら余波で破壊されかねない……


 決意したマモルはゆっくりと体を羊メイドへと向けていた天使長の手を掴むと「だ、抱っこ……」と口にする。


「お任せください!」


 そう口にした次の瞬間にはマモルは抱っこされ満面の笑みのメイド長が現れ、背後のゴリラも子ゴリラを抱いた姿へと変わる。が、照れているマモルの顔は赤く変わり耳まで赤くする姿に、エルエルは群衆のなかから敬礼しその雄姿を見届けるのであった。



 お読み頂きありがとうございます。

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